結果的に、1人ひとりの女性のためになる。だから辛くてもそこに立ち返ってがんばれる。(オムロン)

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社会をよりよくするために何ができるか、を考え続けるオムロンで「オムロン式美人」という女性の健康のためのプロジェクトを立ち上げた下瀬陽子さん。ご自身の経験から、女性に寄り添った商品やサービスの提案を数多くされています。今回は、下瀬さんの商品企画という仕事に対する想いや女性の健康という面、また前職におけるアメリカ時代の経験もふまえてお話をお伺いしました。

モノだけじゃない商品づくり

最初に現在の仕事内容について教えてください。

私は2006年にオムロンヘルスケアに入社しました。それから11年、ずっと商品事業統轄部にいます。「誰にどんな価値を届けるのか」を考えるところから、商品を企画しています。オムロンは「事業を通じて社会の発展に貢献する」ことを目指していますが、その中でヘルスケア事業は健康に関する課題を解決していこうとしています。

例えば、20~30代の女性の冷えや生理痛といった健康課題に対し、我々の技術で何が解決できるかを考えます。そして、アイデアを出しながら商品という形にする仕事をしています。商品には、(婦人用体温計などの)モノだけでなく月経予測をする、女性ならではの体調管理アプリをつくることなども含まれています。

商品を企画するだけではないんですね!

例えば、血圧計や体重体組成計、歩数計など、男女問わず使える物を利用して、日本だけでなくグローバルに健康課題を解決することも私の担当です。あとは新しい事業をつくることも仕事ですね。2010年から「オムロン式美人」というプロジェクトを自分たちで立ち上げました。そこで女性の健康課題を解決するための商品開発、マーケティング活動を含めて幅広く取り組んでいます。

部活動のような集まりから始まった新プロジェクト。『美も健康もちょうどよく』

なぜオムロン式美人を立ち上げようと思ったんですか?

きっかけは、2009年に仕事をがんばり過ぎて体調を崩してしまい半年間休職したことですね。当時30歳だったのですが、その時に初めて自分の健康に向き合うことができました。もともと私は気を失いそうになるほど生理痛が酷くて、休職した時に女性には女性特有の健康課題があるということに気がつきました。

そこで、復帰後に他部署の先輩や同じ部署の仲間と一緒に女性の健康課題解決に向けて何ができるか考えてみようか、というところからスタートしました。最初はみんなそれぞれの仕事があったので、定時後に集まって部活動のように活動していました。

自主的に始まったプロジェクトが、どのように事業化したんですか?

当時の統轄部長に、「そんな部活動みたいなことやってないで業務として本気で何ができるか考えてみなさい。」と言われたのがきっかけです。自分たちだけではなく、外部の方にも入ってもらい、「何をするのか」「オムロンで何ができるのか」を考えるところから、1年くらい真剣に話し合いましたね。その結果、女性ホルモンを軸に「美も健康もちょうどよく」をコンセプトにしようと決めました。

理由はオムロンの強みが体温計や血圧計などバイタルを測ることなので、それらのデータを取って活用しよう、と。そこから考えて商品化したのが10秒で計れる婦人用体温計です。妊活のためだけでなく、自分の体調を知るために測ろうよ、ということも伝えたかったのです。どんな女性にも持ってもらえるように、デザインの細部にもこだわりました。

例えば、婦人用体温計は医療機器っぽいというイメージ強かったのであえて体温計っぽくないデザインにしたり、ベッドにおいても転がりにくい形にしたりしました。この地道な活動のお陰で、シェアを大幅にアップすることができました。

立ち上げ当初に苦労したことはありますか?

女性のための商品を作るということを、会社に理解してもらうことに苦労しました。意思決定に関わる男性に対して、なんでわかってくれないの?と思うこともありましたが、自分の成長に繋がったのでよかったと思います。「想いだけでは伝わらないんだな」と痛感しましたね(笑)。だから、納得してもらうために利用者の声を集めるのはもちろん、オムロンの製品を知らない方を集めて話をお聞きしました。

ディズニーへの憧れから、アメリカへ

ところで、オムロンに入社される前はどんなお仕事をされていたんですか?

日本でいうグランドホステスのような仕事をラスベガスの旅行会社や航空会社で3年していました。というのも、私は高校を卒業してからアメリカの大学にいき、観光業を専攻しました。人と触れ合って人を笑顔にすることがやりたいと思ったのです。

そこから日本に帰ってきて結婚することになり、夫が京都の出身なので東京から京都に引っ越し、派遣でオムロンに入社しました。就活をして、新卒でオムロンに入ったという歩みではないのでユニークなキャリアかもしれないですね。

どうしてアメリカに行こうと思ったんですか?

当時は就職難で普通に4年制大学を出ても就職できるかわからないと言われている時代でした。そのときに、みんなと同じように進学して何やりたいかもわからない状態で過ごすより、自分がやりたいことにチャレンジしようと思いました。

さらに、小さいきときからディズニーの世界観が好きでディズニーランドで働きたいと思っていました。だから、観光業を学ぶため、アメリカに行こうと決意しました。今は日本にもあると思いますが、当時はアメリカぐらいしか観光について学べる大学がありませんでした。別に英語が話せたわけでもなく、ただ単にやりたいことをやるためには行くしかないと思いました。

アメリカで働いていた時と今のお客さんのことを考える経験ってとてもリンクしていると思います。アメリカでの経験は、今のお仕事にどのように繋がっていると思いますか?

