娘たちに「これはママが作ったんだよ」と言えるような仕事をしていきたいという山田さん。マーケティングのやりがいや大切にしている想いを伺いました。(2011年1月時点の情報です)
「自分が関わったカメラでお客様が良い写真を残してくれることが喜び」~そんな山田さんの仕事とワークスタイルは?
現在のお仕事内容を教えてください。
デジタルカメラの「COOLPIX」という商品の企画をしています。COOLPIXブランドの中にも様々な商品が展開されていますが、私はブランド全体の商品戦略を取りまとめる役割です。商品企画は、ユーザーの求めるもの、市場動向、技術トレンド等を把握・分析した上で、商品を形にしていくのが主な仕事です。
当社は海外展開もしています。私は国内・海外ともに担当しています。色やデザインの好み、価格などは国によって違うんですね。だから、各国にあるニコンの販売会社の担当とやりとりをしながら詳細を決定していきます。必要があれば調査のために現地へ出張することもあります。
これまではどのような仕事を経験されてきましたか?
入社直後はカメラ部門で営業をしていました。営業と言っても、商品を直接小売店に売るのではなく、アメリカにある販売子会社に対する貿易交渉が仕事でした。アメリカとカナダに対するフィルムカメラの営業を、2年半担当しました。その後、予算部門で各地域の売り上げのとりまとめを経験し、2000年からは現在のコンシューマー向けデジタルカメラの商品企画をしています。
入社当時は商品企画ではなく、自分の会社で作られたものを世の中に伝えていく仕事がしたくて広報を志望していましたが、最初に配属されたのは営業部門でした。でも、今考えてみると営業や予算の管理、商品が作られていく仕組みを知った事は、現在の商品企画の仕事に生きていると思います。
入社を決めたきっかけを教えてください。
大学時代は国際私法のゼミとスキーサークルでの活動が中心でした。普段は図書館にこもり、冬は山にこもるという生活でした。
メーカーへの就職を希望するきっかけになったのは父です。父がメーカー勤務で、身近に感じていたのだと思います。さらに調べて行くうちに、メーカーの仕事は自分が携わったものが世に出ることで、人を楽しませることができると思うようになりました。
特にカメラメーカーを希望していたわけでも、学生時代から写真が趣味であったわけでもありません(笑)。メーカー全般をまわっていました。その中でも当社は、女性社員の数が多いわけではないけれど、男女が対等に仕事をしている印象を受けたんです。それが入社のきっかけになりました。
仕事のやりがいや苦労を教えてください。
自分が関わった商品が世の中に出て、実際に使ってくださっている方を見ると、嬉しいですね。そのカメラでお客様が良い写真を残してくれているといいなと思います。また、以前は個別の商品を担当していたこともありますが、そのときはその商品を使ってくれている人がいると格別にうれしかったです。
一方、今苦労しているのは時間管理です。まだ子どもが幼いので時短制度も利用させてもらっているんですが、仕事に割ける時間には限りがあります。その中でやりたいと思っていた仕事ができないときにはもどかしさを感じることもあります。
「譲れないこと・大切なことは信念を持って曲げない」-山田さんの仕事観とは?
仕事で心がけていることを教えてください。
自己中心的にならないことです。商品企画の仕事は、社内のあらゆる人と議論し、期日までに商品を市場に送り出せるようメンバーと活動していくことが大切です。だからこそ、周りの意見を聞いて、協力しながら一緒にやっていくという意識を持つようにしています。しかし、その商品にとって譲れないことや大切だと思うことは、信念を持って曲げないことも必要だと思っています。
今まで手掛けた仕事の中で印象的なものはありますか?
