研究こそ私の趣味であり、生きがい。(准教授・研究者)

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東京薬科大学の准教授としてがん研究に夢中な伊東史子先生。大阪から世界へ飛び出したからこそ得られたもの。研究者として、母として、大切にしている考え方。柔らかい印象から垣間見える意志の強さ、自身の軸とともに、今をパワフルに生きる伊東先生をインタビューしました。(2016年6月時点の情報です)

原点は薬を作りたいという幼心から

研究者としての今のお仕事を教えてください。

東京薬科大学生命科学部の心血管医科学研究室で准教授をしています。主に研究と学生たちの講義を担当しています。

研究テーマは一言で説明すると「がん」です。がん細胞は体の中に毎日作られてしまうものですが、普通は免疫細胞によって排除されてしまう。でも、たまたま生き延びて遺伝子の変異が蓄積されてしまうと、悪いがん細胞になって増えてしまいます。がん細胞が増えるためには新しい血管を作って酸素と栄養を手に入れることが必要ですが、さらにがん細胞はこの血管を転移経路として利用します。

だから新しい血管を作らせないようにして、がんが増えるのも転移するのも防ぐ薬を作りたいと考えて研究をしています。そのほか、がん細胞自体の研究もしています。

医学の研究をしているように思うのですが、医学部出身なのですか?

もともとは薬学部出身です。大阪の薬科大学の薬学部に4年間通っていました。

薬学部に入ったのには、2つ理由があります。1つは背を伸ばす薬を作りたかったからです。私は身長が小さかったので、背を伸ばす薬を作りたかったんです。私を含めて家族みんな身長が低くて、小さい=私の一族、という見方をされていてすごく嫌でした。病気でもないのに家族皆スモールサイズで。平均身長に憧れていましたし、普通に買える洋服や靴はいつもサイズが合わなかったり。

もう1つの理由は、中学生の時に自由研究のために、ある化学薬品を購入しようとしたのですが、危険物だから薬剤師免許や危険物取り扱いの免許を持っている人じゃないと購入できないと言われたからです。薬物を手に入れたかったので、薬剤師免許が欲しい、と思いましたね。

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疑問が自分の手で明らかになる瞬間との出会い

4年生で卒業研究をする中で研究の魅力に気づいたそうですね!

学部生のときは授業を受けて実習をして試験して、バイトをするという日々を送っていました。なので、初めから「研究者になるぞ!」と思っていたわけではありません。4年生のときに卒業研究を通して、研究の魅力にとりつかれていきました。

なぜなんだろう、どうして?と考える過程が楽しくて、もっと研究したいと思うようになりました。実験して予測通りの結果が出たときは本当に嬉しくて、でも失敗すると悔しくて。

研究の奥深さに触れることで私の将来が開けていきました。大学院に進学し2年間どっぷり研究をして、その後スウェーデンに研究留学しました。

なぜスウェーデンまで行こうと思ったのですか?

スウェーデンの研究所に先輩がいて、今なら博士課程に入れるよ、という感じで誘っていただいて、「行きます!」と軽い気持ちで旅立ちました。

海外の大学院は大変かと思われますが、先輩もいましたし、研究所にも4人の日本人がいたので心強かったです。意外と海外在住の日本人研究者はいますが、確かに大学院生はいませんでした。

ヨーロッパ諸国は博士過程が一種の職業であり、お給料を頂くことができます。だから、結婚も出産も博士課程の学生でもできてしまうところが日本とは違うところですね。とても人生を設計しやすいと思います。

スウェーデンに来て2年弱過ぎたころ、研究室のボスが母国のオランダに帰るというので、私もついていき学生を継続しました!オランダでは3年過ごしました。スウェーデンもオランダも言葉が違うのですが、みんな英語ができるのでなんとか生活も研究も楽しむことができましたね。

でも、これから留学する人には英語圏を勧めたいです。だって食材に関するオランダ語やスウェーデン語も当時は覚えたけど、今は必要ないですから。

食が合わなかったりしませんでしたか?