アメリカの空港で働いていて良かったなと思うのは、1日に1000人位の色んな国の人と触れ合う機会があったことです。お客さんのことを考えて行動できるようになりましたね。例えば、通路側が好きな常連さんなら通路側に、乗継ぎ便の時間がタイトな方は前方の席をご案内するなど、可能な限り工夫をしていました。

もちろん、商品においては大量生産の部分があるので難しいですが、なるべくお客さんの希望を叶えられるように、ありたい姿を届けられるように、というのは今でもこだわりますね。だからお客さんのことを考えるという部分はかなり繋がっています。

商品開発に対して下瀬さんが一貫している想いはありますか?

“お客さんをどうしたら笑顔にできるか”ですね。前職もそうだったのですが、私の仕事は“ここまで”と決めつけずに取り組むことが大切だと思っています。“ここまで”、と思って取り組んだ結果、抜け落ちてしまったところに、お客さんを不満にさせてしまう原因があるのかもしれないと思うんです。

全体は把握しつつ、あまりやり過ぎないよう適度に加減しながらも、お客さんがハッピーか否かを考える所はぶらさずにやっています。先ほどの婦人用体温計も、「私がこう思うからこうなんです」ではなくて、必ず「お客さんがこう思っているからこうなんです」というように伝えるようにしていましたね。お客さんの気持ちを代弁するように。

下瀬さんから、新しいことを積極的に取り入れていこうという姿勢をすごく感じます。会社全体も同じような雰囲気なんですか?

そうですね。会社には、チャレンジしようという価値観があるので。やはり、社会も変革が激しいので、今最適なことも将来変わっているかもしれません。いい意味でなんとかしなくてはいけない。

オムロンヘルスケアの社長の荻野もよく言っています、「変態していこう(自分たちも時代と共に変化しながら成長していこう)」や「鳥の群れのような会社になろう(みんなが同じ方向を向いて、協調し、和を尊重しながら、一人ひとりが自立して羽ばたき、それぞれが最大限の力を発揮できる集団を目指そう)」と。

今後目標としていることや理想のキャリアはありますか?

多くの人を健康に笑顔に、というベースに加えて、大きく2つあります。1つは今やっている事業を大きくしたいです。納得いくまでには、まだ時間がかかるので、粘り強く自分のライフワークとしてやり続けたいなと思っています。

もう1つは、商品企画で一通りの商品は携わってきたので、ITを活用したデジタルヘルスケアの領域など、自分が未経験なことにチャレンジして事業に貢献しつつ、新たなステージで自分自身も成長していきたいです。

わくわくを大切に

女性向けの商品開発に携わっている中で感じられている、健康に関するメッセージをお願いします。

今、100歳まで生きる時代と言われていて、定年も65歳になると言われています。その中で健康でいる為には日々の行動がとても大切です。特に若い女性は無理なダイエットをしがちなので、ちゃんと食べて動いて寝るということを意識して欲しいです。当たり前だけど、とても難しいことだと思うので。

特に食べ物は大事です。3ヶ月前に食べたものが今の自分の身体になるそうです。また、朝一杯のお味噌汁や白湯で体温を上げて1日過ごすとか、納豆などの発酵食品で腸内環境を整えてみるとか、冷たいお水を常温にしてみるとかお金もかからず取り組めることがあります。

でもいろいろやりすぎると逆にストレスになるので、できることから取り組んでいったら良いのではないかと思います。今の食べ物が未来をつくるので、日本人の痩せ願望とかは皆さんの世代から変えていっていただけたらと思いますね。

私たちの時代は生理痛も我慢しろと言われたり、女性特有の体調の話をしたりするのもタブーな時代だったんです。でも今はそんなこともないですし、ネットで生理や女性の悩みについては発信していけるので、ぜひこの文化を変えていってほしいです。

最後に学生へメッセージをお願いします。

Ladies be Ambitious. 「少年よ、大志を抱け」って言葉はあるけど、男女ともに大きな夢をもって、わくわくすることに取り組んでください。企業の価値観と自分の価値観が合うのは大切だと思います。就職して辛いことがあったときに、すごく拠り所になると思うからです。

日本の女性は謙虚さが美徳となることがありますが、どうせ私なんて…とならずに、舞い込んできたチャンスは失敗を恐れずにどんどん掴んでほしいですね。

チャンスは待っていても来ないので自分で行動して掴んでください。また、企画職について言うと、わくわくが大事です。アイデアはわくわくとかひらめきから生まれるので、自分がポジティブでいることと好奇心を持ち続けることですね。

あとは、変化に敏感であること。「この業界は、こうだ!」と思っていても、オンラインで書籍を販売することから始めたアマゾンが今では私たちの生活には欠かせない存在に変化しているように、世の中は常に変化しています。常識にとらわれず視野を広くもつことが商品企画には大事だと思います。

取材を終えて

1つ1つの商品に対してユーザに寄り添った商品提案をする、という想いを強く感じました。それも、どうしたら使う人がハッピーになれるのかを常に考え続けられているからこそなのだと思います。今回、女性の健康ということで私自身、気になるテーマでもあったので色々なお話を聞くことできとても勉強になりました。また、自分自身がわくわくしながらアイデアを生み出して働かれている下瀬さんのように、私も好きなことを大切にしていきたいと思いました。

オムロン株式会社
オムロン(株)は、独自の「センシング&コントロール+Think」技術を中核として、制御機器、電子部品、車載電装部品、社会インフラ、ヘルスケア、環境などの事業を展開しています。オムロンは、多岐に渡る事業を通じて、社会の発展に貢献することを目指しています。

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About Author

福島美穂

大学4年。千葉県出身。ヨコハマハコ入りムスメプロジェクト2015メンバー、オサラギジェンヌの企画・運営担当。気が付いたらカフェのバイトと大学を往復する日々。何か新しいことで、達成感のあることがやりたい!と思いプロジェクトに参加しました。カフェめぐり、食べ歩き、雑貨屋さんめぐり、北欧家具が大好きです。

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