コンパクトカメラが普及し始め、価格も安くなってきた8年ほど前、初心者向けの使いやすいモデルを生み出す企画に参加する機会がありました。
私はカメラにはそれほど詳しくありませんから、まさに私のような人をターゲットにしたカメラだと思い、初心者の目線・女性の目線で発言していました。商品化を判断する際、カメラについてとても詳しい方から否定的な意見が出たんですが、何か違うと感じたんです。
そこで、勇気を出して「この商品はカメラに詳しい人ではなく、私のような初心者のためのカメラです!」と発言したんです。結局その意見が通り、商品化され、予想の2倍ほどの台数が売れました。この経験が、実は「自分で大切だと思う事は曲げない」と考えるようになったきっかけです。
(実はこの山田さんが意見を言った相手、ニコンの現会長だそうです。会長はこの時の事を他のインタビューの場でも「若い女性で発言してくれる人がいてとても頼もしいと思った」とおっしゃっていたと広報の方からうかがいました。)
山田さんにとって仕事とは何ですか?
社会の一員であることの証であり、自分自身を磨くものです。商品を世に出すことで社会のために働いていると感じることができます。
また、育児と会社にいる時間の中で、育児の時間は子どものために、会社での時間は自分を磨くために使っている時間だと思っています。どちらも大切な時間なので、子どもが生まれても働き続けようという気持ちは学生の頃から変わっていません。
どのようにして仕事と家庭を両立させているのでしょうか?
職場や家族に助けられて両立できています。
職場では自分で時間をコントロールできる仕事を担当させてもらっていますし、時短制度も利用しています。子どもの事情で突然休む時なども理解して、あたたかい雰囲気で迎えてくれるので、とても助けられています。
保育園に子どもを送るのは夫がやってくれています。だから、朝は仕事に専念して、帰ってから子どもが寝るまでは子どもとの時間。その後に家事をすることにしています。
これからどんなことをしたいと考えていますか?
「これは私がやった仕事です」と言えるような実績を残したいと思っています。娘が、私を見て「大きくなったらニコンカメラの会社で働く」と言ってくれているんです。そんな娘たちに「これはママが作ったんだよ」と言えるような仕事をしたいですね。また、ユーザーの方に「ニコンっていいね」と思ってもらえるような商品をつくっていきたいです。
メーカーの商品企画を目指す学生にアドバイスをお願いします。
「世の中を楽しくするにはどうすればよいか」という視点を持つことが大切です。商品を見るときに「お客様はどう感じるか、何をしたら喜んでもらえるか」という目線を持っていてほしいと思います。
商品企画の仕事にはプレゼンもあります。学生時代、ゼミで人前に出て発表し、考えていることを伝えるという経験をしたのは今の仕事に生かされていると思います。また、英語でのやりとりやプレゼンもあるので、勉強しておくと良いです。
学生へのメッセージをお願いします。
学生時代に時間がどれだけあったか、社会に出てから気がつくものです。だから、今の自由な時間の中でできるだけいろいろな事に挑戦したり、考えたりするとよいと思います。自分自身で「充実している」と思えるように打ち込めるものを見つけていってください。
インタビューを終えて( ハナジョブ学生記者)
周りと協力していくことは大切だけれど、譲れないこと・大切なことは信念を持って曲げないという山田さんの姿勢がとても印象的でした。私もこのように行動できる社会人になれたらと思います。山田さんの商品や仕事にかける思い、人柄が伝わってくるお話ありがとうございました。
お仕事紹介(商品企画)
コンパクトデジタルカメラの商品企画。ユーザーの求めるもの、市場動向、技術トレンド等を把握、分析した上で、商品を形にしていくのが仕事です。コンセプトを実現した商品を世に出すために、社内のあらゆる人と議論し、活動していくことも大切な仕事です。
株式会社ニコン
ニコンは、1917年の設立以来、国内外の市場において、光学技術のパイオニアとしての道を切り開いてきました。
現在、デジタルカメラを中心としたカメラ関連製品、双眼鏡、メガネレンズといったさまざまな消費財用光学製品を提供する一方、産業用精密機械分野においても半導体露光装置、液晶露光装置、顕微鏡、測定機などを製造・販売しています。