記者になりたい!という強い思いを実現させ、神奈川新聞社で記者として活躍中の佐藤百合さん。今もなお、自分の「やりたい」気持ちにしたがって日々活動する彼女の原動力とは何なのか。取材で見えてきたのは、「心のときめき」を大事にする生き方でした。(2019年4月13日時点)
自分の記事で問題解決!地方紙ならではの働き方
現在のお仕事内容を教えてください。
入社7年目で、現在は横須賀支社で新聞記者として働いています。事件事故があったら取材するのはもちろん、横須賀は米軍や自衛隊の基地があるので、その関連の取材もします。あとは「街のお花が綺麗です」とか、「子どもがスポーツの全国大会で優勝しました」みたいな、ほっこりする話題も取り上げていますね。
なるほど、かなり地域に根ざした新聞なのですね。地方紙ならではの良さはありますか?
地域への影響力が強いということですかね。新しい道路が開通して交差点ができたとき、小学生の通学路であるにも関わらず信号機が設置されなかった場所がありました。それが危ない、ということを地域の面で書き続けていたら、その記事を市議会議員さんや県議会議員さんが読んでくれて。それが議会でも話題になり、結果的に当初は設置時期が未定だった信号機が約3カ月後に取り付けられました。すべてが記事のおかげではないですけど、私もその一部になれたのではないかなと思いました。
地方紙だからこそできることも多いのですね。普段地域の読者の方と関わることはありますか?
取材先の人に話しかけてもらう機会も結構多いですし、直接お客様相談室にお電話くださる方もいます。一番嬉しかったのは、横須賀の中学校に50年以上に渡って、特定の人から匿名で平和を願う手紙と寄付金が送られ続けている、ということを記事にしたときのこと。記事に共感してくれた読者の方が、その手紙のフォーマットを真似して本社に手紙を届けてくれました。ネット上で記事がたくさん読まれてコメントが付くのも嬉しいけれど、こうやって人の温もりがわかる反響っていいなって思いました。
自分の書いた記事に反響が返ってくるというのは、やはり仕事のやりがいの一つですか?
そうですね。信号機の記事を書いたときも、しばらくしてから地域の方とお話したら「あのときはありがとうね。新聞の力はすごいね」とか言ってくださって嬉しいなと思いました。
神奈川新聞はどんな会社ですか?
すごく自由ですね。私は大学時代にジェンダーやセクシャリティを勉強していたんですが、それについて記事を書きたいと思っていたんです。入社して1年半くらいで現場に出たての頃に、牧村朝子さんというレズビアンのタレントの方に取材をして2回にわたって記事を書きました。その頃は怖いもの知らずだったんですよね。何も考えずに、「この人に話ききたい!」と思ったらアポ取って取材、みたいな(笑)。でも、会社側もやるなとは言わず、経験が浅くても書きたいと言ったら書かせてくれた。神奈川新聞はそういうやりたいという気持ちを大事にして、実際にやらせてくれる会社ですね。
新聞社のような昔からある会社ってなんとなく堅いイメージがあったので、想像と全然違いました。
うちの会社は職場に子どもを連れてくる人も多いですよ。だから子どもが社内を走り回っていたりすることも(笑)。報道部の男性デスクで1年の育休をとった方や、時短勤務している人などもいます。
神奈川新聞の自由な社風は入社前から知っていたのですか?
実は最初、全国紙を目指していたので、地方紙にあまり目は向けていなかったんです(笑)。会社のこともあまりよく知らなかったので、最終面接の前日に慌てて知り合いの記者の方に話を聞きました。でも結果的にとてもいい会社だったので、これもご縁だなと思っています。