入社1年目のときに社内公募で開発職に立候補、現在はカフェインレスの商品開発を担当している梨本陽子さん。マーケティングに興味を持ち、就職活動をする中で出会ったUCC上島珈琲でまずは営業職として入社しました。自分のやりたいことに気付けた自己分析の仕方、開発職の面白さ、子育てとの両立についてお聞きしました。(2016年5月時点の情報です)
母になって知る、新たなニーズと時間のやりくり
今はどういったお仕事をしているのでしょうか?
カフェインレスのコーヒーや紅茶を開発しています。商品開発だけでなく「こういうカフェインレスの商品を作りたい」という企画から実際どうやって売っていくか、というところまでの流れを考えています。
4月から新しい組織の形に変わって、女性だけのチームのリーダーになります。カフェインレスは妊娠や育児をしている女性を中心に人気なので、UCCとしてもそういった女性向けの商品に力を入れはじめています。
「カフェインレス」に目をつけるところも、ママ視点だからこそかと思います!
そうですね。育休中は今まで縁のなかったベビー用品売り場やイベントに行ったり、同じ育児をしている人と話したりする機会が多かったです。新しい経験をすることによって、世界が広がったしママ目線でいろんなものを見られるようになったと思いますね。
あとは、「育児をする女性は時間がない」ということも身を持って体験したので、手軽にできるものがいいという感覚もよくわかりました。
UCCでは育児と両立している女性も多くいらっしゃいますか?
まだまだ少ない環境で、今は同じような境遇で先を走っている先輩が多くはいません。でも、仕事と子育てをうまく両立できるようになりたいと思っています。
それに、将来仕事と育児を両立したい人が、「こういう風な働き方もできるんだな」って思えるような存在に少しでもなれたらいいなと思っています。
育児と仕事を両立する上で楽しさや大変さはありますか?
1歳になると成長が目まぐるしくて、少ししか話せなかったのが急に話せるようになったり、ヨチヨチ歩きだったのが早く歩けるようになったり。そういう成長が日々見られることが楽しいですね。
逆に苦労は、時間に追われることです。昼間は保育園に預けていても、帰宅したら家事や育児を集中してやらないといけないですし、時短勤務内に仕事も終わらせないといけないので、自由な時間がほとんどないことが大変ですね。
時間がない中でどのような工夫をしているのでしょうか?
どうしても時間がないときは、やらなくても大丈夫なことはやらないとか、家事の中でも頼れるところは家電に頼るなどして、優先順位をつけています。
仕事面に関しては、急に休まないといけなくなった際には、周りの人にサポートしてもらってやっています。夫とも2人で協力し合っていて、保育園に送るのは夫、迎えには私が行っていますね。
生み出すことが難しいからこそ、完成の喜びを感じられる開発職
開発の仕事の楽しさや大変さなどはどんなところにありますか?
企画段階では形がなかったものが、開発が進む中で中身が決まったり、パッケージが決まったり、最終的に形としてできあがったときに「この仕事は楽しい!」と感じます。
そして、商品として完成形になったものが実際に棚に並んで、スーパーなどに行ったときに、偶然それを買ってくれている姿を見ると嬉しいですね。
一方で、何かをしようとするとハードルが出てきます。例えば、製造上難しいとか、営業上は難しいとか、そういったときは苦労しますが、うまく乗り越えられて商品化までたどり着くと、苦労した分、より一層の達成感があります。
商品開発で印象に残っているエピソードはありますか?
大きいサイズのチルドカップコーヒーを開発したときですね。カフェではトールサイズで飲む人が多いので、ショートサイズではなく大きいサイズもあったらよいのではないかと、コンビニのバイヤーさんと企画したんです。
でも、事前にユーザーインタビューをしてもあまりよい評価がもらえなくて。ところが、発売したら安定的に売れて今では定番サイズになったんです。でも、成功例はほんの一部で、バイヤーや小売店の評価が高くても売れないこともありますね。
売れるものを開発するのは大変なんですね。企画はどれくらい考えるのでしょうか?
飲料の場合は、春と秋に大きく商品を出すタイミングがあります。コンビニだと毎週新発売の商品が出ていると思いますが、スーパーでは3月と9月くらいに棚替えがあります。だから、春と秋が大きなタイミングになるんです。
このゴールに向けて、まずは部署内で各自10個程度の企画を持ち寄って、企画を絞り込んでいきます。その中からいくつかの企画を具体的に進めて、社内を通して決まるという流れです。今はちょうど秋に向けての新作を考えている段階ですね。
季節を先取りしているんですね! どうやって流行るものを探していますか?
