理系学部で研究に打ち込んだ学生時代。卒業後は商社の財務部、食料総括部を経て、現在の営業職へ。一見接点のない仕事経歴ですが、そこには仕事を社会貢献のためのツールであるとおっしゃる宮治さんの仕事や人生に対する思いがありました!(2010年10月時点の情報です)
自分の選んでこなかった道を、運命的に決めてみたい!そんな思いから積んだ宮治さんのキャリアとは?
現在のお仕事内容を教えてください。
飲料の原料を海外から買い付け、国内のメーカーさんに売る仕事をしています。私の所属する第三課はアルコールや乳製品を扱っていて、私はその中でもアルコールを担当しています。ビールの主原料であるモルトやホップ、あとはバーボンやスピリッツなどの原酒を扱っています。
今までの仕事経歴を教えてください。
学生時代は自分の興味のあることばかりやっていたので、逆に自分の選んでこなかった世界を見てみたいという気持ちがありました。だから研究職ではなく、営業を希望していたんです。でも、初めの研修で、まったく知識のなかったビジネスの裏側にあるお金の流れや決算という仕事について知ってから、営業を支える分野に興味が沸き、配属面談では財務か経理にいきたいという話をしました。そして、希望どおり、財務部に配属されました。
その二年半後、食料総括部に異動しました。ここでは食料部門の各部の状況全般を見ることができたので、そのポジションを活かして、「自分に合っている部署はどこかな」とキャリアプランの具体的なイメージ作りができたのは有難いことでしたね(笑)。管理部門を経たおかげで、会社内の色々な立場が理解できるようになりました。その経験は、営業としてとても役に立っています。食料総括部での約三年間を経て、今は飲料原料第三課でかねてから希望していた営業職をしています。
大学院では研究をしていたのに、なぜ商社に入社されたのでしょうか?特に飲料原料第三課を希望したのはなぜですか?
もともと商社を希望していたのは、社会との接点を目に見える形で持っていたいと思ったからなんです。飲料原料第三課を希望したのは、アルコールが個人的に好きだからです(笑)。商品に興味があったということと、業界のカラーが私に合っていると思ったことも、希望した理由ですね。
学生時代はどのように過ごしていましたか?
学生時代は勉強と趣味を両立することを大切にしていました。理系だったので実習などが多く学校にはきちんと行かなくてはいけなかったんです。自分でこれだけは曲げないようにしようと思ったのは、趣味の馬術を続けるということです。でも、本気で取り組みたいと思う趣味を親のお金で、というのが嫌だったので、レストランの厨房や早朝にパン屋さんで働いて、馬術を続けました。確かに、馬術はだいぶお金がかかる趣味ですが、親にも「学校にもちゃんと行きつつ自分で稼いだお金なんだから文句ないでしょ」っていうことで、気兼ねなく、やりたいだけやらせていただきました(笑)。
とても充実した学生時代を送っていたようですが、その経験からどうして今の職業を選ばれたのですか?
そもそも環境を守りたいという想いから生命科学部に進学したのですが、一生研究を続けていくことにも迷いがあったので、自分の学んできたことに縛られずに働きたいと思っていました。なじみがあるからその業界が好きなのか、それとも自分が本当にやりたいことなのかを、就職活動をしながら考えましたね。
その結果、やはり自分は研究職ではなく埋もれている技術を世の中に送り出す側に回りたいと思ったんですね。特にそれがどの分野なのかは問わないと思っていたので、仕事は運命に導かれて決めたい!とも思っていました。だから、色々なことをやっているところで働きたいと思って商社を目指したんです。
頼むときは頼まれる側に立って。仕事は社会への恩返しのツールと語る宮治さんの仕事観とは?
