自分の仕事の一つひとつに愛情を注ぎたい(JICA)

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小さい頃から親しんできた中国と関わる仕事がしたい。その思いを軸に新卒で銀行に入社し、3年目でJICAに転職された松浦さん。どのようなきっかけで転職されたのでしょうか。そして「国際協力」とは具体的にどのような方が動かしているのでしょうか。(2011年3月時点の情報です)

国際協力という夢を追いかけ、3年目に銀行からJICAに転職!そのきっかけは?

現在のお仕事、「国際科学技術協力室」ではどのような仕事をなさっているのでしょうか?

平成20年より新しく始まった「地球規模課題に対応する科学技術協力」を担当しています。これは、日本が誇る科学技術の知見を外交と結びつけ、地球規模の課題の解決を目指そうというプログラムで、政府開発援助(ODA)の新しい形態といえます。「国際科学技術協力室」もプログラムのスタートと同時に創設されました。

このプログラムでは、環境・エネルギーや防災、水資源、感染症といった途上国が直面している地球規模の課題を解決することを目的として、第一線で活躍されている日本の研究者がJICA専門家として途上国に赴き、相手国側の研究者とともに一つのプロジェクトとして国際共同研究を行います。

私は制度の詳細設計や予算管理、新規案件の採択関連業務などを担当しています。実際に個別の案件をマネジメントしていくのは課題ごとに案件を担当している別の部署になるので、私は各案件担当部を取りまとめる立場でバックアップをしています。

現在の仕事を選んだきっかけは何でしょうか。

小学生の頃、父の仕事の都合で家族で上海に住んでいました。中国のことがとても好きになり、将来は中国と関わる仕事がしたいと思うきっかけになりました。大学時代は、アルバイトをして貯めたお金で何度も中国に行きましたし、アジア科に進み、卒論は中国の環境問題をテーマにしました。中国の文化ももちろん好きなのですが、幼いながらに中国の人たちに親切にしていただいたことが忘れられなかったのです。

中国で仕事がしたい、という思いを軸に、就職活動では都市銀行と総合商社の二つに的を絞りました。そして最初に内定が出たのが都市銀行です。次に内定をもらった総合商社に後ろ髪をひかれつつも、日本の企業が海外進出するお手伝いがしたいと銀行に心を決めました。

なぜ、銀行からJICAへの転向を決めたのでしょうか。理由とその契機を聞かせてください。

「ネパールにかける虹の橋」という絵本があります。私の同郷の愛媛県の医師が、ネパールの結核対策に取り組む話です。小学校1年生の時に読み、「こういうことがやりたい!」と強く思いました。青年海外協力隊に入りたいと小さい頃に父親に言ったこともあります。当時は心配だと反対されましたが(笑)、国際協力への道は自分の中でずっと引っかかっていたのかもしれません。

銀行では支店業務をひと通り経験し、非常に面白い仕事だと思っていました。ただ、株式会社は利益を上げるのが第一ですし、自分の目指す海外への道は少し遠いのではないかと感じ始めていました。

そんなとき、NHKの再放送で中国の農村の学校に行けない子どもたちの特集をたまたま見て、「ああこれだ!」とピンときました。偶然にも、翌日の日経新聞の求人広告にJICAの社会人採用の募集があり、小さい頃から関心のあった国際協力に携わるにはここしかないのではと試験を受けて転職しました。

JICA入構後にはどのような仕事をされたのでしょうか?

まずは農林水産開発調査部で、途上国の農林水産政策の立案を支える仕事をしました。具体的にはカンボジアの米流通システム改善計画や、グアテマラ農村の貧困削減計画などを担当しました。転職してすぐに途上国に出張に行かせていただき、大変刺激的な日々でした。

2年後に青年海外協力隊事務局に異動になり、ボランティア派遣業務を担当しました。その後は北京にある中国事務所で、保健医療分野のプロジェクトを担当しました。当時はちょうどSARSが流行した直後でして、新興・再興感染症対策プロジェクトや子供たちの予防接種強化プロジェクトなどに携わりました。その後、長男の出産に合わせて中国事務所より帰国し、育児休業中に長女も出産、合計約3年間の育休後に、今の国際科学技術協力室に復職しました。

「月曜日が来るのが苦でない」仕事が好きだと思えるJICAの環境、そして松浦さんの仕事に対する思いとは?

中国事務所時代に上のお子さんを妊娠されたとのことですが、JICAの産休・育休の制度はどのようなものなのでしょうか。

JICAでは子ども一人につき3歳まで育児休業を取得することができます。私の場合長男と長女は2歳違いなので、5年間取得する権利はありました。たださすがに復職に相当の心構えが必要になるので3年で戻りました。

なるほど、充実した制度ですね。現在はどのようにして仕事と家庭を両立されているのでしょうか?

