世界126の国と地域で海外インターンを通した若者のリーダー育成に力を入れている学生団体AIESEC(アイセック)。日本支部の一つ、中央大学委員会の委員長、矢野礼佳さんに詳しい活動内容とその魅力について語っていただきました。
若者の可能性を引き出しリーダーとなる人物を、日本から世界へ
AIESECとはどういう団体ですか?
AIESECは、世界最大級の学生組織で、126の国と地域で活動しています。全体で7万人、日本では1600人の学生が所属しています。日本はNPO法人AIESEC in Japanが支部として海外インターンシップ事業を運営しており、25の大学が参加しています。中央大学は70人在籍しています。
AIESEC中央大学委員会ではどのような事業を軸に活動されているのでしょうか?
海外インターンシップへの「送り出し事業」と「受け入れ事業」の2つが主な活動となります。
送り出し事業は、主に日本人学生の長期休みに合わせてインターンシップを開催するもので、活動のピークは春と夏ですね。インターンシップのプログラム開発を行い、広報活動をして渡航する学生さんを募集しています。
受け入れ事業は、日本の企業向けに海外から学生を受け入れてインターンシップの開催をお願いする営業活動を行っています。
AIESECのビジョンはどんなものがありますか?
平和で人々の可能性が最大限発揮された社会です。第二次世界大戦後の1948年にある若者がこの団体を設立して、その時にもう二度とこのようなひどい争いが起きないように、という理念に基づいたビジョンです。今は戦争なども大分減りましたので、国連が定めたSDGsに基づいて社会課題を解決していくことを目指しています。その課題を解決するために若者のリーダーを育成しようということを軸に置いていますね。
*SDGs…Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称
思いを伝え巻き込んでいく、これが私らしいリーダーシップ
矢野さんがAIESEC中央大学委員会に参加しようと思った理由やきっかけを教えて下さい。
高校生の時から大学に入ったら、留学や海外に行きたいなって思いが強かったんです。大学で学ぶなら国際政治がいいな、と思って法学部に入りました。
国際政治に興味を持ったのも、アフリカの貧困とか発展途上国のキーワードが響いたからですね。新歓の時に先輩のプレゼンを聞いて「ここは私にぴったりだ!」と思ったのが決め手でした。
矢野さんはAIESECに入ってからどんな関わり方をしていましたか?
代表になる前までは送り出し事業の統括をしていました。組織構造はスタンダードなキャリアとして1年生はメンバーとして送り出し事業か受け入れ事業のどちらかに所属します。2年生はプロジェクトリーダー、3年生は経営層として関わるか、組織領域に分かれて、1・2年生のサポートに回ります。私は2年生の時点で事業の統括をしていたので経営層側にいました。同期よりも2歩くらいジャンプアップしていました(笑)
矢野さんは海外インターンに参加されたそうですね。
はい、インドネシアに6週間ほど行きました。私は教育機関やNPO・NGOの機関に受け入れてもらうボランティアに参加し、インドネシアの高校で日本語と英語の先生をしました。
それは貴重な体験ですね!そのインターンで得られたものは何かありますか?
私のリーダシップスタイルが分かったこと、それから自分が変われたことですね。
インターンに行く前は、妥協したり躊躇したりしてしまって、思い切って何かを決めることに対して消極的でした。でも、このインターンは海外で日本人一人、しかも日本のAIESECの代表として来ているから何かやり遂げなきゃ!といういい意味でのプレッシャーを感じて、「自分で決めて自分で行動していくしかない」という風に考えるようになれたんです。
インターンで苦労したことは?
日本でインターンシップを開発しているときに、「いじめ問題」を社会課題を設定したんです。インドネシアの高校生のいじめへの意識ってどれくらいなんだろうと思ってアンケート調査をしたり、いじめ防止の意識を高めるためにどんなことが出来るのか考えたりして6週間動いていました。
でも実際はインドネシアの高校ではそんなにいじめが問題になることはないみたいで、想像がつかず、興味を持ってもらえなかったんです。結果的には授業自体は成功!というわけではなかったんですけど、それまでに至る過程や気づきはよい経験になりました。
モチベーションの向上を目指して、成長につなげ、インターンの参加者を増やしていきたい
なぜ代表になろうと思われたのですか?
インターンを経験してから特に感じるようになったのが、メンバー間のモチベーションの差でした。
70人在籍している中央大学委員会のメンバーのうち、私ともう一人の学生しか海外インターンシップに参加したことがなく、ほとんどのメンバーが経験したのはインターンの開発だけだったんですよね。自分が開発してもそこで終わってしまう。「何のためにやっているんだろう?」という思いになる学生が多くいたんです。
でも私は、海外インターンを経験したからこそ、この活動をやることそのものに意味があると思いました。その思いを皆が実感して楽しく活動してほしい!その一心で毎年秋に行われる代表選挙に立候補しました。
モチベーションの差、この課題を乗り越えるためのアイディアはどんなものがありますか?
モチベーションが上がらない理由の一つとして、自分が頑張った分だけの成果を得られていないし、見えにくいということが大きいと思いました。これは受け入れ事業の話ですが、日本の企業への営業数が多くても、最終的に外国人留学生の受け入れには結びついていない状態だったんです。
そうですね。結果につながらないとちょっとモチベーションも下がってしまいますよね・・・
これを解決するためには、活動の質を上げる必要があります。たくさん営業にいく、というよりも、営業に行く企業をしっかりと選択し、海外から来る学生さんと交流を深めることに注力できればいいなと思っています。
送り出し事業に関しては何かありますか?
せっかくインターンに行っても成果にこだわり切れない組織風土に課題を感じていました。例えば送り出す人数の目標が17名、結果は5人で目標未達だったとしても、目標達成するための改善案などがその後考えられていなかったんです。そこで経営管理のセクションを置くことで、増やすためにはどうしたらいいのか?何が足りなかったのか?次回はどういう目標設定にするのか?などを明確にすることで課題解決への糸口になると思っています。
これから委員長としてやりたいことはどんなことですか?
参加する大学生を増やして、インターンを経験する人を増やすことです。あとは、外部との交流を増やすことです!今までの活動の中心は中央大学の組織内だけで完結させようとしていました。でもこれからは、私がインターンで得られたいろんな人を巻き込んで一緒に協力してやっていけばいいという価値観のもと、今の委員会をより良いものにできたらいいなと思っています。
取材を終えて
矢野さんのお話を伺うなかで、AIESECは「自分はどう動いて何をやり遂げたいのか」という主体性を身に着けることが出来る場所というのが伝わってきました。
まだ知らなかった自分の一面を客観的に見つけられる、そんな経験は大学時代の今しかできないはず。私も大学に支部があったら入ってみたかったです!読者のみなさんも自分の大学にAIESECがあるか確認してみては?
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