地元の東京を離れること、理系出身の技術職が多い会社で文系出身の営業職として働くこと、仕事と育児を両立させること。たくさんの選択肢があった中で、自分の大切にしていきたい軸は何なのか、常に考えて過ごしてきた片野さん。様々な決断をしてきたきっかけや理由についてお話を聞かせていただきました。(2016年2月時点の情報です。)
海外と関わり、技術職の人と一緒に働ける仕事をしたい!
理系出身の方が多く働いる会社ですが片野さんは大学で何を専攻していたのですか?
大学は国際政治学を学べる学部に入学し、中国の政治や政策について学んでいました。
国際政治学を選んだ理由は、世界史がとにかく好きで、将来はその知識を生かして海外と繋がる仕事がしたいと思っていたからです。
大学受験では、国際関係の学部のある大学を多く受験しました。私が選んだ学部にはとてもエネルギッシュな女性が多いことを入学してから知りました。
大学の友人は、バリバリ働いている人が多いですね。
中国に興味があったのですね。留学などはされましたか?
留学はしていません。
20歳のときに、内閣府の振興事業に応募して、1ヶ月間、中国のさまざまな都市を訪れるチャンスに恵まれました。
その経験から、すごく中国のことが好きになったんです。その頃から中国と日本の架け橋になれるような仕事ができたらいいな、という思いが芽生えました。
では、就活の際は中国に関われる仕事に絞っていたのでしょうか?
中国だけに限定することはありませんでした。
もう少し広い視野を持って、海外関わる機会の多い仕事、そして技術系の人と一緒に働ける環境にある仕事という二つの軸を決めていました。
技術系の人と積極的に関わっていきたかったのですね!それはどうしてですか?
父が技術職だったのですが、技術系の人って自分と違うな、と思うことがたくさんあったことがきっかけです。
一緒に生活をしていても、物事の見方が違うんですよね。たとえば、なにか問題が起きたときに感情的になることがないんです。
実家では父は常に冷静で、何が起こっているのかをまず見つけて解決策を探して、といった具合でした。
大学で出会った理系の友人たちは、周りの環境に惑わされずに就活と研究を両立させていたり、あと二年間、大学院で研究してから就活を始めようと考えていたり、冷静に自分のやりたいことを考え、明確化している人が多かったと思います。
そういった理系として培った考え方や姿勢を生かして活躍している技術系の人と仕事でも関わりたいと思っていました。
技術職と理系知識が求められることが多い会社でポジティブに働ける文系出身の私
二つの軸に合った今の会社で、実際に技術系の人と仕事をしてみてどうですか?
仕事となると自分も真剣だし、相手のことにも真剣になるんですよね。
時間の捉え方や物事に対する考え方が、営業職と技術職では違いがあるなと感じます。
たとえば、お客様が求める納期と製品の品質を守るために必要な納期を両立させるために、営業職の私たちが様々な解決策を探り、調整することもあります。
これが難しくて悩むところなのですが、こういう調整があって会社の事業は成り立っていると思います。学ぶところが多くて私自身、楽しんでいますね!
海外と日本の架け橋になりたいという思いもありましたが、技術職とお客様をつなぐ架け橋にもなりたいです。
営業職はイメージで大変と思いがちですが、片野さんのお話ではとてもやりがいのある職種に見えます。具体的にはどんなお仕事をしているのですか?
私の会社では、火力発電に使う様々な機器を開発、製造して、電力会社などのお客様に納入しています。
受注生産の場合が多く、例えば、何メガワットのガスタービンが欲しいと言われたら、それに見合ったものを用意して契約成立という形になります。
納入後にも、1年間ごとにメンテナンスをするのですが、私はそのメンテナンスを契約する部門にいます。お客様の要望を聞きながら、どのような内容のメンテナンスをどのようなスケジュールで実施するのか提案し、契約を結んだ上で、実行していく仕事をしています。
専門的な技術の多い製品知識を覚えるのに苦労はしましたか?
製品知識を覚えるのには、たしかに苦労しました!
