海運会社の商船三井で働く吉田詩織さん。8年間のキャリアの中で、香港での海外勤務や社長秘書等、様々なご経験をされています。
海運業界との出会いから、国籍の違う方との仕事を通じて学んだこと、そしてひとりの女性として大切にしたいことまで、たくさん伺ってきました。仕事もプライベートも諦めない。自分らしくハツラツと生きていきたいみなさん、必見です。
海にロマンを感じて
吉田さんが海運業界に就職しようと思ったきっかけを教えてください。
就職活動を始めた頃は、海運業という業界をまったく知りませんでした。大学の掲示板でたまたま見つけた海運会社の説明会を兼ねたバスツアーに参加したのがきっかけです。大井埠頭で、ゆったりと進む大きな船を見て、海にロマンを感じたんですよね(笑)。
日本は島国だから、原油、天然ガス等のエネルギーや、食料・原材料等のほとんどを船で運ぶ必要があります。私たちの暮らしや日本の産業を下支えしているこの業界に興味が湧き、その使命感やダイナミズムに心動かされ、「ここで仕事がしたい」と思いました。
これまではどんなキャリアを歩んでこられましたか。
入社して最初の配属は「定航部」というコンテナ船輸送に携わる部署でした。3年目からの2年間は、定航部の本社機能の海外(香港)移転に伴い、香港に駐在しました。帰国してからの2年半は秘書室に在籍。社長・会長秘書を経験し、2016年10月から石炭船部に配属となり今に至ります。
香港勤務の辞令が出たのは入社3年目。不安はありませんでしたか?
いずれは海外で働いてみたいという気持ちがあったので、思っていたよりも早く良いチャンスをいただけたと思い嬉しかった半面、帰国子女でもなかったので、言葉の壁は不安でした。
実際働いてみて、最初は思うように気持ちが伝えられずもどかしい思いをしたり、家族や友人と離れて働くことが心細いと感じることもありました。
でも、チームのメンバーと、根気強く目の前の課題に向き合う中で、ローカルスタッフと連携して仕事を進めていく楽しさも実感することができましたし、随分度胸もついたと思います。
香港ではどんなお仕事をしていたのか教えてください。
コンテナ船サービスでは、世界各地を結ぶ航路網がありますが、私は「トレードマネジメント」というチームで、南米/アフリカ地域を担当していました。航路の新設や寄港地の合理化、投入船の運航管理、世界中の営業担当へのプライシングやマーケティングの方針策定、採算管理等の業務をしていました。営業方針や採算管理について話し合うため、南アフリカまで一人で出張に行ったこともあります。
香港オフィスは、世界中のローカルスタッフを率いていく司令塔のような役割をしています。関係者が非常に多いですし、いわゆる日本人特有の「阿吽の呼吸」というものは全く通用しないんですよね。苦労もしましたが、何事も筋道を立てて明確に言葉で伝える癖がついたのは、とてもありがたいことだと思っています。
香港での勤務を振り返って、どんなことが印象に残っていますか?
船が悪天候により大幅に遅延したときや、荷役中にトラブルが発生したときに、香港オフィス内だけではなく、現地のキャプテンやターミナルスタッフ、各地のセールス等、世界中の関係者と連携しながら対応する場面が多くありました。
刻一刻と状況が変わる中で、常に最新の状況を関係者に共有しながら最善の策を練り、何とか解決に導くことができたときは、非常に達成感を感じました。たくさんのやりとりを通じて、特に南アフリカのキャプテンとは、何でも話し合える良い信頼関係が築けたと思っています。
仕事人として、ひとりの女性として
現在の石炭船部でのお仕事の内容を教えてください。
主に国内の電力会社向けに、豪州やインドネシア等の輸出国から火力発電用の燃料となる石炭をドライバルク船で運んでいます。その船の運航管理と、新たな契約獲得や既存商権の確保に向けた営業業務を主に担当しています。月に何度も出張して現場に足を運び、お客様からいろいろなお話を伺いながら、早く一人前の営業ウーマンになれるよう、日々奮闘しています。
プライベートでは、ご結婚はされていますか?
