今回はキラキラした世界であこがれる人も多い航空業界で、客室乗務員としてチームをまとめる青木さおりさんにインタビュー。
青木さんは、どんなに難しいことでもコミュニケーションで解決できないものはない、と語ります。人との関わりが大切な航空業界。そこで働く人から学んだコミュニケーションの秘訣をお届けします。
コミュニケーションが信頼関係を築くカギ
これまでの経歴と現在のお仕事について教えてください。
短大を卒業した後、新卒採用で、国内の航空会社に入社しました。現在は長崎県のオリエンタルブリッジ株式会社に出向をして、客室部の部長をしています。具体的には、客室乗務員の人材育成をしたり、制度を作ったりするなど客室乗務員全体で働きやすくなる環境を作っています。基本的に、客室乗務員としての仕事をずっとやってきていますが、過去には客室乗務員の業務に関するマニュアルを作成したり、訓練プログラムを企画したりしていました。
安全に関する業務は責任が重い仕事かと思いますが、何か意識していることはありますか?
安全に関するお仕事は国の規程に基づいて、客室乗務員の手順を決めていかなければいけませんでした。人間はミスをしてしまう生き物だと思うので、周りの人と確認をしたり、部下と確認し合ったりして作成していましたね。
今の客室乗務員のチームでは「間違えているかもしれない」ことを受け入れる環境を作っています。ですので、普段から間違えているかもしれないときは「ちょっと違うかもしれないので確認しましょう」とお互いコミュニケーションを取る文化ができています。間違っているのでは?と思ったことを言わなかったことによって事故に繋がるかもしれない、お客様に怪我をさせてしまうかもしれない、という責任があるので、自ずと声が出ますね。私はどんなに難しいことでもコミュニケーションで解決できないものはないんじゃないか、って思うくらい、コミュニケーションが大切だと思っています。
仕事中のコミュニケーションで意識していることはありますか?
自分が本当に考えていることをきちんと言葉にするだけでなく、相手が言っていることもちゃんと聞くことから、コミュニケーションは生まれてくると思っています。ですので、相手と向き合って相手の話を聞く意識を持つことを意識しています。キャリアを積んだり、上の立場になったりすると、伝えることが多く、一方的に話をしてしまい、相手の話が聞こえなくなってしまうことがあるんです。私もそれで失敗してしまうことがあるので、謙虚な気持ちを忘れてはいけないなと思いますね。特に、意見が噛み合わないなと思っているときこそ、ちゃんと聞かないと、どこに誤解があるかわからないので…。それでも誤解が生じてしまっているときは、格好をつけずに素直に自分の気持ちを出すようにしています。こう言ったらバカにされるかなという気持ちは捨てて、素直に「よくわかっていなくてごめんなさい。もう一回教えてください」とか「私はこう思っているんだけど、どう?」と言えると分かり合えると思っています。
今までさまざまな仕事を経験されるなかで、この仕事のおもしろいところややりがいなどを教えてください。
航空業界はチームで仕事をしないと成り立たないんです。例えば、限られた中でお客様に喜んでいただけるサービスをするために、客室乗務員の間で「こういうふうにやった方がいいね」とお客様の情報を交換しながらチームとして協力しています。その結果、お客様から「ありがとう」と言っていただけたときは嬉しいですね。また、毎回チームは変わるので、そのとき限りのチームで支えあってよいチームワークが発揮できたときは、やりがいがあります。
さまざまな立場の人がチームにいる中で、どのようによいチームを作っていらっしゃいますか?
その日のチーフパサー(機内の責任者)は決まっていますが、みんながチーフパサーに甘えているとチームは成り立ちません。誰かから指示されるのを待っているだけではなく、1人1人がちゃんと自分が今ここにいる責任者だと思ってリーダーシップを取りながら、自分のできることを積極的にやったり、相手に確認の声をかけたりすることが大切です。お互いを尊重していきながら、ちゃんとコミュニケーションをとってチームがうまく回るようにしています。
学生時代に「やり切った」経験が今に活きている
学生時代はどのように過ごされていたのですか?
初めての一人暮らしをして、いろんな人とコミュケーションを取ろうとした2年間でした。高校までとは違い、価値観が違う友達にも出会いました。また、サークルに入ったり海外旅行に行ったり、さまざまなことに挑戦をしました。
その中でも1番力を入れたことは何ですか?
「途中であきらめず、最後まで続ける」ということです。学校にお休みせずに真面目に行くことも、サークルも最後まで辞めずに続けたことも、すべて自分で「やろう」と決めたんだから最後までやり切ろうという意識で行動をしていました。
この大学時代の経験は、現在に活きていますか?
