お花屋さんの前を通る時、色とりどりのお花を見てワクワクしたことのある人は多いのではないでしょうか?今回はお花を通じて「排除なく、誰もが花咲く社会」を目指す株式会社ローランズの代表、福寿満希さんにお話を伺いました!
スポーツマネジメントからフラワーサービスの世界へ
現在どのようなお仕事をされているのか教えてください。
株式会社ローランズの経営に関わる業務をしています。ローランズの事業はフラワーサービス業で、フラワーギフトの販売から結婚式場やブランドショップの空間装飾、フラワーカフェの運営など幅広く花に関わる仕事を行なっています。
従業員65名のうち、約7割が障がいや難病と向き合うスタッフです。障がいと向き合う当事者もそうでないスタッフも働きやすい環境づくりを行うことを心掛けています。
学生のころから障がい者に関わる仕事をしたいと考えていらっしゃったのですか。
いいえ。学生時代はずっと体育会で硬式テニスをやっていて、大学も推薦枠で入学し、スポーツマネジメントを学んでいました。在学中に「せっかく大学に来たから取得しよう」という気持ちで特別支援学校の教員免許も取得していましたが、卒業後は元々の夢だったスポーツマネジメントの会社に入社し、野球選手などプロアスリートのマネジメント業務に関わりました。その業務の一貫で、選手の社会貢献活動を企画運営に携わりました。そこでソーシャルビジネスや社会事業というものを知って、仕事をしながら世の中に貢献する方法があるということ、そしてそのような取り組みに関わることが自分にとって仕事のモチベーションになることに気づき、「社会に貢献する事業領域でずっと仕事をしていきたい」という思いが生まれました。
そうだったのですね。働き始めた頃はどのような思いがありましたか?
働き始めたばかりの時は右も左もわからずにうまくいかないことも多かったですし、仕事を楽しいと感じる頻度と同じくらい落ち込むことも多かったですね。でもそんなときに、通勤途中の花屋さんの前を通るたびに心がリセットされ整う経験をして、「花をたくさんの人に届けることができれば、日本でストレスを抱えている人たちを減らしていけるんじゃないか」と思いました。それが事業にフラワーサービスを選んだきっかけになりました。
また、特別支援学校の免許を取得するための実習で特別支援学校に行ったときに、「障がいと向き合う子どもたちは働く夢を持っているけども、その夢のほとんどが叶わない」という現実を知りました。そのとき、漠然となのですが、「いつかこの学校の子どもたちの就職先になるような場所を作りたい」と思っていたんです。そこで、心を整える力がある花の仕事で、働くことを夢見る子どもたちの働く夢を叶えることができないかと思い、働きながら花の勉強を始めました。
23歳でローランズを設立!その苦労ややりがいとは?
どのように花の勉強をされたのですか?
土日に花屋さんで修行させてもらったり、民間が開催しているフラワーレッスンに身銭を切っても積極的に参加しました。とにかく学べる機会があるところを自分で探して、そこにアクセスしていきました。
23歳でローランズを設立されますが、不安に思ったことはありましたか?
「失敗するなら若いうちに」という考え方だったので、当時はあまり不安はありませんでした。まずは自分が持っている知識の中で最大限のパフォーマンスを発揮して行こうと思い、身の丈に合ったできることからスタートしたから、というのもあったかもしれません 。
現在のお仕事で楽しいと思うところはどんなところですか?
花を扱う仕事自体がすごく楽しいですね。仕事をする日々が同じ風景ではなくて、季節によって変化があるっていうのはすごくいいなと思います。花の魅力を知っていただいて、お客様が増えることだけでなく、花を通して「一緒に働きたい」と思ってくれる仲間が増えることもすごく嬉しいことだなと思います。
大変だったことはありましたか?
障がいと向き合う当事者だけではなく、当事者と一緒に働くスタッフがつらくなってしまい、退職が続いた時期がありました。起業したばりの頃は、会社の経営のことだけなく人に関するマネジメントの課題を解決するのが特に大変でした。社会人としては約2年間の経験しかなく、「会社とは何か」とか「働きやすくて長く働き続けてもらうにはどうしたらいいか」など、トライ&エラーを繰り返して学びながら進んでいたので、うまく解決できずに人との別れを経験するときはさみしい気持ちでいっぱいでした。
また、会社を立ち上げたばかりのころは、スタッフの悪いところばかりに目がいってしまう時期がありました。「なんで、あれもこれも、ちゃんとしてくれないんだろう」と思ってしまっていました。
どのようにその時期を乗り越えられたのですか?