今の仕事のやりがいと苦労を教えてください。
自分が扱った原料が商品として目に見えた形となった時は本当にやりがいを感じますね。農家を直接訪問すると、その商品の原料を作っている人とお会いできます。すると、一つの商品に関わっている人全員の顔を見ることができるんです。こんな人たちが関わっているんだ、と知る事ができるのも楽しさですね。
苦労する点は、海外の農家やサプライヤーと交渉することが多いので、言葉の問題はもちろん、“仕事”に対する考え方時間感覚の違いですね。海外の人は、「自分たちの仕事はこれ」と自分たちの役割に対する意識ハッキリしていて、やるべき事に対してはプロフェッショナルですが、日本人特有の“よしなに”といったグレーな関係が通じません。また、仕事はあくまで人生の一部といった感覚が日本人より強いので、休む時は休む、時間が来たらサクッと店じまい、ということもしばしばです。働き過ぎの日本人には大切な感覚かも知れませんが。
今の仕事をする上で心がけていることは何ですか?
人にお願いするときに「なぜそれが必要なのか」を伝えることです。頼まれる側の気持ちになって頼むように心がけるだけで、伝わり方が違うと思うんですね。例えば、「この期日までに仕事をしてほしい」ということも、「この日にこの過程に達する必要があるから」と理由を加えるだけで、受ける側の協力しようという気持ちも変わってくるはず。きちんと伝えなければ、こちらの不必要な時間設定に付き合わされているだけと思われてしまうかもしれないし、「色々な要求に振り回されている」という感覚を持たせてしまうことで関係がギクシャクしてしまうかもしれません。だから、一方的なやりとりにならないように気をつけています。
宮治さんにとって仕事とは何ですか。
社会との接点であり貢献ですね。自分の今まで受けてきたものを世の中に返すツールです。
寿退社は考えましたか?
私は全く考えませんでした。ただこれから子供ができた時など、家庭との両立を考える上で、自分のやりたいことばかり優先して、誰かを悲しませたり無理を聞いてもらったりということになるのなら、果たしてそれが「両立できている状態」といえるのかと思うんですね。今していることを何が何でも続けたいとは思っていません。あまり固執すると、自分も無理をすることにもなると思いますし。
例えば、営業を続けたいのであっても、子供ができたときには少しお休みして、両立できるようになったら復帰するという風にしたり。状況に応じて仕事のやり方を変えていくのもいいんじゃないかと思っています。だからこの先、両立をする上で担当業務の変更や部署の異動も柔軟に考えて行きたいし、上司ともよく相談してきたいと思っています。世の中を知らない自分が入社して、周りの先輩や家族に支えられてここまで育ってきているので、周りの人たちは自分にとって一番大事なんです。だから、“働く”ということを柔軟に考えていきたいです。
ストレス解消法はありますか。
できるだけ毎週、馬に会いに行くようにしています。あと、休日は完全オフにしてゆっくり休むこと。休みの間は仕事のことはあまり考えないようにしていますね。
これからの目標はありますか。
ビールという飲み物のおもしろさを日本中に広めたいです。海外ではビールの味もワインのようにこだわって選ぶほど奥深いものなのに、日本人って「とりあえずビール」っていう文化がありますよね?ビールにも様々な味があるということを、メーカーさんと一緒に伝えていきたいということが一つ。
また、女性にとってはビールは乾杯の飲みの物といった感覚で、どちらかというとサワーとかカクテルの方が親しみがあると思います。また、ウィスキーなども、今でこそハイボールで女性に人気ですが、もとはおじさまの飲み物というイメージがあったもの。焼酎ブームやワンカップの立ち飲みバーなど、ちょっとイメージを変えるだけで、もっと色々な層に受け入れられる飲み物になるんです。だから、自分の担当する商品達が、もっと日本中に広まっていけばいいなと思います。
学生へのメッセージ
学生の間はいい意味でも悪い意味でも自分の好きなことだけできる時間だと思います。でもそれは、ダラダラと時間が過ぎてしまう可能性もあるということ。学生時代の貴重時間は、なんとなく、ではなく目的をもって何事にも取り組んで過ごして頂ければと思います。
インタビューを終えて( ハナジョブ学生記者)
自分の選ばなかった道を選んでみたい!そうやって新しいことに挑戦しながらも、原点は全て周りの人や社会への恩返しであるという宮治さんの素敵な人柄が取材をしながら、よく伝わってきました。宮治さん、ありがとうございました!