新卒で食品商社に入社。5年間食品業界の現場で学んできたことを活かし、現在はぐるなび総研でシニアリーダーとして働く、三村麻里香さん。食という大きなテーマの中で無限の可能性がある仕事内容や、仕事と育児の両立の楽しみ方などをインタビューしました。(2016年3月時点の情報です。)
男社会、食の生産地、初めてだらけの世界を経験して決めた仕事
ぐるなびに入社したきっかけは何でしたか?
食べることが大好きな家庭で育ったこともあって「食」にずっと興味があり、食に関われる食品商社に新卒で入社しました。
商社といえど、中国に出向いて野菜を買い付けたり加工場で製造ラインに立ちあったりと、かなり泥臭い仕事が多かったです。
ハードな現場を5年経験したので、次は別の切り口で食に関わっていきたいと思うようになりました。ぐるなびに転職したのは、「食×IT」というところに魅力を感じたからです。
以前働いていた食品商社とぐるなびでは違いがありますか?
中学から大学まで女子校で、きょうだいは姉が1人という環境で、完全に女社会の中で育ちました。
新卒で入社した会社はそれと真逆な男社会だったので、感性の違いを感じることがよくありました。例えば、海外の事例等を出して食のトレンドの話をしてもなかなか聞き入れてもらえず、自分の意見が通らないことも多かったです。
でも、ぐるなびに入って初めてのミーティングで話してみると、とっても反応が良いんですよ。テンポよく言いたいことが伝わって、みんながわかってくれる!という感覚がありました。
また、夏休みや年末など長い休みには懸賞があって、誰でも企画を提案できます。テーマも世の中の流れに合わせたものが用意されます。こういう企画があることで、新人でも自分の意見を発信するチャンスを与えられているし、世の中の動きに合わせて進化している会社だと感じます。
世の中の流れに合わせてぐるなびも進化しているんですね。
ぐるなびは企業として常に進化することをモットーとしており、働いている社員も常に進化していると思います。
ITの会社でもあるので、世の中の動きに合わせて新しいシステムをどんどん取り入れていますね。食の問題にも目を向けています。例えば野生の鳥や獣が日本の農作物を食べてしまったり畑を荒らしてしまったりすることで、年間約200億円の被害が出ていると言われています。
現在国を挙げてその被害を減少させるために、ただ猪や鹿を駆除するのではなく、それらをうまく資源として利活用しようという動きが生まれています。
我々としては害獣駆除という観点ではなく、野山を駆け回っている天然の猪や鹿を使用した料理を、価値ある食文化として発信していけないかと考えています。
この問題は、最近よく耳にするジビエ料理にも関わってくるんですよね。こうやって常に食の課題にも向き合い、社会のお役に立てることを模索しています。食をテーマにして、可能性が無限大に広がっているところもぐるなびの魅力です。
「自分がいなくても回る」職場の仕組みづくりが育児と両立するコツ
今、三村さんはどのようなお仕事をしているのですか?
ぐるなびのシンクタンクに兼務出向という形で、ほとんどシンクタンクの仕事をしています。
そこでは、ぐるなびのビッグデータを活用した食に関する調査を行い、その結果を発信していくことが主な仕事になっていますね。
具体的に言うと、2014年から「今年の一皿」を1年に1度決めています。流行語大賞だったり、今年の漢字だったり、1年の世相を表すものはたくさんあるのに、食に関してこういったものがないよね、という話からこのプロジェクトが始まりました。
そして、2015年の「今年の一皿」は「おにぎらず」になりました。ぐるなびのビッグデータと、ユーザーアンケート、さらに40社のメディア関係者の審査で決定しました。
日本人の「米ばなれ」が問題視される中、斬新なアイディアで米の可能性を広げ、日本人に欠かせない食材であることを再認識するきっかけを作ったことが決定要因の1つでした。
このようにして、社会や食の動きに目を向け、それらを世の中に発信することで皆様に少しでも関心を持っていただき、日本の食文化を守ることに寄与できればと考えています。
魅力的な仕事がたくさんあってやりがいがあると思いますが、家庭との両立はどのようにしていますか?
