医療用漢方製剤の市場において85%近いシェアを持つ株式会社ツムラで、MRとして活躍されている西川邦子さん。漢方のMRならではのやりがいや入社のきっかけについて伺いました。入社2年目(!)に育休を取得されたご経験を持つ西川さんは、ご家族と仕事のバランスをどのように取られているのでしょうか?(2016年11月時点の情報です)
ドクターからの信頼が高い、漢方のMR
現在のMRの仕事内容について教えてください。
医師に対して漢方薬の情報をお伝えする仕事です。
診療においてお困りの症状について伺い、対応する効果をもつ漢方薬の情報をご提案します。病院に訪問する営業活動だけではなく、医師を対象とした漢方セミナーを企画し、広く情報をお伝えしています。
全国すべての医学部で、漢方医学教育が必須科目になったのは2004年からです。
そのため、漢方について詳しく知りたいと言ってくださる医師が多いと感じています。医師への面会や勉強会を重ね、漢方の様々な情報を提供しています。
それをきっかけに漢方薬に興味を持ちはじめて、治療に取り入れてくださる医師もいらっしゃるんですよ。
具体的な症状に対して、漢方薬のご提案をすることもあるのですね。
はい。昨日も、訪問先の病院内を歩いていたときに、医師からお声掛けいただき、症状に合った漢方薬の情報をご提案しました。
高齢でかゆみがひどい患者さんがいらっしゃるということで、とある漢方薬をご紹介しました。漢方薬の特徴のひとつに、同じような症状でも、その人の体質や病気の進行度などによって効果の得られる薬の種類が異なるという点があります。
このように奥の深い漢方医学、漢方薬について理解を深めていただき、実際の治療に役立てていただくために、地道に病院へ足を運ぶことを大切にしています。
漢方MRならではのやりがいは何でしょうか?
医師への情報提供を通じて、患者さんの治療の力に繋がることが一番のやりがいです。
薬の安全性に関わる情報のほか、漢方独自の考えに基づいて様々な漢方薬を治療で使い分けていただく際のポイントなどをお伝えします。
それにより、医師の診療の幅を広げていただくことにも繋がると考えています。特に漢方は医師の方々にとって、馴染みが少ない分野です。
そのためツムラのMRは医師から質問を受けることが多く、医師や患者さんの役に立っているという感覚をより強く持つことができるのではないかと思います。
漢方薬に関わりたい!強い想いを伝えて入社しました
そもそも、なぜ漢方の会社に就職したのですか?
大学では、はちみつの抗菌作用など食品内の薬効成分の研究をしていたので、健康食品会社の研究職を目指していました。
ただ、天気の良い日に突然、研究室にこもりっぱなしの仕事は違うかもしれない、と思いまして(笑)。
そこから方向転換をして、就職活動をはじめました。合同説明会で製薬コーナーにふらっと立ち寄ったときに、ツムラのブースを見つけたことがきっかけです。
人事の方のプレゼンを聞いて、食品そのものではないけれど、植物の薬効成分からなる漢方薬には大きな可能性があるのではないか、とひらめいたんです。
一目惚れのような感覚だったのですね。
はい。ただ、2次面接で落ちてしまい、他の会社に行こうと考えていました。でも、諦めきれず、秋採用の募集を見つけたときに「もう一度応募してもばれないよね!?」と思ってエントリーシートの内容を変えて送ってみたんです。
面接で人事の方に「お久しぶりですね」と言われたので、ばれていたんですけど(笑)。ただそこで、なぜもう一度受けようと思ったのかをお話して、ツムラの一員として働けることになりました。
※現在は、この様なケースの採用は行っておりません。
どのような新入社員時代でしたか?
初めの半年間は、セミナーハウスでみっちり研修を受けました。
ツムラの医療用漢方製剤129種類の名前と、適応する効能効果や症状を覚え、特に注力する漢方薬についてはさらに深く勉強しました。
辛いときもありましたが、学生寮のような感じで同期と励まし合って楽しかったですよ。これだけ充実した研修を受けさせていただけるのは、今思うと本当にありがたいですね。
10月からは千葉第一営業所に配属されて、前任者から医師や医療機関の担当を引き継ぎました。
1人での営業活動は心細くありませんでしたか?
