当事者から学んだ、無国籍者の厳しい現実
『無国籍ネットワークユース』で、印象に残っている活動は何ですか?
マレーシアでのフィールドワーク研修ですね。首都のクアラルンプールとボルネオ島にあるタワウという郊外の町に行って、ロヒンギャ難民などの無国籍者と実際に話したり、無国籍者を支援しているNPOのかたや人権活動家に話を聞いたりしました。
今まで無国籍者について文面や映像で見たりすることはあっても、当事者に会う機会はあまりありませんでした。無国籍問題の当事者が、「自分はミャンマーに住んでいたけれど、タイで人身売買に遭って、運よくマレーシアに来たんだ」といった壮絶な体験を語っていたことが強く記憶に残っています。
マレーシアでのフィールドワーク研修で、印象に残っている出来事はありますか?
ロヒンギャのコミュニティを訪問したときに、英語を話せる20歳くらいの男の子がいました。その男の子が、「自分は教育を受けられたけれど、教育を受けたからといっていい仕事を手に入れることはできなかった。だから教育は意味がなかったんだ。」と話していたことが印象に残っています。
無国籍の人は、身分証明書を手に入れられません。そのため、無国籍者は学校で教育が受けられなかったり、病院で治療が受けられなかったり、就職や結婚に影響が出たりします。しかも、もし彼のように教育が受けられたとしても、仕事に就けるというわけではないんです。その男の子の言葉から、無国籍問題の複雑さを再認識しました。
無国籍者のための活動をする中で、困難や挫折を感じたことはありますか?
無国籍の問題を解決するのは、外交官でも難しいことです。そのような解決が難しい問題になぜ学生の私たちが介入しているのか、と一時期思い悩んでいました。
しかし、私たちが無国籍者の現実を知って、それを周りに伝えていくことができるという点で、学生が無国籍の問題に関心を持つ意義があると今は考えています。無国籍の問題を知らないということは、その事実を擁護していることになると思うからです。無国籍の問題というものがあり、それを解決していかなければいけないというムーブメントを作っていきたいです。