私は特に問題はなかったです!どちらの国も主食はジャガイモやパンです。フライドポテト、マッシュポテト、茹でじゃが、どれも大歓迎でした。ジャガイモが大好きだったのと生活がとても楽しかったので、日本に帰るのが惜しかったです。

日本とスウェーデン、オランダとの研究室の違いはありましたか?

まず公用語が英語ということですね。様々な人種が集まっているので英語を使ってコミュニケーションを図っていました。

私が所属していた研究室にはフランス人、アイスランド人、オランダ人の方がいました。留学した当初、英語は全然できなかったのですが、アイスランド人の友達に助けてもらって、だんだん意思疎通ができるようになりました。彼女は今でも親友です。

スウェーデンやオランダでは、大学院講義は時期開講で、日本のように毎週授業はありません。日本の大学院生は授業だ試験だ、と大変ですよね。

また、スウェーデンの博士過程は在籍期間で卒業するものではなく、業績を出したらいつでも卒業できるんですよ。最短で2年半で卒業できる人もいるし、長ければ8年かかる人もいます。私は5年強かかりましたね。

私が所属していた研究所には最先端の共通機器が配置されていたので研究の面でも恵まれていました。機器には専門のオペレーターがいて困ったことや機械についての問題があれば、その都度助けてくれました。

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日本に帰るという選択

5年海外にいて、なぜ日本に帰ってきたのでしょうか?

私はもう少しいても良かったのですが、夫が日本での職を得たので一緒に帰りました。帰国後は筑波大に所属して、8ヶ月ほど博士論文を書きつつ実験をしていました。その後、スウェーデンでの審査を受けて博士の最終試験に合格し、博士号取得となりました。

博士号取得後は、日本学術振興会のポスドク(PD+RPD)で5年、助教で2年研究を続けることができました。その後、公募で東京薬科大学の准教授になりました。当時、夫は他大学に所属して単身赴任していたのですが、この移動によって家族が揃って暮らせるようになったんです。

研究者の夫婦が一緒に暮らすというのは、本当に恵まれていることなんです。それぞれのやりたいことができるところ、ポジションで考えると近辺の職場になることは珍しいですし。これからどうなるかもわからないので今を楽しく過ごしています。

国による働き方、考え方に触れることで変わった私の意識

研究への熱をとても感じるのですが、お母さんでもあるのですよね?

そうです。高校1年生の息子と小学校4年生の娘がいます。息子は、朝の6時の電車に乗るので、それまでにお弁当を作って朝ご飯を食べさせて送り出します。娘もお弁当なので大変です!朝のうちに夕ご飯の準備をしておきます。そうすると、夜帰ってきてからレンジで温めるだけで晩ご飯ができます。

時間がない中でご飯を作るので手抜き料理、時短料理が得意になります。手を抜きつつ夫の助けを借りて家事もこなしています。完璧なんて程遠いですが、生きていればそれでいいかなと思っています(笑)。オランダの経験からにそう考えるようになりました。

海外留学から得た子育てに対する考え方ってどんなものなのですか?

ヨーロッパの女性たちはバリバリ働いて子どもも2人、3人いるというのが普通なんですよね。だから日本でいう「手抜き」は「効率的」になります。

向こうの人に言われてびっくりしたのが、日本人はなぜ1日3食温かいご飯がでるんだ?そんなの1日に1回でいいじゃないか、ということでした。ハッとしましたね。食堂でお昼に温かいご飯を食べたら、夜はコールドミールでもOKって。また、栄養は1日単位で計算するのではなく1週間単位で考えればよくて、昨日足りない栄養は今日取ればいい、みたいな。1週間あれば、献立を考える方も楽ですよね。

夫もそんな生活を身近に見ていたから、家事も助けてくれますし、今の私の手抜き具合も認めてくれているのかもしれません。でも、夫から「何か手伝う?」などと言われると、少し残念な気持ちになります。とても恵まれているはずなのに。女性も男性もできることを各自が積極的に行えば、もっともっと働く女性に優しい環境になる、と思いますね。

研究もプライベートも大切にしたい

休日は何をされているんですか?

