12月の日曜日に、横浜市栄区で音楽と絵本のイベントが開催されました。集まったのは、小さなこどもからおばあちゃん・おじいちゃんまで全部で50人ちかく。ピアノの音にあわせて読まれる絵本や、美しい影絵のお話。その場にいるだけで、温かく懐かしい気持ちになりました。今回は、このイベントを主催している「おと工房ぽりま」の松浦りつ子さんに、イベントを始めた経緯や楽しさについてお話を伺いました。(2015年2月時点の情報です)
初めてのイベントは、大使館の後援つき!?
松浦さんが初めてイベントを開催したのは2008年のことでした。きっかけとなったのは、広報紙でたまたま見かけたイベント企画の勉強会です。スケジュールの立て方や広報の仕方などを学ぶ連続講座で、最終回には架空のイベントを考えました。
ここで松浦さんは以前から興味のあったハンガリーの幻燈会を提案しました。幻燈とは、35mmのポジフィルムの絵とお話を焼き付けた紙芝居のようなもので、静止画を映写機の光で投影するものです。
「架空のイベントでしたが、ぜひ実現させたいという気持ちになり、フイルムの持ち主の関西の東欧ショップに交渉しました。また、勉強会で学んだとおりに、情報集めるためにハンガリー大使館にも行ってしまったんです。突然にもかかわらず、大使館の方が親切に対応してくださり、後日、正式に後援依頼をお願いしたところ快く承諾してくださいました」。
イベントは東京・神奈川の三か所で開催しました。そして、会場の1つであった山手の洋館の館長さんから「第一回山手芸術祭」に参加しないか、と誘われて、翌年にも上映会を開催することとなります。
「音楽」を使ったイベントをスタート
偶然は重なるものです。山手芸術祭での上映会を終えて、外で宅配業者を待っていたときのこと。
寒くないですか?と館長さんが声をかけてくれたそうです。普段の仕事の話などをしているうちに、夏休みに開催する「絵本の部屋」で何かやってほしいと依頼されました。その夏から3年間、音楽と絵本を組み合わせたイベントを実施しました。これが後の「ミュージックドロップ」です。
もともと、長いこと企業の音楽講師をしている松浦さん。「乳幼児を対象にしたグループレッスンでは、音楽を通したなんとも言えない親子のふれあいを感じるんですよね。それを地域でもやってみたい、という思いから「ミュージックドロップ」を始めました」。
「イベントでは、季節感と手作り感を大切にしています。絵本はもちろん、音楽も季節を感じられるようなものに工夫しているんです」。
イベントの後半には、ちょっとした小物をつくるワークショップも行われます。
「遠くに行けないお母さんたちに、珍しいもの・懐かしいものを提供したいと思ってワークショップを毎回取り入れています。みなさんイキイキと楽しんでくださっています」。
影絵紙芝居の感動を多くの人に伝えたい
そして、子供たちからも大人からも大人気なのが、お部屋を暗くして楽しむ「影絵による紙芝居」。
上映する影絵は、浜崎ゆう子さんという方の作品です。NHKドラマ「火の魚」の劇中に上演された影絵を観た時、言葉で表現できないくらい感動し、思い切って作者の方に連絡をしてみたのがきっかけなんだそう。
お話をしたところ、貴重な影絵作品を貸していただけることになりました。現在では、地元の障がい者施設、福島の仮設住宅などでも上映を行い、多くの人をあたたかい気持ちにしてきました。
「影絵の順番になると子どもたちが前にちょこんと座って待っているんです。そういう姿を見ると嬉しいですね。影絵を最初に見たときの感動が忘れられなくて、自分の可能な限り、多くの人に紹介したいと思っています。この影絵と出会ってからは、大きなことをしなくてもいいのかな、と思うようになりました」。
今春で音楽講師としてはひとくぎり。「これからは地元を中心に、音楽や絵本を通した「居場所づくり」が出来たらいいなあと思っています」。
インタビューを終えて(学生記者:大石真子)
松浦さんはとても謙虚な方なのですが、少し話を聞いてみるととても行動的で探求心の強さがうかがえるエピソードがどんどん出てくるので、面白い!と思って取材をお願いしました。
また、インターネットよりも、歩いてみつける情報収集の方が好きだとおっしゃっていたのが印象的でした。「ワクワクドキドキ」といった好奇心には年齢は関係ないといいます。
私も自分の気持ちに素直になって、偶然を楽しむのも良いのかもしれない、と感じました。松浦さん、ありがとうございました!