ポスト・イット®ノートで有名なスリーエム ジャパン株式会社。実は3Mは世界で5万5千種類もの製品を産み出し続けている総合化学メーカーなのです。今回は、全製品のあらゆる分析を行う部署のマネジャーとしてグローバルにご活躍されている浅井真紀さんにお話を伺いました。(2016年10月時点の情報です。)
「化学のことならなんでもできる!」憧れの会社に入社
現在のお仕事について教えてください。
社内のあらゆる製品の成分や品質について分析する、コーポレートリサーチアナリティカルラボラトリーという部署でマネジャーとして働いています。
3Mには、研磨材などを作る「インダストリアル」、「エレクトロニクス&エネルギー」、内装材などの「セーフティ&グラフィックス」、ポスト・イット®ノートなどの「コンシューマー」、医療用テープなどの「ヘルスケア」という5つの事業部門があります。
アナリティカルラボは全事業部門と関わりがあるため、社内の製品はすべて把握していますね。
全商品に携わっていらっしゃるんですね!ラボでは、どのような分析をするのですか?
例えば、分析機器を用いて構造や組成を確認し、思い通りの化合物ができているか判断します。
原材料選定から製作過程、最終製品まですべての分析を引き受けています。すぐ終わるものから2週間以上かかるものまで、年間で1500件程の分析依頼が社内中から届きます。
事業部で開発をしている者は、細かな分析手法までは専門ではありませんので私たちの力が重要です。新製品開発のプロジェクトが成功するように、分析の専門家として原材料選定等のアドバイスをすることも、アナリティカルラボの役割のひとつです。
1500件ですか!すごい数ですね。そもそも、なぜスリーエム ジャパンに入社したのですか?
学生時代は、分析化学研究室で新規の化合物の合成と分析をしていたため、化学会社への就職を希望していました。
そんなときに偶然、スリーエム ジャパン(当時の住友スリーエム)のポスターが就職課に貼ってあったのです。3Mは海外では知らない人はいないほど有名な総合化学メーカーなので、「ここならなんでもできる!」と思って応募することにしました。
憧れの会社だったので、内定をいただけてとても嬉しかったことを覚えています。
これまでどのような仕事を経験されてきたのですか?
入社後は、家庭向けの衛生材料の事業部の開発等を行う技術部に配属されました。
粘着剤の開発を担当しており、実際に販売されている商品をみたときには感動しましたね。事業部付の技術部にはこのような楽しさがあるのですが、大学院まで研究したことを活用して働きたいと思い、3年目に社内公募制度を使ってアナリティカルラボに異動しました。
そこから15年近くアナリティカルラボにいます。当社では管理職になる直前のタイミングで、マネジャーになるか研究職を続けるか選ぶことができます。私は以前からマネジメントをしてみたかったので、迷わずマネジャーとしてのキャリアを選びました。
日本のアナリティカルラボを、世界レベルに成長させたい
なぜマネジメントをしてみたかったのですか?
分析の仕事は個人プレーになりがちなので、もう少し部門としてまとまった強いチームにしたいという思いがありました。
それにより、幅広い事業部門に対して新しい分析手法の開発や、製品の開発に入りこんだアドバイスを戦略的に行いたいと思っていたからです。
マネジャーとしては、どのような仕事に力を入れていますか?
1つは、日本の分析部門をアピールして、グローバルな連携をとることです。
大きな分析センターのある米国・ドイツ・中国とコラボレーションプロジェクトを行っています。同じ方向を向いて活動していきたいので、電話会議や発表を頻繁に行ってお互いの戦略や意見交換を密にしています。
もう1つは、新しい分析手法の開発や新しい分析機器の導入です。分析機器は非常に高いため、導入の際には米国本社の承認が必要になります。新製品の開発状況やトレンドを先読みしながら、機器が必要である理由を説明して予算を勝ち取っていくことも大事な仕事です。
海外の方とのやりとりが多いのですね。
はい。事業部付の技術部にいた頃から英語でレビューがありました。
今のラボに来てからは海外との会議や交渉も多く、頻繁に英語を使うようになりました。英語は得意ではないので、苦労しましたね。
でも、仕事内容が同じであれば同じ単語を使うので、正確に聞き取れなくても言いたいことはわかります。向こうも文法が多少間違っていても、理解してくれますしね。
これから挑戦したいことは何ですか?
