社名に「明日を照らす」という意味が込められた、アステラス製薬でお仕事をされている岩井さん。医薬品を世の中に出す前に、人での有効性と安全性を検討する「臨床試験」を担当する開発本部でお仕事をされています。
岩井さんは、臨床薬理部という部署で、医薬品の適切な使いかた(用法)や使う量(用量)を提案する仕事や、研究・開発で得られた検査結果等を基にその後の開発計画を最適化するお仕事、さらに効率的で安全な医薬品開発により、世の中に医薬品を送り出すお仕事をされています。岩井さんのお仕事の内容、グローバルで働くこと、育児をしながら働くこと、今後の挑戦などについて伺いました。
人それぞれにあった薬の用量や用法を提案するお仕事
現在のお仕事の内容を教えてください。
開発本部臨床薬理部企画推進グループに所属しています。開発本部とは、医薬品を世の中に出す前に人での有効性と安全性を検討する臨床試験(治験)を担当する部門です。
仕事の一つは、医薬品を販売する前に、最適な用法や用量を提案することです。
子どもや高齢者、持病をお持ちの方など、さまざまな人がいますよね。「こういう患者さんに医薬品を安全でちゃんと効き目が得られるように服用していただくには、どういう用法用量が最適なのか?この方法で、すべての患者さんにちゃんと使えるのか?」というのは大切な問題です。臨床試験を計画し、得られたデータから適切な用量用法がどのくらいなのかを探っています。
トランスレーショナルサイエンスって聞いたことありますか?それも臨床薬理部の仕事の一つです。橋渡し研究とも言われていますが、基礎研究で得られた知見・成果を応用し、新しい医薬品へつなげるための研究です。
私自身が手を動かして、実験しているわけではありません。研究に携わる方々が、細胞や試験管を用いて医薬品の種となる物質の有効性や安全性の可能性を探ります。それを臨床試験に繋げるときには、研究結果の解釈と臨床試験計画にどう反映させるかが大事です。私は、研究職の方と議論を重ね、臨床試験の計画を立てていくというお仕事をしています。
細胞や試験管を用いた基礎研究と実際の医療現場をつなぐお仕事なのですね!
そうですね。患者さんにできるだけ早く医薬品をお届けしたいので、臨床試験で何を検証すればいいのか、どの手法を使えば早く効果があるかどうか検証できるのか、何をすれば適切な用法用量が早くわかるかなどを判断して臨床試験を推進するのも私たちの仕事です。
できるだけ早く薬の効果や安全性を確認するのも大事なんですね。そのため、海外で働く方と一緒に働いたりすることも多いんですよね。
多いです。このインタビューの前にも中国人の方と会議していました(笑)。薬の開発をするとき、日本だけで開発することのほうが稀で、世界中で並行して開発することが多いです。その場合、欧米やアジアのアステラス海外拠点の同僚とやり取りする機会も多くなっています。
自社の海外社員だけではなく他社の海外社員とコラボレーションすることもよくあります。私は今、アメリカの会社との協働開発の仕事も担当しているのですが、日本と海外という違いだけではなくて、企業文化や考え方もアステラスとは違う面もあり、とても新鮮です。
なぜ他社とコラボレーションするのですか?ライバルなのかと思っていました(笑)。
お互いの強みを生かして薬を開発するということですね。どの会社にも得意な分野や未知の分野がありますし、医薬品開発には多大なコストがかかります。
アステラスが、未経験の新しい分野の医薬品の開発をするときに「この領域はアステラス側では経験がないから他社の経験や薬の種を活用させてもらおう」と考えることもありますし、相手方にとっても「アステラス側の経験や資産を活用して早く医薬品を世の中に出せる」というメリットもあります。
外国の方とお仕事をすることも多いということで、何か苦労はされましたか?
はい、それなりの苦労はあります。入社したばかりのときは、英語のメールを作成するだけでかなり時間がかかりました。今では、業務で日常的に英語を使いますし、使う単語の種類もそれほど多いわけではないのでだんだん慣れてきました。今でも、「正しい英語」は話せていないような気がしますが(笑)。
大切なのは正しい英語を使うことではなく、言いたいことをきちんと伝えること、また、相手の意見にしっかりと耳を傾けること、ではないかと強く感じています。