女性が活躍している会社って、どんな会社だと思いますか?
育児休業が取りやすくて復帰しやすい会社?子どもが病気になったときにすぐに帰れる会社?男女でお給料や待遇に差がない会社?女性管理職が多い会社?
もはや企業は、女性だけでなく、年齢、性別、国籍といった「多様性=ダイバーシティ」を経営に活かそうと動き出しています。「リーディングカンパニー」では、そんな企業の取り組みを紹介していきます!
新卒採用で女性が4割。会社の本気が社員を動かす
2014年度、経済産業省の「ダイバーシティ経営企業100選」に選出された、日立ソリューションズ。
社員の9割がSEという、技術者中心の会社です。全体の女性比率は2割弱程度ですが、2014年度は新卒採用の女性比率がなんと4割を超えています。
男性中心の職場から多様性を活かした職場へ変化しつつある、日立ソリューションズ人事部の内山紀子さんにお話を伺いました。
ワーキングマザーは当たり前ではないけれど、珍しくはなくなった
IT企業は女性比率が低い傾向がありますが、日立ソリューションズでは女性が増えていると聞きました。いつ頃から、どんなきっかけで増えたのでしょうか?
2015年度入社の新卒採用での女性比率は、43.7%でした。ここ数年は3割以上となっています(取材スタッフ一同、女性比率の高さに驚く)。
女性が増えて、華やかになってきましたね。でも、最初は意識して女性の採用を増やしていたわけではないんです。
意識していなかったのに、女性が増えたのはなぜですか?
きっかけは1998年前後のITバブルです。
若手の採用をぐっと増やしました。それまではSEといえば理系男性でしたが、この時期に、男女文系理系問わずSEを採用したら、結果的に女性が増えたのです。
なるほど、そういう背景があったのですね。女性が増えたことで、社内にどんな変化がありましたか?
採用した女性たちが優秀だったので、ITバブルが過ぎても女性の採用を減らそうということにはなりませんでした。
2004年の後半には、女性の採用を増やすというはっきりとした意志がありましたね。
2007年には女性活躍推進の取り組みが始まり、2009年にダイバーシティ推進センターが設立されました。
女性が仕事を続けられるように制度や支援体制を整えてきたので、現在では出産で辞める人はほとんどいません。
職場には出産して復帰している人が周囲にいるので、相談もしやすくなりましたね。ワーキングマザーは当たり前ではないけれど、珍しくはなくなりました。
育休取得した男性から新しいビジネスが生まれた
ダイバーシティ経営100選に選ばれた理由はどこにあるのでしょうか?
女性社員比率が高くなり、リーダーシップを発揮する女性が増えてきていることが一つ。
もう一つはビジネス面で、ダイバーシティを活かすことで新しい事業が生まれ、業務プロセスが変わり始めたことですね。
新しい事業が生まれているんですね。具体的な事例があれば教えてください。
育休を3週間しか取得できなかった男性社員がいて「でも、本当はもっと長く取りたかったんだよ」と周囲に話していたんですね。
そうしたら部下の男性が「僕のときはがんばって取得します」と育休を3か月取得したんです。
上司も部下も子育てに関わることで、「これまではサービスを作ることがゴールでしたが、ビジネスを育てるという視点を持てるようになった」と話していました。
そういった背景があって、野球チームやサッカーチームのファンを育てる、当社の新しいサービス・ソリューションが誕生しました。
仕事一辺倒だったときには気づかなかった視点が活かされた、新しいビジネスですね。
こういった事例が生まれて、社員に変化はありましたか?
これまでは育休を取得したくてもその後に響くかなあと、自分で抑制してしまっていた男性もいたと思います。
でも、こういった事例が生まれたことで、男性が育休を取得することがポジティブに捉えられるようになりましたね。
小さくても意思決定ができる機会を増やす
女性の管理職比率について明確な目標を立てていらっしゃいますが、成果はありましたか?
管理職比率は現在3.4%です。
まだまだ少ないですが、母数から考えればだいぶ増えました。主任や係長クラスの女性比率も上がりましたね。
女性の採用が増えた時期に入社した人たちが30代になって、管理職の年齢に近づいてきました。これからますます増えてくると思います。
辞めずに続けられるのはどうしてでしょうか。
本人の努力とワークシェアリング、またいざというときは頼れるチームメンバーが何とかしてくれるという安心感があるんだと思います。柔軟に働ける制度が整っていることもありますね。
女性が増えたことによって、上司の意識が変化しましたね。例えば、育児休業を取得する部下がいたらどう対応するかを、普段から考えるようになっています。
介護や育児などいろいろな事情の社員が増え、上司の経験値も上がっていますね。
現在の課題と今後の目標を教えてください。
一つ目は、女性リーダーの育成ですね。
今まで辞めてきた人が会社に残るようになって、女性が活躍する土台はできました。
でも、まだ意思決定層が少ないんです。意思決定層が多様にならないと会社は変わらないので、権限を持って活躍する女性を増やしたいと思っています。
いきなりリーダーになれと言われても難しいですから、少し背伸びが必要な仕事をしてもらって、小さくても意思決定ができる機会を増やしています。
二つ目は、管理職の意識啓発です。
活躍する女性は増えても、管理職は子育て中の女性に「配慮」してしまうんです。「ここはやっておくから早く帰ってね」と。言われる方にとってみれば「余計なお世話」ですよね。
協力し合う文化は大事ですが、全員が短時間でも利益を出せるようにするためには、大きく現場のマネージメントを変える必要がありますね。
女性の採用についてはいかがでしょうか?
女性の採用の拡大も目標の一つでしたが、既にこれはクリアできました。
昨年、一昨年の採用活動では4割を目標にしていましたが、昨年は44%ですからね。会社の本気を職場でも感じているはずですよ。
営業は、女性の6割が20代。
子育てしながら仕事を継続できるように、今からビジネスモデルや業務プロセスを変える必要があります。穴が空いたところを埋めるというやり方では、業務が成り立ちません。
まずは変える必要性の高い現場から、変えていきます。マネージャーも必死です。
最後に、女子学生へのメッセージをお願いします。
SEというと、1日中パソコンと向き合っているとか、暗いとか、人とのコミュニケーションが苦手とか、そんなマイナスのイメージを持っている女子学生が多いのではないでしょうか。
でも、そんな人ばっかり集まっている会社だったら、お客様相手にビジネスはできません。ましてや女性を4割も採用できませんよね。
SEといっても、いろいろな仕事があります。まずは選択肢を狭めずに、挑戦してもらいたいなあと思います。皆さんが想像している以上にわくわくする仕事が待っています。
(2015年7月時点の情報です)
日立ソリューションズ
日立ソリューションズは、