日本のアナリティカルラボをもっと活性化させて、米国本社のラボと対等になれるくらいの能力を持ちたいです。
そのためには、部門全体のモチベーションを上げることが大切だと思っています。日本人はすぐに「わかった」と言いますが、部門のメンバーとは本当にわかっているか徹底的に話し合って、理解を得て行動してもらえるように頑張っています。
今はとにかく部門の成長で頭がいっぱいですね!
ラボを通して、社内のネットワークを構築!
仕事をするときに心がけていることは何ですか?
人と接する機会が多いので、一人ひとりの強みや取り組んでいることを把握するように心がけています。また、様々な情報にアンテナを張っています。
一番大きな分析センターを持つ米国本社と同じ方向で進めることが重要なので、米国のラボからの情報には常に注目していますね。社内中の製品の動向や世の中のトレンドにも敏感でいられるようにしています。
全事業部、全製品と接点のある仕事だから、関わる人も相当多いですよね。
そうですね。アナリティカルラボは社内のすべての部署から依頼があるので、知り合いがどんどん増えていきます。
当社には、将来のビジネスに役立つことであれば労働時間の15%を自分の興味のあるプロジェクトに使ってよい、という「15%カルチャー」があります。
やってみたいテーマを持っている人が研究・営業・マーケティングなど様々な人を巻き込んでプロジェクトとして行うので、横のつながりが大切なんです。
何か相談したいことがある人やプロジェクトを立ち上げたい人には、ラボを通して得た人脈から「あの人に聞くと良いよ」と紹介することもあります。私自身もこれまでも数え切れないほどのプロジェクトに、分析の立場で参加しています。
15%カルチャーで生まれたプロジェクトから製品化することもあるんですか。
社内でコンペもあって、製品化の可能性があるものには資金を獲得する機会があるんです。開発を進めて売れる見込みが立てば、製品化されることもありますよ。
自分の強みを生かして働いてほしい
社内中から引っ張りだこの浅井さんですが、お子さんが2人いらっしゃると伺いました。どのように仕事と子育てを両立していますか?
管理職になる直前までは、短縮勤務制度も活用しましたが、今は子どもも大きくなったのでフルタイムで無理なく働けています。
子どもは6歳差なのですが、上の子が下の子の学童のお迎えなど面倒を見てくれるんです。「会議が終わらない!」とメールすると「もうお風呂もご飯も終わってるよ」と返事がくるほどで、とても助かっています。
当社はダイバーシティの考えが浸透しているのか、男女の差を意識することはあまりないですね。子どもがいて大変だからと、楽な仕事を振り分けられることもないですし、男性も子どもの迎えにいくために早く帰る人がたくさんいますよ。
3Mには、きちんと頑張る人を応援する文化や仕組みがあるように感じています。
浅井さんにとって、仕事とは何ですか?
私と家族の人生を支えて、充実させてくれるものです。
仕事は、日常の起きている時間の大部分を占めるものですからね。今はやってみたいことを一生懸命仕事でやれていて、とても楽しいです。
同じような職業につきたい学生に、メッセージをお願いします!
一口で理系といっても、化学や機械、電気やコンピューターといろいろな分野がありますよね。
ぜひ、勉強したものを活かせる仕事に就くと良いと思います。私はこれまで、自分の経験が繋がるような選択をしてきて良かったと思っています。流行りに流されるのではなく、自分の強みを持って就職してほしいです。
5年後、10年後の計画を立てても、その通りにはならないことが多いんですよ。学生時代を楽しんだ人の方が、会社に入ってからも仕事を楽しんでいます。
だから、学生である「今」を楽しんでほしいと思います。
取材を終えて
浅井さんの「部門をもっともっと成長させたい」という思いが素敵で、仕事が楽しくてたまらないんだろうな!と感じるインタビューでした。私もこれから様々な経験を通して自分の強みをみつけ、それを活かせる仕事にチャレンジしていきたいと思います!
浅井さん、お忙しいなかインタビューにご協力くださり、ありがとうございました!
3M(本社:米国ミネソタ州)は、Science(サイエンス)を活かし毎日の暮らしをより豊かにすることを目指しています。世界中のお客様の課題解決にむけて、創造的なソリューションを提供しています。スリーエム ジャパン株式会社は日本発の製品を全世界に提供しています。