葛藤しながら続けてきた記者の道。事実をわかりやすく伝えていきたい。(共同通信社)

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日本を代表する総合国際通信社である、共同通信社で記者として働く藤元万理子さん。札幌支社編集部、釧路支局、大津支局、神戸支局と地方勤務で幅広い経験を重ね、東京本社に異動してからは、映像音声部を経て、現在は地域報道部の総務省担当記者として活躍されています。 3歳と6歳の男の子を育てながら、現役の記者として取材活動を続ける藤元さんに、地方勤務で経験したこと、記者を目指したきっかけや迷い、仕事に対する想い、など一つひとつ丁寧にお話ししていただきました。

何でも屋?地方勤務から本社勤務に至るまでの幅広い経験

まずは現在の仕事内容について教えてください。

今は総務省担当の記者をしています。 総務省には、世の中の流れに合わせて法律を変えて、制度を変える役目があります。国がどういったことを考えているのか、私たちの生活がどう変わっていくのかを日々取材して、記事にしています。例えば、2年前にマイナンバー制度が始まったときは、それがどう使われるのか、生活がどう変わるのかなどをきめ細かく取材していました。

これまで、4ヶ所で地方勤務を経験されてきたそうですね。

人にもよりますが、当社は基本的に入社して6~10年くらいは地方勤務で、2〜3年で地方を3ヶ所ぐらい異動するサイクルなんです。20代はだいたい地方で過ごして、その後東京本社でそれぞれ専門部署に配属されます。

やっぱり地方勤務は大変ですか?

地方支局は人数が少ないので忙しいですね。小さな支局だと記者が3人くらいなんです。若手の20代が3人でその県のことを全部カバーするので、分担はあってもないようなもので何でもやります。話題もの、選挙、事件、裁判、いろんな取材を経験します。

ジャンルが幅広いですね!地方勤務で、一番思い出に残っている場所はありますか?

どこもそれぞれすごく思い出深いです。札幌支社では入社1年目で慣れないことばかりで大変でしたが、先輩に恵まれて、日々怒られながら育ててもらいました。 1年目は警察担当で、毎日6カ所ぐらい担当の警察署に行って事件の話を聞くんです。でも大学を出たばかりで予備知識もそんなにないものですから、とにかく話題を考えて警察の方と雑談しつつ、事件のことを少しでも聞ければ良い方でした。そういうことに戸惑いつつも、元気と若いなりの勢いで乗り切りました(笑)

警察担当、大変そうですね。ほかの支局ではどうでしたか?

次の釧路支局は人が少なくて管内が広いものですから、本当に何でも屋でした。よく覚えているのが、シャチ7、8頭が流氷に閉じ込められたことです。世界的にも珍しい現象が起きたことで、世界から集まってきた鯨類学者たちが解体を興味津々で見ているところを取材しました。釧路らしい自然や動物の話題がいっぱいあったのがすごく思い出深いです。

共同通信社

共同通信ならではの苦労、やりがい

共同通信社は、ほかの新聞社とどんな違いがあるのでしょうか?

当社の特徴といえば、とにかく地方勤務の人数が少ないことで、何でもジャンル問わず取材できるところですかね。 また、新聞社の支局は県内に向けた発信が中心ですが、共同通信は基本的に県内ではなく、他県に向けて発信する記事を書くところも違いますね。

いろいろと違いがあるんですね。共同通信社のメリットや他では経験できないことはありますか?

共同通信は国際的にも知られており、日本を代表する報道機関としての地位が確立されていることはメリットだと思います。自分が取材して配信した記事はうまくいけば、多くの新聞社が掲載してくださいます。いくつも届いた掲載紙を取材相手の方に持っていくと、喜んでいただけることもありますね。

喜んでいただけるのは嬉しいですね!

以前、阪神大震災を風化させないように、生徒の心のケアをずっと続けている方を取り上げたのですが、その記事を読んで喜んでくださったことがありました。そういうことがあるとすごく嬉しいですね。

はやく仕事復帰したい!藤元さんを支えてくれたもの

現在お子さんがいらっしゃるそうですが、ご家族は仕事復帰を応援してくれましたか?

夫は同じ会社の写真映像部でカメラマンをしているのですが、とにかくやりたいようにというか、早く復帰したければサポートするし、長く休むんだったらそれでもいいというスタンスです。

旦那様が同業者だと理解がありそうですね!

理解はありますね。地方勤務では、休日や朝の呼び出しがあります。そういうときに同業者の方が「しょうがないよね」ってわかってくれるんじゃないかと女性記者同士で話しますね。 臨機応変に対応しながら、2人で協力しつつ子どもを見ている感じです。2人ともダメなときは実家の母に頼っています。

記者を目指したきっかけはスポーツ観戦記。一方で記者を目指すことへの迷いも。

今は記者職に戻られていますが、もともと学生時代から記者を目指されていたんですか?