はい。自分で積極的に行動したり、わからないことを人に聞いてみたりした経験は今も活きていますね。自分でとった行動に対しての責任感を持つ、という意識もこのころ覚えました。
私は、やりたいと思ったことを最後まで続けられません。どうやったら続けられるのでしょうか。
確かに辞めたくなるときもありますよ。でも、もうちょっとやれば、もっと楽しさややっていく意義みたいなものが見えてくるんじゃないかと思って、物事を続けてきたように思います。また、私は「人とのつながり」が大切だと思っています。そこで知り合う人たちと仲良くなったり、刺激を受けたりすることによって、みんなで励まし合える深い関係ができて、最後までやり切れた部分もあります。
いろいろな事を経験される中で、大学時代にどんな経験をしている人がおもしろい人だと思いますか?
人に振り回されず、自分をしっかり持っていて、自分のやりたいことを自分でつかみに行く人たちはすごいなと思います。やりたいことを言いっぱなしで終わらせるのではなく、チャレンジしていく人は素敵ですよね。人に言われてやるのではなく、自分のやりたいことが明確だから、好奇心から「次はこれをやろう」と前に進めるのだと思います。
「この会社を元気にする!」がこれからの目標
青木さんにとって「仕事」とは何ですか?
仕事は、私を成長させてくれるものだと思っているので、やはり向上心とそれに対する努力を忘れたら、仕事の楽しみはないんだろうなと思っています。学生の頃は、会社に入ったらもう勉強しなくていいと思っていましたが、会社に入ってからのほうが勉強することがたくさんありました。これは個人の価値観ですが、収入を得て、遊びに行ったりおいしいものを食べたりすることももちろん楽しいと思うのですが、一瞬で満足感が消えてしまうような気がして。私はいろいろな人と会って刺激を受けて学んで、自分が成長して…というのが楽しいし、成長を実感しながら楽しく仕事ができるって、すごいことだな、と感じています。
客室乗務員に向いている人はどんな人だと思いますか?
自分の行動に責任を持っていないとお客様の安全は守れません。ですので、自分のことをちゃんと律して、自分の行動に責任を持てる人というのはとても大切なポイントだと思います。また、客室乗務員に限らず、好奇心を持って、さまざまなことを覚えたり、勉強したりして、現状の自分に満足せず、成長させていくことも魅力的な人間になるためにも大切だと思います。
ありがとうございます。いろんなことを考えるのは簡単ですが、実際に行動に移すのが難しいと思っています。どういうところから始めるといいと思いますか。
自分が「こうなりたい」というものを持っていて、そのために「こういうことを勉強したい」と思うようにすると、なりたい自分に近づきたいから勉強が続けられると思います。習慣化って難しいかもしれないですが、短い時間でも毎日やるとか、人に宣言してやることをコツコツと習慣化して努力ができるっていうのはすごく大切な能力なのかもしれませんね。
航空業界で働きたいと思っている大学生に向けて、アドバイスをお願いします。
好奇心旺盛にいろんなことにチャレンジして自分の枠を広げていくような大学生活を送ってもらいたいです。やはり、人との仕事なので、人に関心を持ってほしいと思います。人に関心を持つと、人を助けたい、元気づけたいという気持ちも芽生えてくると思います。また、多くの気づきがあって自分の成長に繋がることもあると思うので、今の間にいろいろな経験をして欲しいです。
あと、健康体調管理はしっかりしたほうがいいです。コミュニケーションをとる、いろんなことにチャレンジするっていっても、やっぱり健康でないと、活力が出てこないので、適度に運動をして、ちゃんと食べて健康管理をしっかりやってほしいなと思います。
青木さんは、将来どんなことに挑戦したいですか。
出向で今の会社に勤めていますが、この会社を元気にしたいと思っているんです。部下たちが、「この会社でやりたいことができます!」 「自分たちでいろいろなことやっていきたい!」と思えるような人材育成をしたいと思っています。そのために、信頼関係を築いたり、やりたいことをサポートしたり、「やったことがないからできません」と不安を抱えている人の背中を押してあげたりしながら、元気な組織を作りたいと思っています。
ありがとうございます。それでは最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
皆さんにはまだまだ伸びしろがあります。だから「私には無理だ」とすぐ自分の中で壁を作らず、やりたいことややってみたいことにはぜひチャレンジしてもらいたいです。あと、自分の人生は自分で決めて、自分の行動に責任を持って、やりたいことをやって進んでもらいたいですね。
取材を終えて
青木さんは自分を持って、さまざまなことに挑戦されている方だと思いました。コミュニケーションをとても意識されていることが多く、お話ししやすい方だと思いました。私も自分の人生や行動に責任を持って、いろんなことに挑戦をする大学生活を送りたいです。貴重なお話をありがとうございました!
長崎空港を拠点に、対馬・壱岐・五島の各離島を結ぶエアラインとして航空事業を担う。「日本で一番地域に価値を届ける航空会社」を企業ビジョンとし、離島への輸送機関としての役割だけでなく、自治体と連携し地域活性化の取り組みにも積極的に取り組んでいる。
写真提供:青木さん