入社前にもインターネットなどで製品についての情報を調べていましたが、本格的に学んだのは入社してからです。
まず会社の研修があり、基礎知識を学びました。そのあとすぐに、プレゼンを任せられるわけではなく、上司のプレゼンを何度も見て学んで知識を十分に蓄えてから、ようやく自分でプレゼンをできるようになりました。
もともと「せっかく働くんだから、その会社に入らないと関われないような製品を学べるほうが楽しいだろうな」と思ってインフラ関係に興味を持ったので、大変でしたが楽しかったです。
不確定な未来を条件にしないで、自主自立を目指した就活
片野さんは、地元を離れて働くことを選んでいますがそこは就活のときに悩みませんでしたか?
一度実家を離れてみないといけないなと思っていたのですが、最初は地元を出る勇気がなくて希望をしていませんでした。
人事が適性を考えた上で決めてくれるんだから、決まったところへ行こうと少し覚悟をして待っていましたね。
その結果、配属先が遠方だったので家を出る決心がつきました。知らない土地で周りに友人もいない状況でしたが、一人のときに何をしたら楽しいとか、そういう学びにもなったのでよかったと思いますね。
では、働く際に女性として「結婚したら、出産したら」ということに関して考えたりしましたか?
入社したときは、結婚や出産に関しては考える余裕がありませんでした。
それよりも、自分で自分を養っていかなくてはならないと思う部分が強くて出産どころか結婚についてすら考えていませんでした。
そもそも、結婚や出産には不確定要素が多いのではないでしょうか。就職することよりも、自分の好きな人と結婚するほうがよっぽど難しいと思います。
だったら、まずは自分のことだけを考えて就職した方がいいかなって。それに「この企業は育休産休制度が整っていたので」と就活の面接の際にアピールしても、プラスにはならないですよね。
一方で、制度がきちんと整っていることは大切だと思います。実際に出産を経験して、そういう制度がないと働けない部分もあるのでありがたいなというのは実感しています。
時間を守ること、それが家族みんなで毎日のサイクルをまわすお約束
今年の4月から仕事と育児の両立が始まったそうですが、半年以上経ってどうですか?
仕事一本でやっていたときより忙しいですけど、大変というよりどっちもやりたいことなのでやるしかないな、と思っています。
育児だけでも、やらなくてはいけないことがいっぱいあるので忙しいし、どっちのほうが楽なんて比較できないと思います。
私はたまたま育児も仕事もやりたいからやるという選択をしたのですが、いざ両方やってみたらやれたという感じです。
夫の実家が北海道、私の実家は東京なのですぐに助けてくれる人はいないのですが、だからこそ「二人でやるしかない!」と協力し合っています。
一日の流れを教えていただいてもいいですか?
6時に起きて、みんなで朝ごはんを食べます。7時に家を出て保育園に子どもを預け、そのまま会社に向かい、8時に着いて仕事を始めます。4時から4時半の間に退社して、5時半に保育園へお迎えに行き、帰宅するのは6時頃ですね。そして、夜ごはんを食べてから8時にお風呂に入り、子供を寝かしつけます。夫の帰りを待っている間に次の日の夕飯を作って、帰ってきたらご飯を出し、そして寝るといったスケジュールです。
私は夕飯を何にしようか考えてしまうタイプなので、前もって前日に次の日の夕飯を作っておくと仕事に集中できるんです。水曜日だけ在宅勤務にしているので、通勤時間をカットすることができますし、お昼休みに家事もできます。これだけで他の日とは全然ちがうんですよ。
時間を有効活用しているんですね!仕事復帰した結果、お子さんに変化などありましたか?
最初は保育園へ入れることに不安もあったのですが、いざ保育園に入った子どもを見ていると社会性も身に着いているし、どんどん成長しているのがわかるんです。
そんな子どもから学んだことは、時間をしっかり守るということですね。大人以上に子どもはしっかり時間を守るんですよ。6時になったら起きて、お迎えに来る時間も体で感じていて、規則正しくおなかが空いて、夜になったら眠くなるんです。
その姿を見ると、こっちも時間をきっちり守らなくてはと思うし、みんなで1日を回している感覚になります。そうやって金曜日まで頑張り、みんな頑張りましたねって気持ちで迎える土曜日に私は幸せを感じていますね。
時短の中で探したい、私のキャリアと両立のバランス
仕事と育児を上手に両立しつつも悩むことってありますか?