お客様に調査したり、トレンドやこれから何が流行るかなっていろんなところから探しています。
コールドブリューというNYで話題の水出しコーヒーがトレンドとしてきていますよね。ほかにも、カフェやコーヒーショップで流行っているものが売れることもあります。情報を収集するために、新しくできたお店や、話題のお店に行ったりしています。
あとは、スーパーに行ったら飲料やレギュラーコーヒーが置いてある棚はチェックしていますね。
営業職時代のお話も聞いてみたいです!
営業の相手は喫茶店のマスターやレストランのシェフだったので、今まで接したことのない人と関わっていくことになりました。
お店が比較的空いている時間に裏口から入って少し時間をもらい、「こういう商品があります」と提案をしたり、商談をしたりしていました。既に取引をしているお客様が多いですが、飛び込み営業もありましたね。
営業の一番のやりがいは、うまく人間関係ができていくことだったと思います。最初はUCCさんと呼ばれていたのが自分の名前で呼ばれるようになったりして、そういうときは嬉しかったですね。
営業というと大変そうなイメージですが、梨本さんはどう思っていましたか?
就活中はあまり営業をやりたくないと思っていました。開発をやりたくてOB訪問をしていたんですけど、ちょうどそのときに話したOBが、営業をやっている人だったんですよ。
そのときに「なんで営業やりたくないの?」「なんで開発したいの?」と聞かれました。そして「開発に行ったからといって、すぐに何ができるってわけでもないよ。営業で売り場に行って、実際にどれが売れているのか知って、世に出した後を育てていく姿を知らないのに開発はできないよ」と言われてから、確かに営業経験も必要なんだなと思いました。
実際に1年間営業を経験してみて「あのときの言葉は本当だったな」と実感しています。営業経験が開発にも活きていますね。
梨本さんは商学部のご出身ですが、文系でも商品開発に関われるんですね。
研究部門では理系の人が必要ですが、マーケティングはどういう売り方をするかを考える部署なので、どちらかといえば文系の方が多いですよ。
自分と向き合うことが未来を決める大切な作業
OB訪問のお話しもありましたが、梨本さんはどんな軸で就活を進めていきましたか?
ヒット商品を作った人のドキュメンタリーが好きで、マーケティングやものづくりに興味がありました。
それで、将来何をやりたいか考えたときに、「開発をしたい」という思いが出てきたんです。その中でも、自分の身近なものである飲料や化粧品に興味がありましたね。就活では、そういった商品を取り扱っている企業の説明会に参加したり、OBやOGに話を聞きに行ったりしました。
自己分析は難しいですが、どのようにしましたか?
就活を始めた頃は自己分析をしないで面接を受けていました。でも、面接を受けるうちにそれでは通らないことがわかって、実際に自分と向き合うようにしました。自分ってなんだろうとか、自分は何がしたいんだろうと深く考えるようにしたんです。それがうまくまとまってきてからは、就活もうまくいくようになりましたね。
自分がやりたいことがわかっていると、予想外の質問もアドリブで返すことができるんです。頭の中で考えるだけでは具体的にならないので、人に負けないことや学生時代打ち込んだことなど、聞かれそうなことは書いてまとめました。実際に面接を受けてみて「これは違ったな」と思ったら書き換えたりもしましたね。
学生時代に見つけた強みは、こうしたいと思ったら最後までやり遂げる力やチャレンジ精神で、それは今でも仕事に活きていると思います。
では、最後にハナジョブ読者にメッセージをお願いします。
学生時代は一番自由な時間があるので、やりようによっては何でもできると思います。なので、まずその時間を楽しんでほしいですね。
その中で部活でもバイトでもなんでもいいので、ひとつ何か熱中できることを持ってほしいなと思います。就職活動においては、まず自分と向き合って、自分がやりたいことや自分はどういう人なのかを明確にすることが大切ですね。
就活は会社に入ることが目的ではないので、向き合うことでその後の仕事に活かされると思います。OBやOG、両親、友達などいろんな人に頼りながら、自分と向き合ってみてください。
インタビューを終えて
梨本さんの商品開発への思いをひとつずつ教えてもらうことで、ゼロの状態から商品を作り上げることはとても大変な作業ではあるけれど、その分達成感とやりがいのある仕事であることが伝わってきました。
そして、育児をしているからこそ見えるニーズの話を聞き、働くお母さんの新たな役割が見えた気がします。梨本さん目線からどんな新しい商品が出てくるのか楽しみになるようなインタビューでした。
企業紹介
レギュラーコーヒー国内最大手のUCCグループの企業。生産国の直営農園で苗木を育てることから、原料調達、輸入、研究開発・品質保証、製造、製品・販売、さらには文化の創出に至るまで、世界唯一の『カップから農園まで』一貫したコーヒー事業を展開。