異国の地、日本ではたらく。(ジャパンタイムズ)

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株式会社ジャパンタイムズで記者として働いていて、翻訳業務も担当している、ポーランド出身の大住マグダレナさんに日本でのお仕事や生活などについてお話を伺ってきました。今回はハナジョブ初めての試みとして、海外からの留学生と共にインタビュー!ポーランド語、日本語、そして英語のマルチリンガルの大住さん。とてもチャーミングなお人柄で私たちの質問にひとつひとつ丁寧に答えていただきました。(2015年2月時点の情報です)

ストーリーを知る 書く そして伝える。

大住さんの現在の仕事内容を教えてください。

政治経済や犯罪など多岐にわたるニュースの翻訳を中心に、自分で記事を書くこともあります。記事は共同通信からの記事を訳すことが多く、内容によっては翻訳だけでなく、電話などで専門家に取材をすることもあります。また、外国人コミュニティを特集するコラムを担当しているのですが、ここでは外国人の暮らし方や面白いプロジェクトに参加している人を取材して、月1回程度、記事を書いています。

「The Japan Times」の読者の7割は外国人の方々ですが、英語を学ぶために読んでくださる日本人読者もたくさんいらっしゃいます。中には日本語と英語の新聞を読み比べる人もいるようです。

1日の仕事のタイムテーブルはどのようになっているのでしょうか。

「The Japan Times」は文字通り日本に焦点を当てている新聞なので、まず午前中に現在どのようなことが日本で起きているのかを確認します。記事を書き上げたら、デスク(記者が書いた記事を編集する担当者)が内容をチェックし、より良質な記事になるよう編集していきます。締切直前は本当に慌ただしいんです。(ちょうど大住さんへのインタビュー時間と重なり、取材ルームの隣にあるオフィスではとても慌ただしい様子、私たちまでハラハラと緊張感が伝わってきました・・・!)

ほかの新聞社に比べると、ジャパンタイムズにはそれほど多くのスタッフはいません。ときには取材のために外出することもありますし、電話でインタビューを行う場合もあります。取材などのアポイントがなければ通常10:00から夜の18:00までオフィスにいます。記者は柔軟な働き方が認められているので、外出先や自宅から記事を書き上げて送る時もありますね。

オフィスをざっと見渡した様子だと女性が多いですね。

そうなんですよ、ほかの新聞社と比較すると女性が多いですね。ジャパンタイムズの特徴の一つだと思います。弊社は産休・育休制度や時短勤務などの制度が取得しやすい環境なので、子育てをしている女性スタッフもたくさんいます。育児休業を終えて職場に復帰するスタッフが大半です。 

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「将軍」というドラマに感銘を受けた。

大住さんが日本語を学び始めたきっかけがとても気になります。

日本語を学びたいと思い始めたのは7歳の頃、テレビ放送されていた「将軍」という日本の歴史ドラマシリーズを観たことがきっかけでした。幼いながら心に強い印象を焼き付けられました。今となってはヨーロッパでも日本文化はとても人気がありますが、私が日本について学びたいと思い始めた頃とは状況は少し違うと思います。その当時もマンガの人気はありましたが、情報自体はとても少なくて日本について知る機会はかなり限られていたと思います。

私は「日本語」という言語自体をとても気に入って、そこから人々がどんな会話をしているのかが知りたくなって、日本の文化や歴史についても興味を持つようになりました。ポーランドの大学へ入学して日本語学を専攻し、そこから本格的に日本語の勉強を始めました。大学では主に文化と語学を学んでいたので、ずっと日本現地の文化に触れたいという気持ちを心に抱いていました。

そのような背景があって日本の大学へ進学されることに決めたのですね。

はい、そうです。私のような日本語学専攻の学生は皆、少なくとも1年は日本へ行って勉強がしたいと願っていたのではないかと思います。私の場合は交換留学制度を利用することができたので、学習院女子大学で約1年間学ぶ機会に恵まれました。ただ、日本で暮らすのは当初この1年間の予定だったので、10年経った今もこうして日本で働いているとは思ってもいませんでした。

どうして当初の予定を変更して日本に留まることを決めたのですか。

学習院女子大学へ交換留学をしている時に、縁があり、日本で就職先を見つけました。そのため、日本留学を経て、大学を卒業するために一度ポーランドに戻りましたが、卒業後に再度来日し、日本の企業で主に翻訳と通訳の仕事をするようになりました。今はこうして日本で働く機会をいただいてとても光栄に思っています。自分の能力がこうして活かせる限り、すべて良い経験だと思っていますから。

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語学力が日本で働くチャンスをつくった

どのようにして日本で働き口を見つけたのでしょうか。

実は求人情報の雑誌やサイトをマメにチェックしていたわけではなく、たまたま友人がポーランド語を話せる人材を探している企業があると教えてくれました。幸いにも母国にいた頃、仕事として翻訳の経験もあったので、ぴったりな条件だったと思います。