実は私の夫もJICA職員だったのですが、現在は大学に通っています。そういう意味では会社勤めの方と比べると自由がききますので、保育園の送り迎えも夕食作りも分担しており、本当に助かっています。

職場でも上司や同僚の支えがとても大きいですね。JICAは女性にはもちろん、子育てをする男性にとっても働きやすい環境で、男性でも育休を取る方もいますし、奥さんの海外出張中の家事と育児は全部自分でやっているという方もいます。JICAは、それが男女の区別なく自然にできる雰囲気だと感じます。

仕事の楽しさを教えてください。

現在の部署では制度の立ち上げに携わってきたので、この新しいプログラムである「科学技術協力を始めてよかった」と評価してもらえたときはとても嬉しいです。JICA内外からの相談や問い合わせに対して自分なりにサポートができたときもやりがいを感じますね。

では仕事の苦労はなんでしょうか。

通常のODA事業は外務省とJICAが中心となって行うのですが、この科学技術協力は文部科学省や(独)科学技術振興機構、(独)日本学術振興会と連携して実施・運営しているところが新しい点です。従来の開発援助のコミュニティにはなかった視点もありますので、関係者との合意の形成に時間を要することもありますね。

途上国のニーズは何かと考えたときに、JICAのルールだけにこだわっていてはなかなか進みません。だからと言ってそのルールを簡単に破ることもできないので、落とし所を探るのは難しいです。しかしそれを関係者が納得のいく形で解決できたときには大きなやりがいに変わるように思います。

仕事で心がけていることや、大事にしている思いを教えてください。

ミクロなところでいくと、相手にとって気持ちの良い対応を心がけるということですね。例えば、当たり前のことですが、相談が来たらできるだけ早く回答を出すこと。できないときにもそこで「できません」と突き放してしまうのではなく、代替案を提案します。相手の方が不快な気持ちにならないように、気持よく仕事ができるように、心がけていますね。銀行の頃に叩き込まれた「お客様第一主義」の精神が役に立っていると感じます(笑)。

マクロなところでいくと、愛情を注ぐことを大事にしています。例えば、今新しい制度を作っているのですが、子どもを育てるように愛情を注ぎながら、みんなに愛される制度に育てたいなと思っています。自分が異動した後も、将来的にずっとみんなに愛される制度になるにはどうしたらよいか考えています。

松浦さんにとって仕事とは?

私にとって仕事は、楽しみのひとつなのかなと思っています。育児休業に入って、専業主婦をしていたときも本当に楽しかったのですが、仕事をしないと社会との繋がりもなくなってしまう気がして。外の世界に出ていろいろな方と関わって、自分を磨きつつ仕事がしたいと考えて復職しました。

では将来やりたいことは?

海外出張にも行きたいし、子どもを連れて在外事務所にも赴任したいですね。子どもには、世界はこんなに広いんだよと教えてあげたいです。中国をさらに深めるのもいいのですが、アジアの他の国でも、行けるところならどこでも!

仕事の先輩として、国際協力に関わりたいと思っている学生にメッセージをお願いします。

国際協力と一口にいっても、いろいろな形があります。JICA職員も一つの方法ですが、国連職員や草の根レベルでのNGO、青年海外協力隊も重要な担い手です。自分がどういう形で国際協力に携わりたいか調べて、自分にぴったりのキャリアパスを探してみてはいかがでしょうか。

また途上国も様々なので、多様な価値観を知ることが重要です。そういう意味でもぜひ、学生時代にいろいろな人と話していろいろな活動をして経験を広げておくといいなと思います。

では人生の先輩として学生にメッセージをお願いします。

私が就職活動をしているときにも就活のマニュアル本はありましたが、それに左右されすぎると皆と同じになってしまいます。自分のやってきたわずかなことでも、それを大切にして前面に出せば、自分の特長としてアピールできると思います。

就活では「自分をどう見せるか」に囚われがちですが、結局ありのままの自分が一番ではないでしょうか。それは仕事でも同じだと思います。ありのままの自分が一番魅力的で個性があってきれいで強い、だからあまり肩肘をはらずに無理せずがんばってください。

インタビューを終えて( 学生記者:市原佳菜子)

「背伸びをしないでありのままの自分を出せばよい」というメッセージは、小さい頃から温めてきた夢に素直に向かった松浦さんからお聞きできたからこそ、「自分のやりたいことを探して素直に立ち向かってみよう」という勇気をいただけました。素敵なお話をありがとうございました。

お仕事紹介(国際科学技術協力室調査役)

途上国における地球的規模の問題解決のため、日本の科学技術の知見とODAとを結びつけた新しいプログラムの詳細制度設計や予算管理、新規案件の採択関連業務が主な仕事です。

国際協力機構(JICA)

政府開発援助(ODA)の唯一の実施機関として、途上国の経済・社会の発展を支える活動を行っています。その分野は人材育成・制度設計、社会インフラ整備から大規模インフラ整備まで多岐に渡り、世界と日本の安定と平和のため、途上国における様々な問題解決に取り組んでいます。(サイトはこちら

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About Author

ハナジョブ学生記者

2008年〜2012年までの学生記者たち

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