非常に心細かったです。勇気を出して訪問するものの、医師に「今日は何しに来たの?」と聞かれても答えられなくて。
そんな私に対して医師は「宿題を出してあげるから調べてきて」と言ってくださり、次に回答を持って訪問したこともありました。さまざまな経験のなかでも、医師の方々に育てていただいたことは私の成長の根源でもあります。
ただ、入社2年目で出産したので、MRとして働きはじめて8か月足らずで産休に入ってしまったんです。
MRとして初の育休取得!家族に何かあれば仕事は辞めよう、そう思ったら気が楽に
2年目で出産されたんですか!同期の方と比べて早かったのではないですか?
早いですよね。10年前の当時、ツムラでMR職が産休・育休を取るのは初めてだったんです。
計画していたわけではないですが、いつか子どもが欲しいという思いはあったので、営業所の方々にたくさんフォローをしていただいて1年間育休を取りました。
復帰してからの3か月間は本当に大変でしたね。新人ではないので当然トレーナーは付きませんし、周りと同じ数字が求められました。MRとして新人程度の経験しかなかったのでので、仕事も上手くいかず、家庭も上手くいかずパニックになっていました。
どうやって乗り越えたのですか?
あるとき、「できる限り頑張ってもそれが自分の限界なら、できないことは素直に認めて、また違うことをやればいい」と思ったんです。
お母さんとして笑顔で心身共に健康なことが一番重要で、それができないのであれば仕事は諦めようと思ったら、急に楽になりました。
仕事はやりがいがありますし、成果が出たり褒められたりすると、まだまだできると頑張ってしまうのですが、子どもたちが一番大切だということを忘れずに働いています。
お子さんが2人いらっしゃいますが、仕事と子育ての両立のコツは何ですか?
ともかく感謝の気持ちを忘れないことです。社内の上司、同僚、得意先(病院)の先生、医療スタッフ、家族等、多くの人の力を借りて現在があるということを忘れないことですね。
また、1人目のときはありませんでしたが、2人目の復帰時は時短制度も活用しました。その後は、自宅と営業所が近く、両親にも何かあったときには頼れる環境だったので、現在はフルタイムで働いています。
2年前からは担当エリアも1.5倍に増えたので、より一層、効率化や優先順位の付け方など時間の使い方を工夫するようになりました。
例えば、夜遅くにしか会えないドクターに対しては、残念ですがお手紙だけにさせていただき、先生からお願いがあれば面会に行くという方法に変えました。
午前中に営業活動をした後、営業所に戻ってしまうと次のクリニックに行くまでに往復1時間かかることもあるので、営業所に戻らず駐車場でパソコンを開いて仕事をすることもありますよ(笑)。MRは自分次第で時間の調整もできるのが良いですね。
最後にハナジョブ読者に向けたメッセージをお願いします。
やってみたいと思ったら、やってみることです。やってみてから続けるかどうかは決めれば良いと思いますよ。
そして、良い意味で適当でいること。一生懸命やったけれど、どうしてもできなかったときには、「しょうがない。よし、次がある」と思って、違うことや違うやり方に挑戦してみればいいんです。
特に女性は真面目で、仕事もきっちりとやり、家のことも掃除から食事の準備までしっかりやらなくちゃ、と自分のことを追い込んでしまいがちですよね。
そういうときには、「全部できなくてもいいや。これだけはやろう」と少しずつ決めてやってみる。そういったイメージで行動してみると、仕事もプライベートもより充実して、上手くいくと思いますよ。
取材を終えて
採用試験の再度エントリーや、入社3年目での育休復帰など様々な挑戦をされてきた西川さんのお話をうかがって、「何事もやってみれば、なんとかなるのだろうな」と気持ちが楽になるインタビューでした。
また、将来のお話をする時にご家族でやりたいことを一番はじめに話されていたことが印象的でした。働く目的や大切にしたいことは人それぞれ。そんなことを再確認させていただきました。西川さん、ありがとうございました!
株式会社ツムラは、主に医療用漢方製剤(医師の処方により用いられる漢方薬)を製造販売しています。「自然と健康を科学する」という経営理念のもと、医療用漢方製剤のトップメーカーとして漢方製剤の安定供給を通じて人々の健康や医療に貢献できるよう取り組んでいます。
「ツムラ」ホームページはこちら→https://www.tsumura.co.jp/