1人目の子供を出産して復帰したときは、大きな企業間のアライアンスに関わるプロジェクトを立ち上げるタイミングだったため、帰りが遅くなることもありました。
子供も小さくてかわいい時期だったのですが、大きなチャンスをもらえて、とてもやりがいを感じていました。そのときは、実家の母に頼んで子供の送迎や食事、お風呂、寝かしつけまでしてもらっていました。
2人目を出産してからは仕事のサイクルも安定していて、今は5時きっかりに帰っています。平日は家事と育児を全部私がやりくりしていますが、その分土日は夫が3度の食事の支度や家事などすべてやってくれるので、うまく役割分担をしていますね。
どんなところに仕事と育児を両立する楽しさはありますか?
切り替えができるところですね。産後はメンタルが落ちてしまっていたのですが、職場に復帰してからは仕事と子育ての切り替えができるようになりました。
バランスが取れたことによって、子供との時間がより濃いものになったと感じています。家に帰って子供を抱き締めて、ゆっくり向き合う時間を作って、携帯もあまり見ないようにしています。なので、働くことによって子供と一緒に過ごす時間を大切にすることができています。
また、1人目が女の子、2人目が男の子なんですが、子育てする中で男女で考え方や行動に大きな違いがあることを知りました。これにより会社にいる男性と働く際に、柔軟に対応できるようになったので、役立ったと思っています。
あとは、私がテレビに出演した際に子供がすごく喜んでいるのを見て、私が一生懸命働く姿を見せることは、多少なりとも子供にいい影響を与えられているのかなと思います。常にお母さんは頑張っているんだという姿は子供に見せていきたいし、働いている間は見せられるかなと思っています。
両立するために他にもなにか工夫していることはありますか?
1人目の産休に入ったときに気づいたのですが、会社って自分がいなくっても回るものなんですよね。
あんなに自分じゃなきゃできないと思って必死に仕事をしていたのに、産休に入った途端に会社からなんの電話もかかってきませんでした(笑)。だから、いつ自分が抜けていいような体制を作っておくことも大切だと考えました。
例えば、フォルダを整理しておいて、電話越しに指示しただけでファイルを開けるような状態にしておくこと。自分が抜けたとしても、このプロジェクトは他の部署と連携して進めることができるだろうと考えておくことなど。
情報共有をマメにしたり、マニュアル化をある程度しておくと応用も効くし、何かあったときに慌てなくてもすむ。私のチームは全員子供のいる母親で、時間が限られている人たちなので、常に情報を共有し、無駄なものを省き、やるべきことを徹底的に磨き上げるようにしています。メンバーのパフォーマンスはかなり高いと思いますね。
好きなことを仕事にする、それが夢の実現につながる種まき
三村さんはリーダシップがあって、組織作りが上手に見えます!学生時代の経験は今に活きていますか?
高校生の頃、1年生からギター部の部長をやっていました。
入部した頃は、部員が5人しかいなくて少し暗い雰囲気の部活でした。まさに廃部寸前といったところでした。でも、明るい部活にしようと決めて、どうやったら人についてきてもらえるか、部活の魅力を伝えられるか考えました。
そして、私が卒業するときには部員が20人になっていました。こういった経験は組織作りや、女性と働くことが好きである基礎になっているのかもしれません。また、主体的に動くようになったのは、大学時代に1年間中国へ留学したことがきっかけになったと思います。
中国へ留学されていたんですね。どうして中国だったんですか?
