本間さんが150点に込めた思いとは?
いつもどんな思いでアーティストをプロデュースされているんですか?
自分の良さを心ゆくまで出せるようになってほしいなと思います。ライブは最終的に高い総合点をとって観客を満足させるもので、アーティストだけでなく照明・音響・映像・ダンサーなど各才能がそれぞれに加点していく総合表現です。フィギュアスケートみたいなもので、アーティスト本人には自分の強みを余すところなく発揮して、華麗に4回転ジャンプを飛んで欲しい。そして最後は全員で150点を目指したいと思っています。私はアーティストやスタッフの得意なところを見極めて、より高得点を狙えるように調整する役割を担っています。
本間さんにとって音楽とは何ですか?
身近すぎて当たり前のものになってしまったかもしれません。昔からキツいことがあった時、いつも音楽に助けられて来ました。今も実際こうして自分の生活を助けてくれているし!その結果、私が手がけたアーティストの音楽に助けられている人がいるなら、こんなに嬉しいことはありません。
今後の目標を教えてください。
目標って昔から持ったことないんですよね(笑)ただ目の前にある自分の得意なこと、受けた仕事に関しては絶対150点取るもんな!と思って取り組んできました。出来ることに対する確信に向かって、これからも進んでいきたいと思います。それは目標というより、もう決まっていることだと思うんですね。ただ目の前にある坂を登ればいい。あとは、その坂をどうやって登るかを考えるだけです。
本間さんのように確信を持って挑戦することは容易ではないと感じます。出来ることに対する確信はどこから得られたと思いますか?
幼い頃からパフォーマンスする人が好きで映画、演劇、歌舞伎、能、文楽、落語、ライブとたくさん見てきました。見ているときは内容に感情移入しながらも、その成り立ちや構造を分析する気持ちで見る癖がありました。なので、今もやっていることを論理的に説明せよって言われたら「はい!」って喜んでやります。自分の中で分析して裏付けを持っていたことで、確信を持って進めたんだと思います。
最後に、学生へ人生の先輩としてメッセージをお願いします。
何をしたいのか分からないという学生が多いですが、とにかく何かに本気で取り組んでみることです。そうすると得意不得意・好き嫌いが分かるようになってきます。そこから将来を決めても全然遅くないと思いますよ。アーティストを扱っていて思うのは、苦手なことがマイナスから0くらいになる間に、得意なことは果てしなく伸びていくということです。できないことをやれるのが社会人、というわけではありません。苦手なことよりも得意なことを見極めて伸ばしていってほしいと思います。得意なことは、意外ともう既にやっている、身近なところにあります。それでいいんですよ!
取材を終えて
「夢は見るものではなく、決まっていること」「フリーで働く良さは、自分の意志に反する事をせずに済むこと」と語っていた本間さん。「なんとなく」ではなく「絶対」と言い切る“芯の強さ”を感じると同時に、たくさんの努力が隠されていることも知りました。今回のインタビューでは、本間さんの気さくで優しい人柄にも触れることができ、アーティストに信頼される理由がわかったように思います。好き・嫌いの感情を無視して、苦手を克服しなければ!とばかり考えていた私にとって「優先順位は得意なことを伸ばすこと」という言葉は心に響くものでした。人生の分岐点に立った時、本間さんから頂いた言葉を何度も思い出したいなと思います。本間さん、貴重なお話をありがとうございました。
本間律子 ライブ音楽プロデューサー
1988年新卒でソニーミュージックエンタテインメントに入社。東京スカパラダイスオーケストラのチーフマネジャーを経て、ライブ専門の音楽プロデューサーとして独立。アーティストが持つ能力を見極め、音楽面と演出面からライブ全体を指揮する役割を担う。2019年からソニーミュージックで新たに発足したオーディションブランド「ONE in a Billion」でヴォーカリストの指導も行う。