先輩の経営者の方から、「どうしてやってくれないんだと思ったときこそ、逆にやってくれたことを思い出して数えてみなさい。、実はやってくれてることの方が多いと気がつく」という言葉を教えていただきました。その言葉に出会ってから、人に対する考え方が変わって、相手がしてくれたことや会社に貢献してくれたことなどをを数えるようになり、人に対して以外も物の見方が大きく変化し、どんなことがあっても「良かったこと」を見付ける癖がつき常に前向きに取り組めるようになりました。
「できる仕事に変える」環境を作り、多様な人と働く
障がい当事者と働く上で、どのような苦労がありましたか?
「配慮」と「優遇」の違いはわかりづらく、相手の障がい特性に配慮して仕事を調整しているつもりでも、配慮が行き過ぎてしまうと特別扱いのようになってしまい、障害当事者を優遇してしまうことになってしまうその結果、当事者は「できなかったら誰かがやってくれる」「自分は頑張らなくてもこのラインで認めてもらえる」という感覚になってしまい、その分の皺寄せが別の誰のところに寄ってしまうのです。
障がい当事者のスタッフにお願いしたけれど残ってしまった花の仕事を、健常者のスタッフが巻き取り、徹夜で制作して納品に間に合わせるということが度々起こってしまった時期がありました。ある特定のスタッフに負荷がかかってしまい、今度はそのスタッフが苦しくなってしまい「障がい当事者だからと優遇される状態はおかしい」「同じ働くなのに、こんなにやるべきことが違うことは違和感がある」など、支援の気持ちがあった人も、当事者と働くことから離れてしまうことが起こってしまったときもありました。
障がいへの配慮と優遇の違いを見極めるのが大切なのですね。
そうですね。それぞれ持っている課題が違うので、1人ひとりと丁寧に調整していく必要があります。障がい当事者と一緒に働くスタッフが当事者のできない仕事を巻き取ることがサポートではなくて、彼らができない仕事をアイテムの工夫やチーム体制の構築でいかにできる仕事に変えていくのか、そのための環境づくりが私たちの仕事なのだと思います
具体的に仕事を変えるのではなく、環境を変えるということですね。
はい。実際に環境整備を行なったところ、障がい当事者のスタッフたちはできることが増えて自信がつき、業務効率も上がっていきました。そして、当事者の働くことをサポートしたい、一緒に働きたいと入社した健常者のスタッフも間近で成長し変化する当事者の姿を見てやりがいに繋がるようになり、良いサイクルが生まれるようになりました。
これからはどんなことをしていきたいと考えていらっしゃいますか?
日本全体の障がい者雇用はまだまだ進んでいません。これからは自分の会社の雇用のことだけでなく、より多くの企業で障がい者雇用が促進されていくように、私たちの持っているノウハウを提供していきたいと思っています。
大切なのは相手の言葉を引き出すこと
これから、障がい当事者と一緒に働く仕事や福祉に関わる仕事をしたいと考えている学生にアドバイスをお願いします。
障がい当事者に限らず、誰かと一緒に働くときに大切なのはは「聞く力」だと思っています。現場では、たくさんの知識がなくても、相手の話を聞き、本当に伝えたいことが何かを確認できることが大切です。例えば障がいについてたくさんの情報を調べて知識をためて、障がい特性と本人の性格が重なると、必要なサポートが変化することは多いです。なので、一般的な障害特性や相手の事前情報に囚われすぎず、相手が本当に悩んでいることや伝えたいことを引き出す「聞く力」をぜひ身に付けて頂けると様々な場面で生かしていけると思います。
最後に人生の先輩としてアドバイスをお願いします!
社会人になると自分が自由に使える時間が少なくなってしまうので、学生である今のうちに興味や関心のあることは全部やる!くらいたくさんの体験をしてほしいです。学生時代の思いっきり楽しんだことや夢中になったことが、すぐか、少し先か、何らかの未来の自分を作る経験になるかもしれません。そんな可能性にたくさん出会う期間にしてくださいね。
取材を終えて
株式会社ローランズの運営するフラワーカフェ「ローランズ原宿店」に訪れてから、ローランズの事業に興味を持ち、取材させていただきました。インタビューを通して多様な人々と働くことの魅力を知ることができました!貴重なお話本当にありがとうございました。
写真提供:福寿さん
株式会社ローランズは、人と環境への優しさを包み、花や緑の空間装飾・贈答花のお届けを行う、”社会的役割を軸とした花屋”です。花や緑は人の心を整える力を持っており、その優しさに包まれて、ローランズでは障がいや難病と向き合うスタッフが多く活躍しています。花や緑を通じて「排除なく、誰もが花咲く社会」を目指しています。