一昨年社内結婚しました。実は香港駐在の辞令を受けたのは、ちょうど夫と付き合いたての頃でした。辞令は嬉しかったのですが、プライベートはどうなるんだろう、と当時はとても不安でしたね。でも、2年間の遠距離恋愛を経て帰国後に結婚し、今は新婚生活を楽しんでいます。仕事ももちろん大切ですが、プライベートもとても大事にして、二人でがんばり、諦めなかった、それが良かったと思いますし、夫には非常に感謝しています。
家庭と仕事の両立についてどう考えていらっしゃいますか?
私はまだ子どももいませんので、その意味では家庭との両立の大変さはまだ理解できていないのだろうと思います。でも家庭も仕事も大切にしたい、諦めたくない、という気持ちが強いですね。女性は結婚や出産のタイミングを考えて海外赴任は難しいと思うこともあるだろうけど、こうありたい、と強く願えば、その時は案外どうにかなるものだと思います。
1年目に私の担当トレーナーでいらした女性の先輩は、当社で初めて海外転勤に旦那さんが帯同された方なんです。海外出張等も含め精力的に働きながら、お二人で子育てもされていらっしゃいます。柔軟な考えを持って、家庭と仕事を両立されているロールモデルとして、ひとつ道を切り開いた先輩として、とても尊敬し、心強く思っています。
私らしく、肩肘張らずに
吉田さんにとって仕事とは何ですか
一言にするのは難しいですが、自己実現の場でしょうか。ただお金をいただくだけではなく、誰かに「あなたと働けてよかった」と言ってもらえること。自分一人では力及ばなくとも、声を発すれば必ず助けてくれる人がいること。それによって、チームで達成感を共有できること。そのすべてが、私にとって日々のエネルギーや生きがいになっています。仕事をしない毎日は今の私には考えられません。
仕事をする際に、心がけていることはありますか?
たくさんの関係者がいる中で物事を進めていくと、必ずしも誰しもが納得いく結果にはならないこともあります。それでも、どうにか折り合いをつけて前に進めていかなければならないのですが、そういうときこそ、メールや電話で終わらせず、相手の顔を見て直接会話を交わすようにしています。
後々何か大事な局面で、顔が浮かんで「まぁ、あの人のためならやってあげようかな」と相手に思ってもらえるかもらえないかは、大きな差になると思っています。
今後の目標を教えてください
仕事では、後世に残せるようなものに関わりたいと思っています。プライベートでは、パートナーや家族を大切にする、普通の女性でいたい。子どもも産みたいですね。
女性が肩肘張らずに、当たり前のように家庭と仕事を両立できたらいいなと思っています。私自身も気持ちよく働いていき、その姿が後に続く後輩たちを励ますことができたら嬉しいです。
後輩へのアドバイスをお願いします
海外に興味がある人、大きな舞台にチャレンジしたいという人には、海運業界はとてもいいところだと思います。いい意味で性別にとらわれず働けるので、尻込みせずにぜひ受けてもらえたら嬉しいです。
就活中は、私の場合、業界を絞りすぎることはしませんでした。「この業界が向いている」と思い込みすぎないほうがよいと思います。企業側も面接を通して向き不向きを判断してくれているので、企業側の「人を見るセンス」に委ねてみるのも、案外大切かもしれません。
そして、学生のうちはやりたいことにとことん、悔いのないようにやりきってほしいです。仲間と喜んだり時にはぶつかったり、心が揺さぶられる経験をいっぱいしたほうがいいと思います。その経験が、仕事で様々な人達と関わっていく上での自信に繋がっていくと思います。
取材を終えて
海運業はエネルギー資源の運搬を担うことで、私たちの生活を陰から支えてくれているんですね!今回、なかなかお話を聞く機会がない海運業界のお仕事や働き方を知ることができてよかったです。
海外勤務など仕事はもちろん、結婚もしていて、仕事も私生活も吉田さんらしく楽しんでいる雰囲気が伝わってきました!
私も残りの学生生活は少ないですが、もっと心を揺さぶられるような経験をしたいと思いました。吉田さん、ありがとうございました。
商船三井は、資源、エネルギー、原材料、製品など、さまざまな物資を安全・安定的に輸送することで世界中の人々の暮らしや産業を支えています。 また、客船とフェリーによる船旅、タグボート、倉庫、海事コンサルタント、さらに不動産など、多彩なサービスを展開しています。