「子育て・仕事・読書」三本柱の秘訣は、できる/できないの区別をはっきりつけること
出版社に入りたいと思ったきっかけは何だったのですか?
幼いころから読書が大好きで、編集者になりたいと初めて思ったのは、小学生の頃だったと思います。漫画の巻末に載っている、作者と担当編集の裏話に憧れたんです。本に関していろいろなことをやってみたくて、総合出版社を目指しました。今でも本は、月に20冊くらい読んでいます。
月に20冊!本当にすごいですね。浅野さんはお子さんが3人いらっしゃるとのことですが、子育て・仕事の両立だけでなく読書の時間まで作るためには、どのように工夫しているのですか?
できることとできないことの区別をはっきりつけています。母親としてできないことなんてたくさんありますよ(笑)。私も2人目を産んだときくらいまでは、「母親としてああいう風にしなければいけないんじゃないか」とか思っていましたが、3人目を産んで、「あ、無理だな」って(笑)。それで、好きなことは頑張るけど、ダメなことはしょうがないって、開き直って生きるようになりました。
そもそも、全部を完璧にこなすことなんて無理ですよ。働きながら家事育児もすべてこなしてたら、睡眠時間削られて、病気になってしまいますから。だから、できることはやるけど、できないことは、お金を払って専門の方にお願いしたりもしています。母親だからって、何でもこなす必要はないと思います。
女性として、心から共感します。しかし、「開き直る」にはやはり、パートナーとの協力体制が必要かと思います。その点に関してはどうですか?
現在は、ほぼフェアな関係を築けていると思います。新婚当初は私も夢見てて、良い妻としていろいろやりたくなってしまうし、遠慮しているところもありましたけど、考えてみれば、女性だけがやる必要はないですからね。夫にも、そういう固定観念みたいなものがあったので、結婚してからの15年をかけて崩していきました。嫌なことは嫌だとか、諦めずに言い続けましたね(笑)。今では、お互いの予定も尊重しながら、やりくりすることができています。
世間の声に縛られないで!自分の「本当の声」に耳を傾ければ、やりたいことが見えてくる
これから、どのようなことをしてみたいと思っていますか?
今の仕事が自分に合っているので、極めていきたいと思っています。実は、今まで仕事が嫌だと思ったことは無くて、忙しい時もすごく楽しいんです。それに、編集長としてはまだ一年目で、私なりの編集部運営というのはこれからだと思っているので、がんばりたいですね。
学生の中には、出版社に憧れている方も多くいると思います。そんな学生たちに何かアドバイスはありますか?
編集者の場合、企画力が求められるので、常に情報をキャッチする気持ちにあふれていることは大切だと思います。あとは、多くの人と関わる仕事なので、打たれ強さも必要かな、と。最後に、これは出版社に限らないことですが、エントリーシートは死ぬ気で書いてください(笑)。
エントリーシートですか?
はい。面接官は、エントリーシートに書いてあることからしか質問できません。だから、「とりあえず通ればいいや」と思わずに、真剣に取り組んでほしいです。面接官に聞いてもらえるようなことをたくさん書いて、いろいろな人に添削してもらってください。そして、最高のエントリーシートを作ってください。そうすればきっとそれが、最後まであなたの味方になってくれると思います。
分かりました。アドバイスありがとうございます。最後に、学生にメッセージをお願いします。
まず、長く働き続けていくためにはどうすればいいか、考えてほしいです。今って、結婚しても子どもを持っても、共働きが大前提ですよね。だからこそ妥協せず、好きな仕事に就けるようにがんばってほしいです。
そして、mustとwantを混ぜないこと。これは私が好きな作家のアルテイシアさんの言葉なのですが、今、自分がしていることがmustなのかwantなのか考えることで、生きやすくなると思います。世の中の「こうすべき」とか「女性だから」とかに縛られず、自分の「本当の声」を聞いて、本当にやりたいことをしてください。
取材を終えて
今回の取材では、編集者という職業についてのみならず、生きていくうえで大切なことを沢山学ぶことができました。誰しも、世間の先入観に生きづらさを感じたことがあるのではないかと思います。自分のその一人でした。しかし、浅野さんの「世間の声に縛られず、自分の声を聴くべき」という言葉を聞いて、「自分自身のことをもっと見つめなおそう」と思えました。そして何より、仕事・子育て・読書をこなす浅野さんのパワフルな人柄に、話を聴いている私まで元気づけられた気がします。これから、自分の声を聴いて、本当にやりたいことをしていきたいです。浅野さん、ありがとうございました!
写真提供:浅野さん
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