自分の興味から選んだ、私が生きていく場所(王子製紙)

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在学中、ほとんどの学生が博士課程に進む中、修士課程終了後に就職する道を選んだ山本さん。化学の実験が好きで、自分の研究知識を活かせるものづくりに関わりたい、たくさんの人の役に立つものがつくりたい――そんな思いから今の職業に辿り着いた様子。ユーザーの要望に応える様々な機能を持った紙製品を開発し、世の中に送り出したい。特殊機能紙の開発職にかける熱い思いを伺いました!(2010年11月時点の情報です)

思わぬところにも紙製品が。私たちの生活に一番近く、密着した素材だから、いろいろな可能性がある。

お仕事の内容を教えてください。

基盤技術研究所は、既存の製品を改良し新製品の開発を行う研究所です。第一研究部は、ベースとなる紙そのものを、第二研究部は、特殊紙、粘着紙、情報用紙の分野で特殊機能を持った製品の研究開発を行っています。

私は第二研究部に所属し、特殊紙分野で、現在は主に食品に直接触れる紙の開発を担当しています。身近なものの例で言えば、ヨーグルトの容器やアイスクリームの包装紙などがこの分野にあたります。

一つの製品に対して担当者1~2人という少人数体制ですが、ユーザーから「こんな機能を持った紙を開発してほしい」と依頼を受け、新しい技術を取り入れた製品を作るサンプルワークを行うこともあります。一つの製品として完成するまでの開発期間は、早いもので半年くらい、長いものでは2年位かかります。

今までの仕事経歴を教えてください。

まず入社の年に、計9ヶ月間、二箇所の工場で研修を受け、現場で紙づくりを基礎から学びました。その後、研究所に配属になり、感熱記録紙やインクジェット用紙などの研究開発を担当しました。製品の改良に役立つ新たな物質をつくり出し、それが思った通りの機能を発揮できるかどうか繰り返し検討するといった研究です。2008年の5月からは現在の部署で特殊紙の開発に携わっています。

学生時代はどのように過ごしていましたか?

何をしていたのか、昨日この取材の質問事項を見た時から考えていたんですが、何もしていなかったんじゃないかな(笑)サークルなどに入っていなかったので、学部の友達と過ごしていた記憶がありますね。あとはアルバイトで塾講師と家庭教師をしていて、6年間で10人程の生徒を教えました。

修士の2年間は朝から晩まで研究漬けで、たまにアルバイトをするという生活を送っていました。修士では、有機物で電気が通るような物質を作り、物性を評価するという研究をしていました。

研究の分野に進まれたきっかけは何かありましたか?

高校時代から化学や実験が好きだったので、大学では実験のできる化学を専攻しました。実験を重ねるうち、何かを作って、それがどういう機能を発現するかを検証することに興味があると気づき、その両方ができるような研究室を選びました。

修士課程まで終えて、博士課程ではなく就職を選んだのは、ただ研究を続けるよりも、ものを作って売ることで社会との繋がりを得たいと思ったから。就職して社会人としての経験を積んでから、機会さえあれば、また博士課程に戻っても遅くはないと考えたからです。

ではどうして今の職業を選ばれたのですか?

学生時代は基礎的な研究をしていましたが、就職するからにはものづくりに関わりたいと思い、メーカーを中心に就職活動をしました。製紙会社を選んだのは、紙はとても身近なものですが、その開発のためにどんな研究をしているんだろうという興味があったからです。

業界について情報収集するうちに、考えていたよりいろいろな機能を持った紙製品があるとわかり、その製品づくりにかかわりたいと思うようになりました。

普段はあまり意識することはありませんが、確かに紙の製品は身近にとても沢山ありますよね!

