ファッション誌「Oggi」の編集者(デスク)として、小学館で働く加藤真実さん。産休、育休を経験し、現在は時短で働いているそうです。加藤さんは日々多忙な生活を送っているとは思えないほどキラキラしていました。そんな素敵なキャリアウーマンである加藤さんに、出版社で働くこと、仕事に対する思い、学生時代のすごし方など、私たちの生活に参考になるお話をたくさんしていただきました。ぜひご覧ください。
出版社一筋で働くまでの道のり
出版業界に興味を持ったきっかけはなんですか?
就職活動を始めるとき、自分がどういうことに興味があるかなって考えみると、雑誌と洋服だったんですよね。それに関する仕事といえば、女性ファッション誌が思い浮かびました。
私のときは、大学3年生の冬ごろから就職活動が始まったんですが、就職活動について深く考えていたわけではありませんでした。でも、出版社は採用枠が狭いので、それだけに絞らずに、他の業界も受けていました。ちょうどIT業界が盛り上がっているときだったので、IT業界も受けましたし、他にもメーカー、アパレル、広告代理店など、幅広く見ていました。
就活が厳しい時代でもあったと思うんですが、それでも、自分がやりたい仕事に就けたってすごいことですよね。何が加藤さんを導いたのだと思いますか?
小さい頃から文章を書くのがすごく好きだったんですよね。それもあって母親に、毎日日記を書いて先生に提出してみたらと言われて、宿題じゃないのに勝手に提出していました。
ファッションも好きで、学生時代はダンスをしていたことから「音楽を感じられる服装であるか」をテーマに服を選んでいました(笑)。小さい頃から、母親が毎月4〜5冊雑誌を買って読んでいた影響もあるんじゃないかと思います。
出版業界に進まれてからは、どんなキャリアを歩んでこられたんですか?
この仕事(Oggiの編集)に就く前は、新卒で他の出版社に入社して、女性カジュアルファッション誌を3年くらい担当しました。その後、小学館が中途採用を募集していたので、応募しました。小学館に応募したのは、人を大事にしている会社だよと知人から聞いていたこともありますね。
入社当時は、AneCanという雑誌が創刊する時期だったので、創刊メンバーという形で7年携わりました。そのあとOggiに異動して産休育休を挟んで、今4年目になります。
自分たちの“面白い”を誌面にする
現在のOggi編集部デスクでは、具体的にどのようなお仕事をなさっているんですか?
具体的には、10月号だったら10月号にやる企画のラインナップをみんなで考え、編集長を含めて企画会議を行います。企画が決定したら、担当が割り振られます。その後、企画のコンテを描いて、撮影をして、原稿書いて、入稿して、校了して、すべての企画が合わさって雑誌が完成します。
編集者(デスク)は、編集長と現場担当者の間にいる中間管理職のようなポジションです。まずは、現場の担当と相談をして、どういう切り口があって、どう進めればよいかを一緒に考えていきます。
撮影現場に立ち会う場合もありますが、基本的には現場に行かず、撮影から校了まで一歩引いた立場でアドバイスします。担当する企画は、15本くらいですね。ほかにも付録作成やタイアップ記事の提案、イベントの企画・運営なども担当しています。
多岐に渡ってお仕事されているんですね!日々感じている仕事の面白さを教えてください。
コンテから始まって最終的にいろんな人の力が加わって雑誌ができる、まさに作って行く過程を見られるのがすごく楽しいですね。
もちろん、自分だけの力で作るわけではないので、関係する人に「こういうものを作りたい」と説明する必要があります。その結果、自分の思い通りにならないこともあります。一生懸命作ったものでも、読者アンケートでつまらないランキング1位になることもありますし(笑) 。でも、そういうことも含めて楽しいなって思います!
心がけていること、これだけは譲れないことなどはありますか?
読者の人に喜んでもらいたいというのは前提として、自分たちが見て面白いと思えることがとても大事だと思います。デスクの場合、自分で現場に行き撮影のディレクションをして原稿書くわけではないので、客観的に考えつつも「面白いものを、驚きのあるものを作りたい」と真剣に思って仕事をするようにしています。
つい最近の話ですが、Oggi11月号が創刊以来初めての完売、そして雑誌では異例の重版となりました。出版不況と言われている状況下においても、こうしていい結果が出るとすごく励みになります。
Oggiの他の雑誌と違うところ、差別化を図っているところがあれば教えてください。
Oggiは、女性が社会進出する、まさにそのときに創刊された雑誌なんです。キャリアに真剣に向き合っている女性の読者が多いので、その気持ちをくみ取った内容にしようという想いは創刊当時からありますね。
例えば、婚活に疲れてしまったとか、結婚して出産しても働き続けられるのかという話であったり、女性が働いて行く中で感じる生きづらさであったり。そういった働く女性の悩みに寄り添った内容にしたいと思っています。
最近は、毎号同じ雑誌を買われる方も減っているんです。「これはどうしても買って読まなくては!」という魅力的なコンテンツをひとつでも多くつくって、選ばれる雑誌になりたいなと思います。
加藤さんにとって仕事とはどのようなものですか?
