自分のつくった製品は子供のようなもの(ライオン)

1

この記事を読むのに必要な時間は約 5 分です。

多くの人に親しまれる製品を作りたいと思い始めたのは高校生のとき。目に見えず、一人一人感じ方や嗜好性が大きく異なる「香り」。それをイメージ通りに製品化させる難しさに挑戦することが仕事のやりがいと語る大和久さん。華やかな印象のある「香り」を開発するお仕事について、お話を伺いました。(2011年1月時点の情報です)

「香り」という製品のイメージを一つにする~香料開発のお仕事とは?

現在のお仕事の内容を教えてください。

衣料用洗剤、柔軟剤などのファブリックケア分野で、私は主に柔軟剤の香料開発を行っています。

製品開発ではまず、どんな新製品を作り出すのかを考える企画担当者がいます。その企画担当から、例えば「甘く奥深い香りのもので、ターゲットは30代の主婦、既存のシリーズよりも残香性が高い柔軟剤」というような依頼が来ます。一言で「甘い香り」と言ってもバニラや果物などいろいろな種類があるので、企画側の製品設計と、私たち開発側のイメージを合わせなければいけません。

そこで、画像や写真で香りを視覚的に表し、お互いの製品イメージに誤差が出ないように確かめながら設計していきます。開発期間は通常一年が目安ですが、香りは流行りがあるのでターゲットを絞った製品は、開発期間がどんどん短くなります。

香りにもトレンドがあるんですか?

もちろん香りにも流行りがありますので、香水の市場調査で香りのトレンド研究をします。香水は世界中で毎年数百種類が発売されています。その中からメジャーなものを100種くらい評価して、その時代の日本人の嗜好に合ったものをタイムリーに日用品に応用しています。

香りは社会情勢やファッションと強い結び付きがあります。花柄の服が流行った時代は、フローラル系の香りのものが人気でした。2001年のアメリカ同時多発テロの後や、2008年のリーマンショック以降は暗い色の控えめなファッションが浸透し、香りも落ち着いた癒し系が流行っていました。

現在の仕事に就くまで、どのようなお仕事をされてきたのでしょうか?

入社してから8年間は、ビューティケア分野の製品開発をしていました。ムースやワックスなどのヘアメイク剤や「Ban」など制汗デオドラント剤の基剤の開発です。ヘアメイク剤の担当のときは、開発品のターゲットとして想定している髪型にして、試作品を毎回自分の髪で評価していました。会社で4~5回髪を洗ってはセットする、という毎日でした。

製品開発の研究って華やかなお仕事に見えますが…

一見華やかな仕事に見えるかもしれませんが、意外と地味で泥臭い仕事の内容ですよ。例えば制汗剤の開発のときは当然自分の肌で試しますし、防臭効果の確認をするときは、同じ部屋のメンバーのワキや足の菌を培養しますし……。結構体力勝負の仕事でした。

難しいからこそやりがいを感じる!~そんな大和久さんのワークスタイルとは?

仕事の楽しさ、やりがいを教えてください。

やはり、自分の携わった製品がお店にならんでいるのを見ること、お客様がその製品を手に取って購入してくださることは、喜びです。そして何よりも、賞賛の声をいただくときが一番嬉しいですね。

製品が市場に出る前に、一般の方に製品を実際に使っていただいて、その感想をお聞きします。でも、香りは一人一人感じ方や嗜好性が大きく違うものなので、設計した通りの反応が返って来ないことも多いんです。だからこそ、香りのイメージや残香性の効果に対するお客様の感想が、自分の設計したとおりのものだったとき、うまくいった~! と達成感を強く感じます。

逆に、苦労されている点を教えてください。

苦労といったら、産みの苦しさですね。自分のつくった製品は、子供のようなものですから、できるだけ長く市場で存在していて欲しいものです。でも今の世の中はものが溢れています。目新しいものでないとすぐに飽きられてしまうので、ロングセラー製品がなかなか生まれないんです。 一生懸命つくった製品が市場からなくなってしまうときや、売上げが落ちてしまったときは、何がいけなかったんだろう? と落ち込むこともあります。でもその苦労をバネにして、また次の製品開発に活かすようにしています。何度でもリベンジするチャンスがもらえる今の環境は非常に恵まれていると、感謝しています。

仕事で心がけていること、大事にしている想いを教えてください。

お客様の視点にたつこと、研究者視点になりすぎないことです。新しい技術があったらどうしてもそれを活用したくなるものですが、本当にお客様がそれを求めているのか、お客様にとってそれが本当にメリットになり得るのか、ということを常に考えながら仕事をしています。

どんな学生時代でしたか?