中学2年生ぐらいで記者になりたいなと思いました。兄がいた影響もあって、プロ野球とかサッカーとかスポーツ観戦が好きだったんです。スポーツ新聞の記事を読むこともあって、記者の仕事は面白そうだなと思ったのがきっかけです。 大学では学生新聞を作るサークルに入り、スポーツの取材もしました。試合ではプロカメラマンと同じ場所で撮影したり、会見後に囲み取材に参加したりして楽しかったですね。マスコミに関する授業も履修していましたが、記者を目指すことに迷いもありました。

どんな迷いがあったのでしょうか?

事件事故でご家族に話を聞くなど、嫌がられるような取材をすることもありますよね。自分が本当にそういう仕事をできるのかなと。だから就職活動はちゃんと軸は定められずに、いろんな企業を受けました。マスコミで受けたのは、新聞社1社と通信社1社だけです。

記者志望の場合、新聞社を軒並み受けるという人が多いですが、2社だけとは珍しいですね。

やっぱり迷いがあったんだと思います。でも、通信社は「きめ細かく事実を報じる」というスタイルなので、事実に意味を付け加えることなく受け取る側に判断してもらえます。それが自分に合っていると思いました。

共同通信社

経験を積み重ねていくことで整理できた気持ち

今は記者として迷いはありますか?

今はないですが、入社して3年目ぐらいまではかなり迷いがありました。初めは事件、事故の取材が多くて、嫌がられるような取材に意味があるのかなとか、自分がやったことが何かの役に立っているのかなとか、葛藤がありました。

気持ちの整理がつくようになったのは、やはり年数の積み重ねが大きいですか?

そうですね。年数を積み重ねて、役に立つこともあると思えるようになりました。嫌がる方への取材に対しては今でも悩むことはありますが、葛藤しながらやっていくというのが私の答えです。

今現在、記者という仕事はどういうものだと思っていますか?

難しいですが、必要な仕事だと思いますね。市民に情報が届かないというのは問題なので、情報を伝える人として社会に必要なんじゃないかなと私は思っています。

今後どんな記事を書いていきたいと思いますか?

今は総務省担当なので、制度についてできるだけわかりやすく伝えていきたいですね。制度の話は抽象的でわかりにくいですが、歴史的背景を紐解くとなぜ現在の制度になったのかを理解できるんです。

学生に向けてのメッセージ

実は私も記者職に興味があります。これから同じ仕事に就きたい人に対して伝えたいことがあればお聞きしたいです。

先ほどもお話しましたが、記者は葛藤が生じる職業です。そういう部分では大変かもしれませんが、自分が興味を持ったこと、すごいと思うことを記事にして発信できるのでやりがいはとてもありますね。だから、やりたいのであればぜひ目指してほしいという気持ちです。自分が理解した上でわかりやすい文章としてアウトプットするのは、面白い作業なんですよ。 どんな仕事でも2年程したら「自分が思っていたものと違う」と壁にぶつかることはあると思うんですよね。でも、その職業に自分が希望を持っているなら、続けてほしいです。壁はどこかで乗り越えないとその先にはいけないですし、そこを乗り越えると見えてくる世界が違ってくるのかなと。

最後に学生にメッセージをお願いします。

学生のときは本当にいろんなチャレンジができる時期だと思います。自分が向いているとか向いていないとか、そういうのをあまり気にせずにトライしたらいいかなと。サークルでもバイトでも本業の学業でも何でもいいですしね。どんな過ごし方をしても自分の経験になると思うので、やりたいなと思ったことは躊躇せずにやってみたらいいと思います。

共同通信社

取材を終えて

世間ではマスコミの負の側面がクローズアップされ、私も記者職にはわりとハードなイメージをもっており、現役の記者の方がどんな思いをもって働かれているのか気になっていました。 今回、共同通信社の藤元さんにお話を伺いましたが、あくまでも謙虚に丁寧にご自身の仕事を振り返ってお話される姿がとても印象的でした。同時に、非常にハードな地方勤務や、2人の子育てと記者仕事の両立してきた藤元さんのタフさには驚きました! 多くの経験を重ねた今でも悩みながら、必要性や魅力を感じて、記者を続けていらっしゃる藤元さんに話を伺うことができて、自分にとっていろんな学びがありました。お忙しい中、お時間いただきありがとうございました。

一般社団法人共同通信社

共同通信社は1945年、「正確公平な内外ニュースその他の情報を提供し、公平な世論の形成と社会の健全な発展、国際相互理解の増進に寄与すること」を目的に全国の新聞社、NHKが組織する社団法人として設立された、日本を代表する総合国際通信社です。東京本社をはじめ、国内に6支社・45支局、海外に42総支局があり、国内外のニュースを国内の主要報道機関や海外メディアに配信しています。

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About Author

小池千紘

千葉大学3年。体を動かすことが好きで、クラシックバレエと陸上をやっていました。最近は、筋トレとストレッチを毎晩のんびりやっています。高校時代と比べると量こそ減りましたが食べることも好きです。大学で専攻しているのは社会学で、ジェンダーバイアスや女性の働く環境など私たちが生きる社会の側に興味があります。記事を通して女子学生の皆さんが働くことを考えるきっかけになれるように、学生記者として頑張ります!

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