「一瞬も一生も美しく」を目指して。科学的根拠のある商品を生み出したい(資生堂)

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美容と健康の両方を日本中、世界中の人に届ける、という明確な目標を掲げている資生堂の研究員、深田楓子さん。大学時代に得た、「食べることは生きること」という発見から、食を通して世の中に貢献しようと日々研究に取り組んでいます。科学的根拠のある商品とは何か、大切にしている考え方や商品を生み出す職場の環境、今後の展望などについて伺いました。(2016年11月時点の情報です)

健康の先に美しさがある

現在はどのようなお仕事をされているのですか?

資生堂のライフサイエンス研究センターで食品開発グループに所属して、美容と健康を支える「美容健康食品」の研究と商品開発をしています。

機能性食品の開発には大きく2種類あって、1つはお客様の立場から美味しい、飲み続けたい、食べ続けたい思う味を作ること。きれいになるためには続けることが大切なので、味作りは特に力を入れています。

もう1つは細胞など用いた基礎実験から美容機能性成分を見つけ出して、それを元に商品を作っていくことですね。

具体的には、シベリア人参という生薬を用いた基礎研究や、「長命草」という美容健康食品の開発を担当しています。シベリア人参の研究ではむくみの改善効果という新しい知見が認められて、私が書いた論文がアメリカの栄養学術雑誌に掲載されました。

資生堂(先輩インタビュー)

「長命草」という商品はどのようなものなのですか?

青汁のような飲み物ですが、子どもから大人までとても飲みやすい味になっています。青汁の中で一番美味しい自信があります。

また、パウダー状の商品も販売しています。もともとパウダー状の商品はなかったのですが、お客様からの要望を元に作られた商品です。

パウダーにすることで料理にも使えるようになりました。実際に資生堂研究所の社員食堂で、長命草のソースを使ったグリルチキンや、長命草の風味のパンナコッタを出しているんですよ。

商品の研究・開発では、健康と美容どちらを重視しているのですか?

健康と美容というのは同じ方向にあるので、どちらということはありません。

きれいになりたいと思ったら健康でなくてはならないし、健康でいることの先に美しさがあると思っているので。美容に加えて、健康も扱えるのが食品の魅力だと思います。

資生堂(先輩インタビュー)

食事で人を健康にしたい

学生時代はどんな勉強をしていたのでしょうか?

お茶の水女子大学で栄養学を学んでいました。

食べることと料理をすることが大好きで、小学生のときからお菓子作りをしたり母の料理の手伝いをしたりしていました。

そんな私の適性を見て、母が管理栄養士を勧めてくれたことが大きく影響していますね。でも、大学で勉強するうちに「体を作っているのは食事」ということを実感して、食事で人を健康にしたいと思うようになりました。

大学で転機があったのですね!

そうですね。授業の一環で保健所や病院の実習に行くことがありました。その中で、食事で人の命は守ることができるということを実感したんです。

食べることは生きることだし、食べることで心も幸せになるという食の魅力に気づきました。

管理栄養士の資格があれば学校や病院でも働けると思うのですが、なぜメーカーの研究職を選んだのですか?

自分が形にしたものを広く伝えたい、活かしたいと思ったのでメーカーに就職しました。

メーカーであれば商品化することができますし、たくさんのお客様の手に届けることできますよね。

学生時代はどのような研究をしていたのですか?

イチゴの動脈硬化抑制作用について研究していました。毎日イチゴの甘酸っぱい匂いに包まれていましたね。

イチゴを凍結乾燥して、抽出液を素材として使っていました。動脈硬化を予防する基礎実験や細胞実験で、血管の細胞を使って実験していました。

イチゴですか!なぜ研究対象としてイチゴを選んだのですか?

それはもうただ好きだったからですね。イチゴを食べて体に良かったら面白いんじゃないかと思って。

イチゴは日本で消費量が多い果物なので、何か発見できたら社会に貢献できるのではないかという思いもありました。

やはり興味がないと研究を続けるのは大変だと思うので、好きな食物で研究できたのはとても良かったです。

学生時代、他にどんなことをしていましたか?