学生時代、化学科の研究室では、機器を使って微量成分の分析をしていました。香料開発は何十種類もの微量成分を組み合わせて行うため、今の仕事にとても役立っています。でも当時は、ボクシング部のマネージャーをしていて、いかに楽をして単位を取るかということしか考えてなかったので、会社に入ってからすごく苦労しましたよ。もっと一般的な化学の知識も勉強しておくべきだったな、と後悔しています。

現在の会社に入社を決めたきっかけは?

高校生のころから、自分のつくった製品がお店に並ぶのを見るのが夢だったんです。大学進学時に工業化学科(現在の応用化学科)に決めたのも、社会と密着した実用的な研究ができるからでした。この夢は、採用面接の際に必ず伝えていきました。たぶん、この熱意だけで採用してもらったんじゃないかと思っています(笑)。ライオンは、私にとってなじみの深い製品が一番多かったんです。

入社してから今に至るまで、毎年いくつもの新製品を世の中に送り出しています。学生時代の夢がすぐに叶い、今でも新しい製品を生み出す苦しみと喜びを味わい続けていられるのは、メーカーで働いている者として一番の幸せだと思っています。

周りの協力に日々感謝~そんな大和久さんのライフスタイルは?

どのようにして仕事と家事育児を両立させているのでしょうか?

私が両立させているわけではないですね。家族や同僚の協力があるからこそ、自分の仕事が成り立っていると思っています。

私は両親が近くに住んでいるため、平日は全面的に実家で面倒をみてもらっています。だから、急に仕事を休むということは、最小限に留められています。家事の分担も、徐々に主人の受け持つ比率が増えているので、とても助かっています。

また、子どもが生まれる前は残業ができたので際限なく仕事をしてしまっていたのですが、子どもが産まれてからは独身時代のように仕事が終わるまで働くわけにいかなくなりました。だから、周りの上司や同僚にたくさんサポートしてもらっています。後輩達が仕事をしていても先に帰ることがほとんどです。周りの協力なしでは働けないですね。常に自分の置かれている立場に感謝しています。

これからどんなことをしたいと考えていますか?

学生時代に語学力をもっと身につけておくべきだったな、と後悔しています。仕事上、英語の論文を読んだり、海外の香料会社さんと共同開発することもあるんですね。英語のプレゼンを通訳してもらっていますが、結局は概略しかわかりません。だから、海外の研究者とディスカッションができるくらい、語学力を身につけたいですね。

プライベートでは、のんびりと南の島で生活したいです。スキューバダイビングが好きなので、娘が大きくなったら、一緒に世界中の海を潜ってハンマーヘッドを間近で見たいです。

これから同じ職業に就きたいと思っている人にアドバイスをお願いします。

製品開発は、知識だけでなく、体力も必要です。とにかく体力勝負と思って、日頃から心身ともに鍛えてください。そして何事も最後までやり抜く気力が重要ですので、いろんなことにチャレンジしてください。

学生へのメッセージをお願いします。

学生のときにしかできないことっていっぱいあります。会社に入ってしまうとなかなか新たなチャレンジはできないので、今のうちにいろんなことに挑戦してください。徹夜して遊ぶのも若いうちだけですよ。

そして、勉強でもスポーツでも留学でもなんでも良いので、一つのことを最後まであきらめずにやってみてください。執着心が強い人、達成感を味わったことのある人は、会社に入ってから強いんです。何事も中途半端にしかやってきていない人は社会人になってもすぐに投げ出してしまいます。後で後悔しないよう、よく学び、よく遊んでください!

インタビューを終えて( 学生記者:佐久間実織)

イメージから作り上げていく香りの製品開発は、技術的な分野だけでなく想像力や発想力も必要とされる、ということを学びました。最後まで諦めずに一つのことをやり遂げることが一番大事なこと、とおっしゃっていた大和久さんは、強い探求心と謙虚さがとても印象的な方でした。

Share.

About Author

ハナジョブ学生記者

2008年〜2016年までの学生記者たち

1件のコメント

  1. Pingback: 商品開発を目指す就活女子が読むべき記事5選|ハナジョブ

Leave A Reply