もともと中国史が好きで、大学では史学科に進学しました。
実際に中国に行ってみたくて、大学1年生のときにツアー旅行で北京に行ったんです。ツアーで一緒だった方の友人に北京で暮らす日本人女性がいて、ツアー最終日の夜に彼女の案内で街を歩いてみることになりました。
さすが現地に住んでいるだけあって中国語がペラペラで、街にいる現地の人とも楽しそうに話すんですよ。語気が強くて、旅行客に土産を強引に買わせるような中国の方々のイメージががらっと変わって、現地の言葉で話せるってすごいなと思いました。
この経験を通して、私の見ていた中国はほんの一部であり、もっと違う顔が中国にはあって奥深いことがよくわかったんです。
この旅行をきっかけに中国語の教科書を引っ張り出して、1から勉強しなおしました。実家の近くの中国食材店でオーナーに相手をしていただき会話の練習をし、その後、更に勉強するために北京へ留学しました。
では、就活する際は食だけでなく、中国に関わる企業も考えていたのでしょうか?
そうですね、「食」か「中国」かどちらかに関連する企業に入社できればいいなと思っていました。中国に進出している化粧品会社や総合商社も受けましたが、うまくいかずに落ち込むこともたくさんありましたね。
今思えば、新卒で入った会社で一生働ければ幸せですけど、入った会社の中で働くことによって、好きなものは見えてくるのだと思います。
だから、あんなに深刻になって考えなくてもよかったのかなと。新卒で入社した会社で、自分の長期的なゴールに結びつくものを少しでも見つけることができれば、そこから可能性はどんどん広がっていきます。
私も新卒で入社した会社では、寒い倉庫の中で輸入されてきた野菜を検品して詰め替えるといった作業もしました。作業中に「なんで私は、こんなことしてるんだろう。ハイヒールを履いて丸の内を歩いているはずだったのに!」なんて思って悲しくなることもありました。
でも、全部が全部つながっているんですよね。新卒で5年間、「食」の泥臭い現場を経験したからこそ、今この仕事をできている。だから、自分のやりたいことに少しでも関係している仕事に就ければ、そこから色々な形に広がると思います。
過去の経験があって今の仕事があるんですね。今後はどのようなキャリアを積みたいと思っていますか?
食と携わっていくという夢は実現できているので、もう1つの夢である、中国はじめ海外と関われる仕事がしたいと思っています。
でも、海外に関わる仕事に飛び込んだとしたら、現地にも行きたいし、語学ももっと勉強したい。今以上に仕事に時間とパワーを割きたくなってしまうと思います。今、小さい子供が2人いる状況ですぐできることではないけれど、必ず挑戦しようと思います。
ぐるなびは、役職に関係なくプロジェクトを立ち上げることができるので、焦って上の役職にあがらなきゃと考えることはあまりありません。与えられた環境の中で、まずは着実に成果を出し実績を積み重ねていくこと。キャリアや役職はあとからついてくると考えています。
最後にハナジョブ読者へメッセージをお願いします。
学生時代は難しく考えないで、好きなことをどんどんやればいいと思います。
その中から本当に好きなものが自分の中で育っていって、磨きがかかっていきます。道に迷っても、最初に考えた好きな気持ちやその要素で軌道修正できるし、夢に向かっていけると思いますね。
自分の夢を実現していくということは、仕事の楽しさの1つでもあると思うし、柔軟に楽しさを見つけながら色々なことにチャレンジしてほしいです。
インタビューを終えて
ぐるなびは検索サイトというイメージが強かったため、今回のインタビューによって大きくイメージが変わりました。
食に関することなら何だってチャレンジできる環境のお話はすごくワクワクするものであり、働きながら育児を楽しんでいる三村さんの姿を見て、私も同じようにどちらも楽しめる女性になりたいと思いました。
なりたいと思えただけでなく、両立するためにはどのように仕事や育児に取り組むべきか具体的に学ぶこともできました。中でも、「自分がいつ抜けても大丈夫な組織作り」は今後自分が生きていく中で実践していきたいです。
女性として働いて、育児をして、たくさん未来につながるエネルギーをもらえるようなインタビューでした。