栄養や食に関わるサークルに所属していました。

食物栄養学科の学生が集まり、いろいろなジャンルの活動をしているサークルで、私は保育園で子どものおやつを作ったり、栄養について情報を発信するお便りを作ったりというボランティアをしていました。

自分が学んだことを活かしたいという思いが強かったんです。

「授業を聞いて吸収するだけではもったいない。せっかく学んでいるのだったら、自分が好きな分野で誰かのためになる情報を発信しよう!」と思っていました。他にも発展途上国の食を支援する活動にも関わっていました。

学生だと知識を吸収できても、消化して活用する場は少ないですよね。

そうなんです。現場での活動は、学んだことを活かしながら消化するチャンスでもあるんですよね。

子どもの栄養について勉強しつつ、身近な保育園の子どもたちやお母さんたちにはもちろん、海外にも情報発信していました。

資生堂(先輩インタビュー)

勤務時間も柔軟に。育児しながら働くのが当たり前の環境がある

1つの商品に関して、どのくらいのスパンで仕事をしているのですか。

1つに3、4年くらいですね。中にはもっと長く、1つの商品に携わっている方もいます。その都度区切りはあるのですが、研究にはそのくらいの年月がかかりますね。

会社では研究員もチームで働くことが多いので、最初の基礎研究から関わっている商品もあれば、途中から関わることもあります。

例えば、先輩研究員がこんな成分を見つけた、というところから途中でメンバーに加わることもありますし、既存の商品のリニューアルから関わることもあります。

日々の仕事内容やスケジュールは各自で決めるんですよね。

基本的にはそうですね。ただ、チーム全体のスケジュールはあります。

例えば今月中にこの実験は一区切りさせよう、この日までに報告したいから一区切りさせよう、といった大まかなスケジュールです。

今日はこれをやらなければいけないという決まりはありませんので、各自で日々のスケジュールは立てられます。他の職種よりは融通がきくので働きやすいと思いますね。

研究員はフレックス制度を利用できるので、朝型の人は朝の6時、7時に出社して夕方3時、4時に退社、夜型の人は朝の10時に出社して夜の8時に退社することもできます。家族の行事や生活に合わせて働いている人が多いですね。

個人で立てた予定はチームで共有したりするのですか。

もちろんしています。各自のスケジュールも確認できますし、定期的にチームで進捗を共有して、いつどんなことが起こっても誰でも対応できるようにしています。

育児をするのに最適な環境だと伺いましたがどうしてでしょうか。

育児だけでなく、身内の方の介護や自身の病気療養などのケアをしながら仕事の第一線で活躍し続けられる環境が整っています。

日本の一般的な企業では、結婚や子どもを授かったのと同時に女性は仕事を続けるか、辞めるかの選択を迫られてしまうケースもまだまだあると思います。

私が結婚・出産したときには「旧姓を使いますか?」「この先どういう勤務形態で仕事をしたいですか?」と上司から尋ねてきてくれました。

働き続けることを前提とした会話ですよね。育児はしていて当たり前、人に頼るのも頼られるのも当たり前といった雰囲気は男性女性関係なくあります。男性でも子どもの熱でお休みする方もたくさんいますし、それが普通ですね。

以前から結婚しても子どもができても働こうと思っていたのでしょうか?

大学1、2年生までは「結婚したら仕事はしない!」と思っていましたね。夢は、大きなマイホームを立てて、母のような専業主婦になることでした。

ですが、やはり仕事を始めると楽しくて。人と何かを作り上げる大変さもありますが、満足感もそれ以上に大きく、仕事を続けたいと思うようになりました。

また、周りに結果を出しているお母さんたちが本当にたくさんいるんです。会社で働いていくうちに、家庭も大事にしながら仕事もできるという生き方に憧れるようになり、その結果「辞めずに働き続ける」という選択をしましたね。

資生堂(先輩インタビュー)

資生堂で働くということ

仕事をしていて、やりがいはどのようなときに感じられますか。

論文や特許、商品などが形になって世の中に貢献できたときは、喜びとともにやりがいを感じます。

お客様に健康・美しさを届ける、科学的に根拠のある商品を出すという思いがあるので、日々こつこつと地味な実験をしつこいくらいやっています。

もちろん思うように結果が出なくて苦労することもあるのですが、だからこそ一方で自分にしかできないことをしている満足感も得られます。

よく店頭に足を運ぶのですが、そこで自分の研究成果が「特許取得」といった形で書かれていると、役に立っていると実感できて本当に嬉しく思いますね。

仕事で心がけていることや大事にしていることはありますか?

