ないと思っていたものは自分の中にあった~島で見つけた本当の自分~(島根県海士町)

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みなさんは日々の生活の中で、今自分の行っていることに違和感を覚えたり、「頑張れないな」と感じた時、どうしていますか?

今回は、そんな自分の仕事に違和感を抱いていたとき、偶然訪れた島根県海士町で自分が本当にやりたいことを見つけて移住をしたという、的場陽子さんにお話を聞きました。現在は『隠岐國学習センター』という公営塾でスタッフとして働く的場さん。塾では、高校生に数学を教えたり、塾でのイベントを考えたり、日々高校生と接して仕事をしているそうです。(2015年3月現在の情報です)

「当事者に会っていない」という違和感

隠岐國学習センターにかかわるまでの経緯を教えてください。

隠岐國学習センターにかかわる前は、東京で教材を制作する会社に勤めていました。担当していたのは、中学生の社会科の参考書やテストを制作する仕事。

教育業界にかかわりたいと思って入社したのですが、子どもたちのための教材を作っているのに、毎日相手をするのは書類と大人たちで、「当事者に会っていない」という違和感を持ち始めました。

そんなとき、知り合いを訪ねて、旅行で島根県海士町に行ったんです。東京に帰っても、海士町の景色や魅力が忘れられなくて、心の引っ掛かりを確かめるようにもう一度海士町を訪れました。体が勝手に動いた感じです。こんなふうに衝動的に行動すること自体とても珍しくて、自分でも驚きました。

その後、東京で隠岐國学習センターのスタッフに会う機会があって、「1年後にセンターで働きたいです」と言っていました。口ではそう言ったものの、お金のことやキャリアのこと、島の狭いコミュニティの中に入ることに不安を感じて悩んだこともありました。でも「今行くのをあきらめたら後悔する」と思って、会社を退職し、初めて海士町を訪問してから1年半後に移住をしました。

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自分のような子を増やしたくない

そもそも的場さんが「教育」にかかわりたいと思ったのはなぜですか?

大学生のとき、就活前に「自分は何をやりたいんだっけ」といろいろ考えていくうちに、「教育」なら仕事にできるかもしれないと思ったんです。母は公務員や公認会計士など資格系の手堅い職業につくように勧めてきたのですが、自分には向いていないと思っていました。

高校生まで大学に入るためだけに勉強をしてきて、大学に入学したら「もう勉強する意味はない」と思って、自分のやりたいことがわからなくなってしまっていました。なぜそうなってしまったのか、人はどんなことでやる気を感じるのか、この謎を生涯通じて解明したいと思ったんです。私のように勉強を目的もなくやって、自分のやりたいことを見失ってしまう子を増やしたくないという想いもありました。

隠岐國学習センターに行きたい!と強く思ったきっかけはなんですか?

行きたいと思うまでに、二段階ありました。

一段階目は友人の知人であった今の上司訪ねて、直接塾を見学したことです。塾は普通の民家をお借りして、あるのは机と椅子とホワイトボードだけだったのですが、その空気感が、かつて学生のころにお世話になった学習塾に似ていて、懐かしかったです。自分にとってその塾は、学校がしんどくても自分を受け止めてもらえるような特別な場所だったので、とても惹かれました。また、今までは子どもたちと遠い場所で働いていたけれど、ここでは子どもと近いところで仕事ができるなと思いました。

二段階目は、センターの卒業生に会って話をしたことです。「なぜ大学に行くの?」とか「どんな勉強をするの?」などと話をしていた中で、その卒業生が「将来この島に恩返したい」と言っていたのが心に響きました。

「高校時代いろんな大人が自分に関わってくれて助けてくれたので、自分もこの島に恩返しをしたい」という卒業生の言葉を聞いて、こんな子を育てられる場所なら、今すぐ働きたいと思いました。

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自分の良さに気づいてほしい

他の学習塾とは違うところはどういうところだと思いますか?