日本以外の国で働くことをお考えになったことはありますか。

私の場合、日本以外で働いたことはないので日本での仕事が私のキャリアのすべてです。ただ、以前働いていた企業などの経験を踏まえると、ジャパンタイムズには日本人以外のスタッフもたくさんいるので、ほかの会社の職場環境と比べると少し特殊かもしれませんね。とてもインターナショナルな企業だと思っています。報道部の記者の多くは日本人ですが、運動部やエンタメ関連記事を書く生活文化部などでは外国人記者も活躍していて、お互いを高め合える環境だと思います。記事の最終チェックは、いつもネイティブのスピーカーが担当していますよ。

新たにストーリーを再構築する。

翻訳というお仕事の難しさはどういったところでしょうか。

語学自体の知識だけでは十分ではないところです。その国の文化や時代背景などを前提として文章が成り立っているので、翻訳する際に頭を抱えてしまうときもあります。加えて、日本語は文語と口語で文章の構成が大きく変わってきます。日本へ来たばかりの頃は、書き言葉と話し言葉でこんなにも言い回しが変わってしまうことに、正直とても困惑しました。翻訳の仕事とは、取材内容をただ直訳するのではなくてストーリーを「再構築」することだと思っています。 

現在のお仕事のどのような部分に魅力を感じますか。

毎日何か新たなことを学べるところですね。仕事柄たくさんの情報に触れるので、自分の知識量も増えていきます。もちろん職場の人々から学ぶこともたくさんありますし、取材でのインタビューを通してたくさんの人に出会える環境はとても良い経験になっています。もっと多くの記事を書いてみたいですね。

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外国人でさらに女性という立場は、日本で働く上でどのような難しさがありますか。

私が入社した頃(2006年)は「外国人」+「女性」というバックグラウンドはいわゆるダブルパンチでした(笑)。ジャパンタイムズに勤める前の会社での面白い話があります。外国人男性と同時期に入社して同じ業務を行っていたのですが、日本人の同僚とのコミュニケーションはすべてその男性を通して行われていたのです。女性で、かつ外国人ということでどうやって話しかければよいのかわからなかったのだと思います。おそらくさまざまな先入観があって、外国人である私が職場にいるということに違和感を感じたのでしょうね。もちろんこれは最初の頃だけで、すぐに普通に話しかけてくれるようになりました。

また以前、日本人の方に、私が外国人という理由で「日本語できちんとコミュニケーションは取れない」と言われたことがありました。これまで外国に滞在したことがなく、外国人と話す機会がなかった人々にとっては、私のような外国人が流暢に日本語を話すことは驚くべきことなのかもしれませんね。ただ、今では多くの日本企業がグローバルな企業に生まれ変わろうと、以前より多くの外国人労働者を受け入れるようになっていますし、中には社内公用語を英語にする企業などもあるようですね。

仕事と家庭の両立はどのようになさっているのでしょうか。

家事などは一人で抱え込まずに分担する、など基本的なことですが、忙しく仕事をしながらもプライベートな時間を大切にできるよう努力しています。日本は外国に比べると、職場で過ごす時間が長いと思います。共働きだからこそ少しでも家で過ごす時間を充実したものにできるよう、常に心がけています。

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はじめはすべてを自ら進んで学ばなくてはいけない。

日本へ来る前と後で、ご自身に何か変化したことはありますか。

おそらく外国へ留学した方々は同じような経験をお持ちかもしれませんが、些細なことも含めると毎日のように壁にぶつかっていました。だから、困難を自分の力で乗り越えていかなければいけないという強い気持ちが自分の中に芽生えました。何かにぶつかってもめげずに立ち上がって、そうやって繰り返していくうちに、自然と自分に対して自信を持てるようになりました。また、ポーランドを飛び出さなければ知ることのできなかった、多くのことを体験できたのはとても価値あることだと思っています。

自分の中に自立心が生まれるということでしょうか。

そうですね。私の場合、日本へ初めて来たときには、既にポーランドの大学で5年目にあたる年だったので日本語をある程度話すことができました。この語学力は実際かなり役に立ったと思います。

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(留学生からの質問)私の友人は日本語があまり堪能ではなくてとても苦労していました。まず対人コミュニケーションを取るのが困難ですし、日本独自のマナーや習慣といった「異国文化」に慣れるのもとても大変でした。今は文化についてより多くのことを学んでいて、以前よりも日本での生活に足が地に着いたような気がします。

そうですね、語学力があれば少なからず強みになると思います。ビジネスの現場においてだけでなく、言葉を知っていればそれだけ相手との相互理解がより深まります。たとえほかの人が説明できない事柄があったとしても、自分の中で考えて、それを相手に説明できるチャンスもあるわけです。どのコミュニケーション手段を使うにせよ、役に立つはずですよ。

