みなさんはエンジニアリングという仕事を知っていますか。今回は、エンジニアリングの現場で、プロジェクトマネージャーとして活躍する、新日鉄住金エンジニアリングの戸田さんにインタビューを行いました。人類学を学んでいた戸田さんが飛び込んだ、エンジニアリング業界とは?仕事が楽しくてしかたがないという、戸田さんのお話は必見です。
会社も国籍も関係なく、まずコミュニケーションから
現在の仕事内容を教えてください。
当社は世界を相手にプラントやインフラを提供するエンジニアリングの仕事をしています。プラントとは、製鉄所や発電所のような、工場のことです。プラントはすべてオーダーメイドのため、お客さまと一緒に一つ一つ話し合いながら造り上げていきます。一つのプラントが完成するまでに、計画、実行、設計、調達、出荷、工事、そしてプラントの性能を確認する試運転とたくさんの工程があり、様々な人が関わっているんですよ。
その中で、私はプロジェクトマネージャーとしてプロジェクト全体が円滑に進むようにプロジェクト全体のマネジメント、例えば工程やコスト、品質、リスク、リソース等々の管理をしています。営業が受注した後からプラントを実際にお客さまに引き渡すまでの一連の流れを管理する仕事です。
プロジェクト全体の流れを管理するというのは大変そうですね。プロジェクトマネージャーの仕事の楽しさは何ですか?
プロジェクト全体を見渡して仕事ができることはやりがいのひとつです。当社だけではなくお客さまも一緒になって、一つのチームとしての目標に向かって「ぐっと」仕事を推し進める。その一体感はゾクゾクするものがあります。この感覚は、ほかではなかなか味わえません。
どのようなプロジェクトがあるのですか?
ちょうど数か月前まで、アメリカにある会社の製鉄プラントを造るプロジェクトを担当していました。計画・設計・調達の1年は日本を拠点に毎月出張して現地とやり取りし、工事が始まってからはアメリカに滞在して仕事をしていました。
どのようなことを意識して仕事をしていますか?
とにかくいろんな関係者と話すことを心がけています。プロジェクトの仕事は、いろんな人に協力してもらわないとできません。だから、お互い協力し合える仲間を増やしていくことを意識していますね。それは日本人だけでなく、アメリカ人に対しても同じです。
海外の方と仕事をするとなると、価値観の違いなどがあったのではないですか?
価値観の違い、ありましたね。例えば、工程の管理の際、日本人はワーストケースを想定し、余裕をもってスケジュールを考えるんです。反対にアメリカ人って、ベストケースしか考えないんですよね。だから、かみ合わないことが多くて(笑)。
お互いに「なんで?」と思うときは、ひとつひとつひも解いていくことが重要です。間に入って、対立した意見を調整していくのもプロジェクトマネージャーの仕事です。
エンジニアリングという仕事に”一目惚れ”
「エンジニアリング」とは学生にとって聞きなれない言葉だと思うのですが、なぜこの仕事を選んだのですか?
就職活動を始めた頃は、大学と大学院でアフリカの研究をしていたこともあり、開発援助に携わりたいと思っていました。でも、自分が何をしたいのかと突き詰めていくと、実際に現場でどういうものが必要か考えて作り上げていくメーカー側のほうが面白そうだなと思うようになったんです。
はじめからエンジニアリングの仕事に興味があったわけではないのですね。
そうです。ある日、たまたま鉄鋼会社に勤務をしていた友人に、「鉄が向いているんじゃない?」と言われたんです。根拠は不明ですけど(笑)。そのことばをきっかけにして当社の説明会に参加し、初めてエンジニアリングという仕事を知りました。
当社が手掛けている海洋事業を知ったときは、非常に興味をそそられましたね。また、社員ひとりひとりが熱い想いを持って、日々の仕事に取り組んでいると感じられたんです。私自身もこんな風に働きたいと思い入社を決めました。
入社後は、どのような仕事をしていたのですか?