基本は土日も研究室に来ています。子どもが土曜も学校があるので送り出してから、ふらっと研究室にきて平日より短時間働いて子どもの下校に合わせて帰ります。マウスの様子を見て、次週の実験準備をしたりする程度です。準備しおくと、次週の実験がスムーズに上手く進められるので。

でも、嫌々来ている訳ではなくて、研究が楽しいから毎日自然と向かってしまいます。実は、子どもを帝王切開で産む前日まで、動物室に入っていたくらい研究室が好きです。出産したらしばらく会えなくなるマウス達が心配で(笑)。

先生にとって研究が趣味となっているように感じます!

まさに趣味であり、楽しみであり、生きがいです。これからの目標ですが、今の研究を完成させていい形でまとめていくこと。頑張ってくれている学生さんたちと喜びを分かち合うことですね。

もちろん、子どもたちも生きがいです。二人の子どもが自分で生きていけるように、無事に希望通りの進路に進めるように全力でフォローしていきます。子どもたちが成長していくと自分の時間が持てるので、もっともっと研究できる!とそれも楽しみです。今の環境で停まりたくないのが本音なので、研究者として貪欲に志高く成長していきたいです。

可能性を秘めた若い世代に伝えたいこと

高校時代に数学が苦手だから文系、と決めつけている友達がいたのですが、文理選択に悩む中高生に向けて何かメッセージをお願いします。

「なんでだろう」という好奇心があれば、理系の学部は本当に楽しめると思いますよ。数学が苦手だから文系、と決めつけるのではなくて、何か疑問持ったら解決してみよう!と挑戦してほしいです。

結果を導くための様々なアプローチ方法、しかも答えは1つとは限らない、それがこの分野の魅力だと思います。フレキシビリティを持った学問だから、1人1人にあった学びや研究ができます。やってだめなら、その次の手を考えるのが楽しい。何事もやってみないとわかりませんよね。

私たち大学生に、人生の先輩としてメッセージをお願いします。

学生さんは無限の可能性を持っているので、その可能性にかけて、とりあえずトライしてみてほしいですね。これでいいや、と思わないでもっと理想を高く持っていてほしいです。

みなさんはダイアモンドの原石なので、輝く前にやめちゃったらもったいないですよ。自分で自分はこうだからと限界を決めるのではなくて、限界を自分で決めてしまう前にとりあえず一歩、さらに一歩、という感じで先に進んでいってほしいです。

学業や研究、就活などの場面で限界かもって思うことが山ほどあるかもしれません。でも少し見方や考え方を変えてみたらどうでしょうか。これから羽ばたくみなさんには、柔軟にそして自分に負けないで活躍してほしいと願っています。

インタビューを終えて

研究に対する熱意を感じるとともに、何事にも前向きに取り組んでいる姿が印象的でした。私自身、先生の考え方を聞いて納得する箇所がたくさんありました。普段知ることのできない研究者の姿をみなさんにも届けることができて良かったです。この記事をきっかけに、「頑張ろう!」と1人でも多くの方が思ってくれたら嬉しいです。

学生記者:久保美遥

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About Author

久保美遥

東京薬科大学生命科学部3年。生物学、化学、医科学を中心に学んでいて、部活でも実験しています!日々、1限からの授業や実験のレポート、アルバイトに追われていますが、とても充実していて楽しい学生生活を送っています。趣味は軽い運動と映画鑑賞です。ラジオ体操で体型維持をしつつリフレッシュしています。女性の働くことへの意識の違いや、社会で輝く働き方に興味があります。ハナラボを通して女子学生の皆さんに活力を与えられるような記事を届けたいです。

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