人が生活を送るうえで一番身近なものである住宅。住まう人により近づいた仕事がしたいという想いから一級建築士試験にチャレンジ。学生時代には向いていないと思っていた設計の仕事が、今はとても楽しいとおっしゃる渡邉さんにお話を伺いました。(2011年5月時点の情報です)
スキルを広げ、納得できる仕事をと考える、渡邉さんのワークスタイルとは?
現在のお仕事の内容を教えてください。
住宅の設計を担当しています。営業担当と共にお客様にプラン提案し、契約後はメイン担当として、間取りや設備などの詳細を決めるためにお客さまと打ち合わせを重ねます。お客様とは着工するまで概ね3~4カ月の間、毎週のように打ち合わせを繰り返すことも多いです。プランニングからご入居までをご案内するのでとても思い入れの強い仕事です。当社の家は、一邸一邸が自由設計ですから達成感がありますね。
現在の仕事に就くまで、どのようなお仕事をされてきたのでしょうか?
新卒で入社したのは不動産会社でした。新築の分譲マンションの企画・販売計画の立案がメインの業務でしたが、モデルルームでお客様と直接お話をしたりすることもありました。とにかく「業務の一部だけでなく全工程に携わりたい!」という想いが当時、すごく強かったんです。ただ、働いていくうちに「このまま分譲マンションの仕事をずっと続けていくのだろうか?」という疑問も感じ、もう少しお客様との距離が近い仕事がしたいとも思っていたんです。その後結婚を機に会社を辞め、約半年ほど専業主婦として過ごしていたのですが、やっぱり「このままでいいのだろうか?」と思い、派遣スタッフとして住宅業界で仕事をしながら、取りたかった一級建築士の試験にも挑戦。おかげさまで合格することができました。その時、派遣でお世話になっていた住友林業で、中途採用試験を受け今に至ります。
建築学科を出ていらっしゃいますが、そもそもなぜ建築に興味を持ったのですか?
高校時代が理系クラスだったので、大学も理系に進むつもりでした。理系で興味を持てそうな分野は何かと考えたときに、情報システムか建築かで迷ったんです。家族の意見で「パソコンを使う仕事だったらどの会社でもできるのでは?」と言われ、より豊富な知識の得られる仕事は何かと探し、それが建築だったんです。そしてもう一つの理由は、自宅の建替え時、大工さんが家をつくり上げていく工程を見るのがすごく楽しかったんですよね。家は身近なものだからこそ興味もありましたし、それで建築学科へ進むことにしました。
それでは、渡邉さんはどんな学生時代を過ごされていましたか?
とにかくのんびりしていましたね(笑)。今より時間に余裕があったなぁって思います。バイトはいろいろ挑戦してみました。塾講師であったり、マクドナルドであったり、設計事務所であったり。設計事務所でバイトをし始めたときは就活を控えていたので、バイトというよりは職業体験的なイメージで働いていました。学生時代って何でも吸収できたので、もっとたくさんの業種を体験してみたかったですね。一つのことだけでなく、何ができるか選択肢を広げることで、自分自身の可能性を広げたいと思っていました。
「仕事とは刺激の宝庫」と語る渡邉さんの仕事観とは?
仕事のやりがいと、苦労を教えてください。
お客様のご要望を聞き出し、いかにそのお客様に合ったプランを提案できるかがこの仕事の面白みです。その後着工・完工し、完成した家を引き渡した時のお客様の笑顔は最高です。やりがいを感じる瞬間です。
逆に苦労したのは、想像もつかないような問題が起こって、お客様のご要望が反映できないとき。例えば敷地の事情で電信柱をどこに建てるかで問題になったときは戸惑いました。東京都市部であったら電気をひく場所で困ることはないのではないかと思っていましたから。上司や周囲の助けもあり、乗り越えることができましたが、幅広い知識を求められるだけにやりがいがあるけれど、大変な仕事だなぁと思いますね。
仕事をするうえで心掛けていることは何ですか?
心掛けていることは3つ。1つ目はとにかくお客様の声に耳を傾けること。何よりもお客様との会話が大事な仕事ですので、常にお客様とのコミュニケーションを密接にはかることを心掛けています。2つ目は周りの方への感謝の気持ち。家族のほかに社内でも多くの人にサポートをしてもらっているので本当に感謝しています。3つ目は優先順位をつけることです。「今日はいいや」ではなく、できることは「今」やるように心がけています。子供の保育園へのお迎えが毎日あるので、残業はできないからこそ優先順位をつけることの大切さを実感しています。
渡邉さんにとって仕事とは何ですか?
刺激の宝庫ですね。お客様の生活に深く関わる仕事だからこそ、育児の先輩であるお客様から育児に関するお話も教えていただくことがあったりして、お互いに刺激を受け合うことができます。また、自分で子育てすることによって今まで気にならなかったことも目に止まるようになりました。例えばベビーカーだと、少しの段差でも気になるんですよね。こんなに押しにくいんだ!と。上司からも子供が生まれると考え方や設計が変わると言われていましたが、ここまでだとは思いませんでした。
お子さんもいらっしゃる渡邉さんは、仕事と家庭はどのように両立しているのですか?
自分の理想的な両立っていうのは、実はどういうものかわからないんですよね。同僚から「両立できていてすごいですね」と言われることもありますが、実際自分では両立できているのかわからなくて無我夢中の日々です(笑)。けれどひとつ言えるとしたら、「できることは自分でしよう」と心がけています。仕事を終えたら急いで駅まで向かい、子供の保育園までダッシュで向かうこともあります。仕事も家庭も時間がある限りはめいっぱいするようにしています。
渡邉さんの将来の夢はなんですか?
笑顔を絶やさない人になること。また、自分の周りを変えられる人になれたらいいですね。今の仕事は本当に楽しいので、これからも設計の仕事を続けていきたいと思っています。限界を決めてしまうと成長できないので、常に120%の自分を目指していきたいです。もし自分が働けなくなってしまっても、ここまでできたから良かったなって、そう思える日々を送っていきたいですね。
住宅業界や設計士を目指す学生へメッセージをお願いします。
設計・建築学科の学生であれば、ぜひ一級建築士の資格を取ってほしいですね。建築士の試験勉強は受験勉強以上に大変で大きな山ではありますが、それを乗り越えたからこそわかることがあると思います。大きな壁でも乗り越えられるんだという自信にもつながります。住宅業界は、設計・建築学科以外の学生でも様々な場面で家づくりに関わることができる仕事なので、ぜひこの仕事を目指してほしいですね。たくさんの知識が必要にはなりますが、その分やりがいや充実感は相当なものだと思います。
それでは最後に人生の先輩としてメッセージをお願いします!
女性であれば一度は出産・子育てを経験してほしいですね。自分を取り巻く環境が変われば自分自身も変わっていくんですよね。学生の間は時間も体力もあると思うので、いろんなことにチャレンジをしてほしいです!
インタビューを終えて( ハナジョブ学生記者)
渡邉さんは常に自分の理想像に近づくように自問自答を繰り返し、努力をし続けている素敵な女性でした。「今の仕事が楽しい!」とおっしゃっていた姿が印象的でした。渡邉さん、お忙しい中ご協力ありがとうございました!