日本とポーランドの大きな違いはどういったところに感じますか。

言語と文化は全く違いますが・・・とても難しい質問ですね(笑)ただ、日本は以前よりもオープンになっていると感じます。日本人は一般的にフレンドリーで礼儀正しい人々だと言われていますよね。実際私が日本へ来た初めの頃も、たくさんの方々が親切に手を差し伸べてくださりました。そういうことを踏まえると、多くの人が抱いている日本人のイメージに対してなるほどなぁと頷くことができました。私の生まれ育った西洋では、幼い頃から自分の身の回りのことは自分でできるように教育され、日本より自立性が重んじられていると思うので、そういう部分は大きな違いかもしれません。

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お互いを認め合う社会へ

日本が以前よりもオープンになっているというのはどういうことでしょうか。

外国人に対してだけではなくて、日本企業や日本人そのものがお互いの「異なる」部分について認め合うような考え、そして環境へと移行しているように思います。ダイバーシティについて寛容になりつつありますし、これからの日本ではこうした動きがさらに必要になってくるのではないでしょうか。事実、私が日本へ来た10年前は語学力やすぐに働けるか否かを問われ、一人の労働者としてではなく、外国人というフレームでざっくりと判断されていたのです。しかし、今では多くの日本企業が外国人に対しても、どのように会社へ貢献することができるのか、また、日本人の同僚に対してどのような見本となってくれるのか、そういったことを求めるようになりました。

ありがとうございました。最後に、学生にメッセージをお願いします。

多くの人が言っていると思いますが、失敗を恐れずに何事にもチャレンジしてもらいたいです。もし何か途中で躓いたり、自分の方向性に不安を感じたりしたら他人に助けを求めていいですし、そこで様々な異なる考え方に出会うこともあります。ぜひ色んなアプローチやアングルで物事を捉えてみてほしいです。そうすればいくら失敗しても再び立ち上がることができると思うし、そうしてまた「新たな挑戦」へと一歩踏み出してみてください。

インタビューを終えて(学生記者:岡部美幸)

今回ポーランド、アメリカ、中国、ベトナム、そして日本というバラバラな国の人たちが「英語」を介して交流しました。1年前の自分には到底できなかったであろうことに、純粋に英語を勉強していて良かったと思い、もっと自分の言葉で喋れるようになりたい気持ちが高まりました。これはとても単純で、理解が深まれば楽しさが倍増すると思うからです。もっともっと頑張りたいと思います。

また、大住さんが今もこうして日本で働いているのは決して偶然ではないのだろうと感じました。日本で働くことに全く無関心でいたならば、そのような求人情報すら入ってこないと思ったからです。日本のドラマから興味が始まり、そこからどんどん好奇心に忠実となって突き進んでいるような印象を受けました。好奇心の塊となってアンテナを張りつつ、今までやったことのない挑戦をし続ければ、「幸運」が近くにきてくれたときにそれを活かすことができるのかもしれないと思いました。そして、そのタイミングをものにするには努力を怠ってはいけないと思うし、そういうことを深く考えたくなるインタビューでした。

異国の地で暮らす、ましてや働くことはきっと私の想像以上に過酷だと思うし、たとえ言葉を知っていたとしても、文化の壁によって孤独感を覚えることもあると思います。誰でも初心者から始まるし、肩身の狭い思いをすることがあっても、自分の限界に挑戦しつつ常にアンテナを張り巡らせる人間でありたいなと思いました。大住さん、今回は本当にありがとうございました。

英語バージョンはこちら

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記者という仕事

テレビ局や新聞社など報道機関に所属して、記事を書くのが記者という仕事。

「夜討ち朝駆け」なんて言われることもありますが、スクープのためには深夜でも早朝でも現場に駆けつけて取材をする、というなかなかにハードな仕事!

最初は体力的にハードな部署で記者としての基本を鍛えられ、その後専門的な部署に配属される、というのが多いパターンです。

あこがれる人は多いけれど、全力で取り組む事ができなければ難しい仕事でもあります。 仕事は完全に体育会系! それに負けない精神でがんばらなければいけません。

株式会社ジヤパンタイムズ

「The Japan Times」は国内で最大の販売部数を誇る英字新聞であり、多様で独自性のある日本関連の英文ニュースを提供しています。1897 年の創刊以来、政治、経済、文化、社会およびスポーツ報道を通じ、日本を世界に発信する役割を果たしてきました。2013年10月からは「The Japan Times / International New York Times」の名称で、世界のクオリティーペーパーとして名高いニューヨーク・タイムズ紙国際版とセットで発行しています。


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About Author

岡部美幸

法政大学経営学部4年(今秋卒業予定)。昨年はイギリス南部のブライトンへ9ヶ月間留学していました。 人がつながる瞬間が好き!ハナラボの活動を通して出会う人々のジャンルの広さ、個性溢れる姿に、いつも知的好奇心がくすぶられます。来春までの半年間、人生初のフリーターです。何をしようか模索中! 好きなものはスノーボード、アニメ、民族料理(特にタイ料理と中東料理。)