そうなんです。例えば携帯電話にも、回線のプリント基盤として樹脂で加工した紙が使われています。その基盤を作る際に樹脂を固めるシートがあるのですが、それも特殊紙の分野です。

見えないところにも紙は沢山使われているし、もちろん見える部分にも、今も机の上にこんなに沢山の紙がありますよね(書類やパンフレット、紙コップなど)。紙は私たちの生活のあらゆる場面で使われる、なくてはならないものなのです。

では今の仕事の楽しさと苦労を教えてください。

実験室で新しい技術を開発し、いよいよ実用化の段階になって工場に持っていきますよね。フラスコの中で行っていたことを、実際の工程で行うとなると、必ず何か問題が起こるんですよね(笑)。それを想定して問題が起きないように開発をするわけですが、それがスムーズに行った時はうれしいです。

特殊紙というのは、電気関係から食品関係まで様々なところで使われています。薄くて空気や油を通さない紙、厚くて水を通さない紙など、毎回違った機能の製品を開発しますので、案件ごとに頭をリセットして取り組めるのが楽しいです。

苦しいのは、思うような機能が出ないときです。開発というのは上手く行く時と行かない時の波があるんですね。いい波に当たらないときは苦労します。失敗続きでも改善策が残されているうちはいいのですが、結果すべてダメだった場合、進む先がなくなってしまう。同じチームの人に相談したりして解決法を見つけるのが研究開発の仕事なので、そこが頑張りどころなんですが(笑)。あとは、開発した素材がユーザーさんにあまり売れないときは気持ちが滅入ります。

女性は何人位いらっしゃるのですか。

研究職は女性が多いです。同期入社が6人いる中で3人が女性。研究所全体でも2~3割が女性ですね。工場は女性が少ないので、研修などで現場に行くと「女の子がここで何してるの」と思われることもありました。(笑)

今の仕事をする上で心がけていることは何ですか?

私の専攻学科は修士を終えて就職するケースは少なく、博士課程に進む人がほとんどでした。先ほども言いましたが、あえて就職を選んだのは、ものづくりがしたいという気持ちがあったからです。研究をする上で、どうすればそれを製品化できるかということを常に考えるようにしています。

研究職は女性が続けやすい仕事。もっと研究開発の分野で女性が増えてほしい

山本さんにとって仕事とは何ですか。

自分が生きていくための場。自分のやりたいと思っていることをできる自己表現の場です。

これからの目標はありますか。

目の前の仕事を一つずつやっていくのが第一ですね。そして、いつか開発の前線から遠ざかる時がきても、アドバイザーのような形であっても、開発の仕事には関わっていきたいと思っています。そして「こういう機能を持ったものを、紙で作ることもできるんだ」と、驚かれるような製品を作っていきたいです。

同じ職業を目指す学生へメッセージをお願いします。

大学で理系に進んでも研究職に就かない人が多いのですが、実は研究職というのは特に女性にとって比較的仕事を続け易い職種だと思うんですよね。「今日はここまで」と仕事の進め方を自分で決められるので。だからもっと研究開発の分野で女性が増えたらいいなと思っています。理系の学生の方、ぜひ研究職への道も考えてみてください。

将来お子さんができてもこの仕事を続けたいと思いますか。

その時になってみなければわかりませんが、柔軟に考えたいと思っています。もし自分が仕事を辞めてしまったら、後輩たちが自分も続けられないのではと不安に感じるのではないか。既に子育てと仕事を両立してきた先輩たちが作ってくれた流れを止めてはいけないと思っています。

人生の先輩としてのアドバイスをお願いします。

ぜひ自分の可能性を広げられるよう有意義な就職活動となるよう頑張ってください。私は、120社くらいにエントリーをして、がむしゃらに就職活動をしましたが、そうするうちに自分の進みたい道が見えてきたように思います。

インタビューを終えて( 学生記者:鈴木結依)

今まであまりなじみのなかった研究職の仕事について、とても興味深いお話を聞かせていただきました!改めて注目すると、紙は本当に私たちにとって一番身近な素材ですよね。研究職が女性の続けやすい仕事だということも意外でしたが、それがもっと知られるといいなと思いました。山本さんありがとうございました!

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About Author

ハナジョブ学生記者

2008年〜2016年までの学生記者たち

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