私たちが高校へ訪問して、高校の先生から生徒の様子を伺うこともあります。普通の塾と比べると、関係の密度が濃いと思います。例えば、失恋して勉強へのモチベ―ションが下がっているな…とわかるのは生徒と距離の近い島の塾ならではかもしれません。

塾では将来について考える時間もあります。生徒一人がマイテーマを持って、「なんでこんな問題があるの?」とみんなでワークショップや対話を行う中で考えます。

面白いのは、学力はあまり高くなくても、人を巻き込む力や人に自分の気持ちを上手く伝える力のある生徒もいることです。そういう子に自分の良さに気づいてほしいですね。

生徒や周りの大人からモチベーションをもらっている

仕事のやりがいと苦労について教えてください。

日々生徒に対して、根気よく褒めたり、叱ったり、成長するための種をまく。これを繰り返して、まいた種から芽が生えてくる瞬間に立ち会えるのが面白いです。

逆にしんどいことは、仕事にゴールがないことです。達成するためにどこまでやっていいのか、加減がわからないんです。前の仕事とは違って、仕事がお金と時間で区切られませんし、残業代も出ません。特に、やる気がない子、主体的じゃない子にどういう教育をしていくかが一番悩みます。

でも、関わり続けるうちに自分が疲れてしまったら、少し休むことにしています。仕事というよりは、人間として関わっているので、時々距離を置くことも必要なんですよね。ここで働き始めて、自分は人とかかわるのが好きだとあらためて気づきました。生徒や関わる大人からも、日々仕事や生活のモチベーションをもらっていると感じます。

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ほかに海士町や学習センターに来て、自分自身のことについて気づいたことや意外だなと感じたことはありましたか?

生徒たちと関わることで、自分はしつこいタイプだと気づきました(笑)。以前まではメール不精で、人間関係もめんどくさいと感じていたのですが、生徒のことだけは諦めきれないんだと思います。また、今まで私は仕事や日々の生活、パーソナリティでも、これが足りない、あれが足りないと、自分の中にはないものばかりを見ていました。でも、島に来てここで働くようになってから、自分には誇っていいものがあることに気づいたんです。

例えば、話すことや聞くことが好きなところは仕事でも役立っていますし、以前は「穏やかそうだね」と言われるのは、「仕事ができない」と思われていると感じて嫌だったのですが、人に警戒心をもたれないという長所だと思うようになりました。ずっと自分には何もないと思っていたけれど、ちゃんと自分の中にあったんだなと思います。

年齢に関係ない「学ぶ」の場づくり

これからの夢はありますか?

年齢関係なく「学べる」場づくりをしたいです。市民大学のような。特に高校生はクラスのコミュニティだけだと疲弊しがちですが、大学生・大人と触れ合うだけで良い効果があるので、もっと大人と関わる場をつくりたいですね。また、学んだことを人に話す場を作って、人と学ぶことの大切さも伝えたいです。そして知識を増やすと人とつながれるということに気づいてほしいなと思います。

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自分の五感をもっと大切に

ありがとうございました。最後に大学生に伝えたいことがあればよろしくお願いします!

何かに対して「これがいいな」と思うことも大事だけど、「これは違うな」という感覚も大事です。それを無視してがんばってしまうと、肉体的にも精神的にもきつくなってしまうかもしれません。自分の五感をもっと大事にしてほしいです。

感じたことは、ブログでも、どんなものでも気持ちを形にして残しておくといいと思います。きれいに書くよりその時の気持ちや言葉で書くのが大事で、後付けで意味を見出せばいいんです。スティーブ・ジョブズが言っていたように「一つ一つの出来事は点であっても後で結んでいくのが大事」だと思います。

公営塾では短期インターン生を募集中!!

なぜか男子大学生はたくさん集まってくれるのですが、女子大生が少ないです。女子生徒に教えるのはやっぱりお姉さん的な人がいいと思うので、女子にも来てほしいです。島のおじいちゃんたちも喜ぶので特に女子を募集しています。よろしくお願いします!

インタビューを終えて(ハナジョブ学生記者:清水葉月)

的場さんの飾らなくて優しい人柄が言葉の節々から感じられて、とても素敵な方だなと感じました。自分が何を大事にしたいのかをよく考えて選択する大切さを知りました。私自身もうすぐ就活が迫っているのですが、自分とよく向き合いながら大切な選択をしていきたいと思っています。インタビューを受けてくださった的場さん、ありがとうございました!

隠岐國学習センター

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About Author

清水葉月

フェリス女学院大学3年国際交流学部。福島県出身。ヨコハマハコイリムスメプロジェクト一期生。 大学では国際問題に関わる経済、法律、人権など幅広く勉強しています。ただ今社会科の教職免許取得のために頑張り中。また、大学で福島の子どものための保養プロジェクトのボランティアを1年生から継続してやっていました。好きなことは、色んな人の話を聞くこと、おしゃれなカフェに行くこと、食べてまったりすることです。