日本航空でパイロットとして働く田村さん。強い意志で挑んだパイロットの道。諦めない気持ちを貫いて、夢を叶えられました。女性でパイロット?と思った読者の皆さん、田村さんのお話を聞いて、職業の選択肢としてパイロットも考えてみませんか。
固定観念を捨ててほしい。多くの人に可能性はある
現在のお仕事内容を教えてください。
日本航空でボーイング737-800型機という機種の副操縦士をしています。165人乗りの飛行機で国内線を中心に業務しています。1日のフライトはだいたい3便で、日帰りだと4便になることもあります。
例えば、先日のフライトスケジュールでは、羽田から青森に行って、青森から北九州に行き、北九州に泊まりました。次の日は、北九州から羽田に行き、広島に行って羽田に戻るというスケジュールでした。飛行機を操縦する以外にも、万が一他のパイロットが風邪などを引いたときに代わるためのスタンバイという業務や情報を共有するミーティングなどの業務もあります。
他の仕事を経験されてから、パイロットになられたそうですね。何かきっかけはありましたか。
27歳の頃にこれからの人生について悩んだことがきっかけです。大学では水産学部でゾウリムシを使った体内時計の研究をしていました。大学4年生のとき、その道を極めるために大学院に行くか就職するかの決断を迫られ、就職を選択して生命保険の法人営業で働き始めました。
そこで働きながら数年経ったとき、このままでいいのかなと迷いが生まれて。そのときにたまたまテレビ番組で目に留まったのがドクターヘリのパイロットでした。わかりやすく、人のお役に立てる仕事だなと思い、調べたのが人生の転機でしたね。
調べていくうちに飛行機のパイロットも選択肢に入って、1年ほど悩みました。それでも最終的には飛んでみたい!と、空を飛ぶ仕事を目指すことが固まってライセンスを取ることにしました。
元からパイロットになりたかったというわけではなかったんですね。
そうなんです。でも、回り道をしても、諦めなければ修正はできるということを知っておいてほしいです。もちろん、最初から迷わず好きなことに向かっていけたら、それに越したことはないと思います。ただ、そうじゃなくても何かやりたいことが決まったときに、そこに突き進めばいいんです。
女性でパイロットって珍しいですよね。
弊社でも年々増えてはいるものの、女性のパイロットはまだまだ少ないのが現状です。パイロットは男性の仕事だとか、メガネやコンタクトではなれないなど、固定観念が世の中にあるのではないかと思います。
確かに昔は男性しかいませんでしたが、現在は女性パイロットも活躍しています。また、目が悪い人でも矯正視力で規定を満たせばパイロットになれます。性別関係なく多くの人に可能性があるということを知って、興味を持っていただきたいです。
決めたらあとは突き進むだけ!
田村さんは具体的にパイロットにはどのようになったんですか。
パイロットになるには大きく3つの方法があります。1つ目は大学卒で航空会社に入社し、自社のパイロット養成訓練で、ライセンスを取得する方法です。2つ目は、独立行政法人航空大学校に入学して、幾つかのライセンスを取得後に航空会社に入社する方法です。最後に私が選んだ方法なのですが、民間のパイロット養成学校に入学して、ライセンスを取得する方法です。
民間航空のパイロットになるためのライセンスは何種類かありまして、私はパイロットになろうと決めて、アメリカの養成学校に行き、小型機のライセンスを取得しました。その後帰国して日本の養成学校に行き、JALエクスプレス(※現在は日本航空と統合)という航空会社に内定をいただき、入社しました。今は日本にもパイロット養成コースがある大学がありますね。
パイロットの免許を取る過程で、辛くてパイロット目指すのを辞めたいと思ったことはありましたか。
辛くはなかったですね。パイロットを目指すことは決まっていたし、そこに向かっていたので楽しかったですよ。
確かに免許をとって就職できなかったらどうしようという怖さは常に根底にありました。しかしそればかり考えていたら怖くて何もできないので、「今、目の前にあることを一生懸命やる」という気持ちでした。
思いを貫いたコツとかはありますか。
私の場合は、仕事を辞めたり、結婚を辞めたり、他の全部を捨ててきたわけで、これにかけなければならない、何がなんでも成功させるという気持ちだけでしたね。
訓練はたしかに厳しいです。それでも、周りにいる人たちも同じようにパイロットになりたいという一心で訓練を受けている人たちでしたので、みんなが同じ目標でやるぞという感じで、仲間としてお互い協力し合っていましたね。今振り返れば、貴重な時間でしたし、楽しかったなぁと思います。遅れてきた青春だったのかなぁって(笑)。
仲間という関係性って素敵ですね。
他の職業だと、出世競争で同期が敵にもなりかねないと思うんです。でも、パイロットは絶対に敵じゃないです。仲間であって、みんなで安全を守って一緒に成長していこうという関係性がいいところだなと思います。
大きい機長を目指して。生きがいを仕事に!