調達の仕事です。当社が提供するプラントを造るのに必要な機材を世界各国から調達していました。はじめのうちは、いつも購入しているメーカーさんに声をかけて機材を手配していましたが、次第に前例踏襲のやり方では物足りなさを感じるようになりました。そこで、どんどん新しいメーカーさんを探しては、プロジェクトに紹介して新たに採用する、新しい道を開拓していくことに楽しさを感じていましたね。
調達からプロジェクトマネージャーへの異動は、希望を出したのですか?
上司との面談で、ゆくゆくはプロジェクトマネージャーの仕事をやってみたいと伝えていましたが、まさか4年目でいきなり挑戦できるとは思っておらず、とても驚きました。
4年目という早い段階でプロジェクトマネージャーになったことで、プレッシャーを感じたりしませんでしたか?
「やっていいんですか?」と思いました(笑)。なかなかやらせてもらえる仕事ではない、という認識だったので嬉しかったです。心配よりも、楽しみやわくわく感のほうが大きかったですね。
お客さまからいたいだいた感謝状は、一生の宝物!
これまでで、一番達成感を覚えた瞬間はいつですか?
アメリカの製鉄プラントのプロジェクトの立ち上げが完了し、お客さまからOKの声をいただけたときです。お客さまの満足はプロジェクトマネージャーとして最大のミッションだと思っています。これまでのマネジメントや信頼関係が実を結んだからこそ今回の結果に結びついたのだと思い、安堵の気持ちと達成感でいっぱいでした。
なんと、今回担当したアメリカの会社から、戸田さんの名前入りの感謝状をいただいたそうですね。すごいですね!
あれは嬉しかったですね、一生の宝物です。ひとつやり遂げたな、と感じますね。プロジェクトマネージャーとして、お客さまに理解していただくのはもちろん、お互いに助け合うところは助け合って一緒に仕事をしていく「プロジェクトチーム」を、当社だけでなくお客さまも巻き込んで作り上げられたのかなと思います。
話を伺っていると、すごく楽しそうに仕事されているなと感じます。
楽しいですね。「割と」というより本当に(笑)。当社は男性が多いですが、女性だからサポート業務だけというわけではありません。私のようにプロジェクトに放り込まれて、「現場に行ってこい」というのもあります。私はそれが逆に心地よいというか、楽しくやらせていただいています。
そんな戸田さんにとって、仕事とは何ですか?
もはや生活の一部なので、自分の人生を豊かにするものかなと思います。「この仕事をしていなかったら何やっていたんだろう」って思うくらい。今の仕事をしているからこそ経験できることもあり、人生がどんどん豊かになっている気がします。
ハナジョブ読者へのアドバイスをお願いします!
会社を知る時間と同じくらい自分を知る時間をとったほうがいいと思います。例えば、「どうして自分はあの時に心を動かされたのだろう」など。過去や現時点での自分を知ることがあって初めて、「じゃあ何をしたいんだ」という未来を考えることができると思います。なかなか自分のことを意識的に知る機会ってないと思うので、まず深く考えてみてほしいです。
そして最後は「できる」「できない」というより、「やるか」「やらないか」だと思っています。自分で自分の背中を押せるくらい力強く、前進あるのみ。自分で自分の道を狭めないでほしいですね。
取材を終えて
とにかく戸田さんの仕事への愛が伝わってくるインタビューでした!その仕事への熱い想いがアメリカの企業にも伝わり感謝状という形になったんだなと思います。「知的な雰囲気」でありながら「仕事への情熱」が強く、素敵だと感じました。学生時代はアフリカの地域に入り込んでフィールドワークをしていた戸田さん。そのパワーは、場所が変わっても発揮されているんですね。戸田さん、ありがとうございました。
新日鉄住金エンジニアリング株式会社 会社概要
新日鉄住金エンジニアリング㈱は「その情熱で、先端へ」をモットーに、一歩先行く技術とアイディアで社会の発展に貢献しています。環境に優しい解決策を武器に、グローバルに事業を展開しています。