これからどんな風にキャリアを積んでいったらいいか悩んでいます。
出産前のように興味があるなと思ったらすぐに本を手にとって勉強する時間がなかなかないですね。
いずれキャリアアップして上流工程の仕事にも関わりたいと思いますが、上流の仕事に慣れるには時間もかかるし、みんなで協力し合って作り上げていくものなので、時短で働くとしたら何ができるのかなって思います。
あとは、子供が中学生になってフルタイムに復帰したときに、何がしたいのか、どうなりたいのか、そこを明確にしてブランクを埋めたいです。たとえば、経営に関わりたいとか、プロジェクトを管理したいとか、そういう目標を探してやっていかないといけないと考えています。
長い目で仕事について考えているんですね。
子どもが生まれると無理なことは無理なんです。
そうやって線引きする理由は、長く働き過ぎてしまうと子どもが風邪をひいて悪循環になってしまう。その結果、家庭がうまく回らないと負の連鎖というか、仕事も育児も上手くいかないなって思うんです。
だからある程度時間を限定すること、時短を選ぶことは私の中で守らなくてはいけない条件だなって考えています。時短の中でどうするのか見つけないといけないということが、実際に両立してみてわかったことですね。
時間を守ることを大切にしていることがよくわかります。そうすることで見つかったことなどありますか?
時短で働いてみることによって、時間内に仕事をきちんと終えるよう、より強く意識するようになりました。
仕事仕事といったふうに時間を使うのではなく、バランスが大事なんだと学びました。ですから、この生活をぜひ男性にもしてもらいたいなって思っていますね。
姉の住んでいるアメリカに遊びに行ったとき、働く男性が早く帰って来て家族と過ごす時間が多いことを知って驚きました。
当たり前のようにそうやって過ごしているのを見て、日本はどうしてそんな風に変わっていかないのだろうと疑問に思ってしまいました。
これからの時代、長時間働かないとある程度の地位に就けないという形では上手くいかないと思いますね。
私も時間を区切っていろんなことを進められる人になりたいです!最後に、ハナジョブ読者へメッセージをお願いしてもいいですか?
私の条件に合ったから選んだ、という軸があるとぶれないと思います。
たとえば、憧れの人を追っかけて会社に入社したとしても、いつその人が辞めてしまうかわからないですよね。
それに、企業だってどんなふうに変化していくかわからないので、そういったときにも自分の軸さえあれば崩れることなく前に進んでいけると思います。
結婚や出産を制約として考えつつ就活を進めるものもったいないし、男性、女性と区切ることなく仕事ってできると思うので、まずは純粋に自分がなにをしたいのか、そういうことに向き合ってみてもらいたいです。
インタビューを終えて
片野さんのお話は、文系の私には難しいと思っていた技術の強い会社への興味の一歩につながるものでした。
「その会社に入らないと関われないような製品の勉強をしたい」「技術職の人と関わっていきたい」というポジティブな考え方によって、仕事を楽しんでいることが伝わってきました。
また、結婚や出産について頭の片隅に置きながら今後の未来を想像してしまっていた私には、わからない未来のことを考える前に純粋に自分のやりたいことを探してみるという言葉がすごく印象的であり、自分の中で何を大切にしていきたいか考えるきっかけになるインタビューでした。
企業紹介
2014年2月1日に三菱重工業株式会社と株式会社日立製作所が両社の火力発電システム事業を統合し設立。
火力発電プラントの主要機器の開発、設計、製造、建設、試運転からサービスまで、すべての工程を自社技術で行うことが可能。高度な技術が求められる火力発電プラント建設において、プラント全体を取り纏めるEPC(Engineering、Procurement、Construction)事業を積極的に展開し、世界各地で環境にやさしく、安定した電力の供給に貢献。
国内5カ所の主要製造拠点のほか、国内外に50社以上のグループ会社を擁しグローバルネットワークを構築。連結従業員数は20,520人(2016年1月現在)。