仕事は、誰かに強制されてやっているものではないですよね。極端に言えば、辞めたければ、辞めていいわけです。自分の意志で働いているからこそ、役割を果たす責任を感じています。私にとって仕事とは責任ですね。今は時短で働いていますが、家事は割り切ることも大事なんじゃないかと思います。育児でも、やるべきことがたくさんありますし。
今後の目標はありますか?
デジタルとの連携など、やれることはたくさんあると思います。常に何ができるんだろうと考えながら、新しいことにチャレンジできたらと思いますね。
今は時短勤務で会社のデスクに座っていられる時間には限りがあります。でも、育児がヒントになることもありますよ。絵本にはいろんな仕掛けがあるので、子どもに絵本を読み聞かせながら、Oggiに活かせることはないかなって考えたりしています。
自分の苦手なこと、適していることを見極める
学生時代一番時間を費やしたのはなんですか?
大学ではダンスサークルに入っていました。部活みたいに厳しくバイトも禁止だったので、ほぼサークル一色でしたね。人をまとめるタイプじゃなかったんですけど、3年生でサークルの副代表をやることになったんです。100人くらいメンバーがいたので、1つのことに向かっているはずなのにまとまらないと感じることも多くて、悩みましたね。
一方で、私は大雑把な性格なので、細かい仕事が苦手だったんです。ミスをしたときに周囲の人に助けてもらって、大きなことをやるにはみんなの力が必要だと実感しました。そういったチームでの助け合いやマネージメントの難しさを社会に出る前に学べてよかったと思います。
ダンス以外に挑戦したことはありましたか?
ファイナンシャルプランナーの勉強をしました。将来的にいい資格になりそうだと、母親が見つけてきてくれました(笑)。
私は文学部で数字は苦手だったんですが、苦手なことにも挑戦してみようと思ったんです。最終的に資格は取れましたが、やっぱり苦手なものは苦手でしたね。その後もっと深く勉強しようと思えなかったんです。無理して自分の好きじゃないことをやってもダメなんだなって思いました。
学生へのメッセージ
出版業界にはどういう人が向いていると思いますか?
どんな状況でも楽しめる人や、アイデアを考えつくのが好きな人が向いていると思います。バカらしいって思って考えるのをやめるんじゃなくて、そのアイデアを実現するにはどうしたらいいかなっていうことを真剣に考えられる人かな。
就活についてのアドバイスをお願いします。
いろんな説明会行くのとかって疲れちゃいません(笑)?自分の興味を見極めて、興味がないものは早く捨てちゃうっていうことも大事だと思います。
会社選びの基準って難しいですよね。
私の場合、最終的にIT企業、アパレルメーカー、出版社に内定をもらって、どこにするか迷いました。そのときに、私が出版社を辞退して他の人が入社したとしたら、それを羨ましいと思うか考えてみたんです。そしたら「やっぱり羨ましい!」と思ったんですね。そこで、私は本当に出版社に行きたいんだなって実感しました。
最後に学生にメッセージをお願いします
学生時代は、とにかく友だちとの絆を深めてほしいなって思います。私は、サークルの男女の5人くらいでメーリングリスト、今でいうラインのグループみたいなのを作って、就活の悩みや日々の出来事だとかを投稿しあったりしました。そのときの友だちとは、今もずーっと繋がっていますね。
社会人になってからも友だちはできますが、学生時代の友だちは自分のカッコ悪い部分も全部知っている、本当に貴重でありがたい存在です。
取材を終えて
編集部のデスクで多忙な日々を送る中、ストレスはあまり感じないそうです。それは、自分のやりたい編集部での仕事を楽しみ、周りに流されず、自分らしい生き方をされているからなのではないかと感じました。加藤さんのアドバイスから、残りの学生生活は友だちを大切にし、自分の好きなこと、今しかできないことを、精一杯したいと思いました。 加藤さん、今回は貴重なお話をありがとうございました。これからも、キラキラした素敵な女性でいてください!!! そして、加藤さんのさらなるご活躍を祈っております。
株式会社小学館
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