田村さんにとってパイロットというお仕事はどういう存在ですか。
生きがいです。厳しいこともいっぱいありますが、そういうのを超えて、楽しいことがある職業だと思います。やりがいのある仕事だと思いますし、なって損はさせないと言えますね!
1番のやりがいはどんなことですか?
お客さまを目的地に、安全に快適に時間内にお連れすること。それがやりがいです。天候条件などで難しい局面があったときにも、お客さまに最善のサービスを提供していきたいです。
それからコックピットの窓は飛行機の中で1番大きいので、そこから見る景色は格別です。業務で行った先々で美味しいものを食べられるのも楽しいですね。
パイロットとして、これからの目標はありますか。
現在、副操縦士なので、まずは機長になることです。それが最大の目標ですね。目の前にあることなので、がんばります。
田村さんはどんな機長になりたいですか。
大きい機長です。飛行機はパイロットをはじめとして、客室乗務員、地上職員と連携して飛んでいます。最終的に決断するのは機長なので、視野を広くして、選択肢を多く持っていたいです。私の目指す機長は、運航に関わる人たち全員の意見に耳を傾けて、正しい最終判断をくだせる存在です。
性別は関係ない。諦めない気持ちさえあれば
これから、パイロットになりたいと思っている人へのアドバイスをお願いします。
健康第一で、幅広く視野を持って勉強も運動も、目の前のことをがんばってほしいと思います。
あとはやりたい気持ち!初めて夢見た頃の気持ちを忘れないでほしいです。たまに辛いことがあると、やっぱり無理かなと思ってしまうかもしれないですけど、「そうだ、すごくなりたかったんだな!」という初心を忘れないでがんばっていただきたいと思います。
将来の職業の選択肢として、今はパイロットが入っていない人へ何か伝えたいことはありますか。
まずは、女性でもパイロットになれるということですね。航空業界でいうと女性は客室乗務員やグランドスタッフを目指す人が多いように思えますが、パイロットも男性に限られた職業ではないです。特殊な能力も必要ないので、ぜひ男女関係なくパイロットを目指される方が増えればいいなと思います。お待ちしています。
最後に、人生の先輩として、女子大生にメッセージをお願いします。
人生は一度きりですから、自分が本当にやりたいことをやってほしいと思います。私がそうであったように、諦めない気持ちがあれば進む道はいくらでも修正できます。自分で決断をして、人生に責任を持って生きていってほしいと思います。
人生って毎日、選択の連続じゃないですか。人から言われてどうこうとかではなくて、自分自身で選んでほしいと思うんです。例えばそれがちょっと悪い方向に行ったとしても、自分が選んだのだからなんとかしようと、乗り越えてほしいですね。人生山あり谷ありだと思いますが、思う方向に突き進んでいってほしいです。
取材を終えて
本当に楽しくて、やりたいことをやれている人は素直にかっこいい!諦めない気持ちを貫けば、自分の人生は自分で変えられるということを感じました。私も田村さんのように、自分の決めた道に責任を持って進んでいかなければと身が引き締まる思いでした。お忙しい中、貴重なお話ありがとうございました。
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