いくつかあります。研究していると、研究がゴールになってしまいがちです。ですので、研究の先にもともと何があったのか、何のために研究をしているのかを常に考えています。

お客様を美しくするという目的を忘れないように、この細胞がこの挙動を示したからお客様にはどういう変化があるのか、これが本当に意味のあることなのか、どういったメリットがあるのかということを常に忘れずに研究しています。

あとは情報の共有です。チームメンバーだけでなく、1つの製品に携わっている人がたくさんいるので、情報の共有化は大事ですね。

就職活動をする中で資生堂を選んだ理由はなんでしょうか?

資生堂のコーポレートメッセージ、「一瞬も一生も美しく」という言葉に惹かれましたね。

OBOG訪問をして実際に働いている方とお会いしていくうちに、本当に魅力的な会社だと思いました。

この人たちと働きたい、人を健康に美しくしたいという強い気持ちから、資生堂大本命の1本勝負でした。他に多数食品会社も見てはいたのですが、自分のなかでどこかしっくりいかないところがありました。思いの強さがあったから、入社できたんだと思います。

難しい質問ですが、深田さんにとって仕事とは何でしょうか?

今の私にとっては大きな目標ですが、日本や世界の女性を美しく、食を通して人を美しくしたいと思っています。仕事はその思いを形にできる場、実現するチャンスがある場だと思います。

資生堂だからこそ多くの人に伝えられるし、世の中に発信するチャンスがたくさんあります。

また、世の中には、本当に効果があるのかわからない情報が少なからずあると思います。私は科学的根拠に基づいたことを言える研究者でありたいし、正しい根拠のある知識をみなさんに伝えたいと思っています。

大好きな仕事で輝いている深田さんからのメッセージ

同じ職業に就きたいと思っている学生にアドバイスをお願いします。

資生堂だから皮膚の研究をしていないといけない、というわけではありません。

資生堂の研究員に共通して言えるのは、自分で考えて自分で動いてその結果を考察するという、PDCA(Plan Do Check Act)サイクルを自分で回せる力を持っていることです。

考えて動くくせを身につけて、周りの人に意見をいただきながら、それも偏った1人ではなくていろいろな人に聞くことが大切です。

たくさんの方から意見をいただくことは、自分の考察を深めるチャンスです。学生生活で、PDCAサイクルを回せるように努力するのがいいのかなと思います。

取材を終えて

資生堂さんというと皮膚の研究だけをしていらっしゃると思っていました。しかし健康と美容は同じ方向にあると伺ったことで考え方が変わりました。健康でないときれいにもなれない、私もそう思いました。深田さんから商品開発や研究、働き方において大事なこと、学生時代に身につけるべき能力などのお話を聞くことができて良かったです。

資生堂(先輩インタビュー)

資生堂

資生堂は「美しい生活文化の創造」というミッションのもと、化粧品や美容健康食品などを製造販売しています。100年にわたって培ってきた研究開発力が、お客さまの様々な「美」のニーズに応える価値創造を支えています。

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About Author

久保美遥

東京薬科大学生命科学部3年。生物学、化学、医科学を中心に学んでいて、部活でも実験しています!日々、1限からの授業や実験のレポート、アルバイトに追われていますが、とても充実していて楽しい学生生活を送っています。趣味は軽い運動と映画鑑賞です。ラジオ体操で体型維持をしつつリフレッシュしています。女性の働くことへの意識の違いや、社会で輝く働き方に興味があります。ハナラボを通して女子学生の皆さんに活力を与えられるような記事を届けたいです。

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